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エチュード
私は、安芸幡豆紗との再会を経て高校演劇を鑑賞した日の夜に溢れた涙で枕を濡らした。
彼とのあの会話が脳裏に過ぎって、瞳が潤んで視界が歪んだ。
「あんなこと……言わなきゃ、うぅっ、よかったのに。なんで……」
——安芸くんとこの文化祭っていつなの?行ってみたいなぁ。
——三連休に被ってるから来やすいとおもう。田渕さんの高校がどうなのかわかんないから、調整して来れたらいいね。
私は冗談のつもりだった。
それなのに……彼は昔と変わらない柔和な笑みを浮かべて返答してくれた。
白久との関係性をはにかみながら話してくれた彼の顔は上手く直視出来なかった。
安芸くんじゃない誰かと笑える将来が上手く思い描けない。
安芸くんじゃない誰かに出逢うために流す涙は、いらないと……再会を果たせた現在でも思う。
私には、エチュードなんて無理なんだ。
私はあの頃から、あの日から……貴方の隣りを歩ける将来を夢みていた。
叶わない女性に、私は……
私は涙が渇れるまで泣き続け、いつのまにか眠りに就いていた。
私は懐かしい記憶の夢に、溺れていた。