バレンタインデー
バレンタインデーを迎えた。
私は樫葉と鴨仲、知茅冬治に友チョコを渡した。
私は知茅に朝のSHR前に手作りチョコを渡した。
「知茅くん、あげるよチョコ」
「俺に?マジで!!ありがとう、田渕!マジで嬉しい」
樫葉と鴨仲はにやにやとにやけた顔で迎えてくれた。
「友チョコなんでしょ?はしゃぎすぎだよねー、知茅」
「知茅ぁ、ふーたのこと好きだもんな!嬉しいだろ〜なぁ、知茅」
「ウザ絡みやめろぅ〜!」
どうしても安芸くんの顔が過ぎる。
安芸くんが同じ高校に通っていたら、と考えてしまう。
自身が食べるように持っていたチョコを袋から出し、口に放り込んだ。
「他にも渡すやつがあんの?」
樫葉がめざとく、指摘した。
「他になんてないよ、ゆっきぃー」
教室内や校舎内は浮き足立っていた。
放課後になり、私は一人で帰宅した。
バレンタインデーになると安芸くんに渡せもしないチョコを作って、虚しくなる。
教師に彼の住所を聞けずにいた私は悶々とする。
ベッドに横たわり、未練がましく安芸くんへの届かない想いを募らせる。
恋愛ソングをスマホで流しながら、うとうとしてくる。
中学生の時も虚しく終わった3度のバレンタインデーだった。
◆◆◆◆
安芸くんが気になりだして、バレンタインデーを迎えた一年生の頃、声すら掛けられず、友達にもなれずに終わった。
二年生の頃は話せるようになり、友達になれたというのに渡す勇気が湧かずに自身でチョコを食べるということになった。
三年生の頃は、受験などで話そうと試みたものの話せなかった。
私には、勇気が湧かないという情けない結果だけが突きつけられた。
◆◆◆◆
SNSアプリのメッセージが届いた。
知茅からのメッセージだった。
『チョコ、ありがとう。ほんと嬉しかった!!』
と、知茅からのメッセージだった。
私は短く返信して、スマホを離した。
知茅が羨ましく思えた。
私は自身で頭をぽかぽかと殴って、ため息を漏らす。
知茅くんみたいに勇気が湧けばこんな悩まずに済むのにと自身を呪った。




