友人がそんなことを
午後の授業を終えた校舎内は、賑やかさを取り戻している。放課後の校舎に用がない私は、帰り支度を済ませて席から立ち上がる。
クラスメイトの半数はまだ教室内にとどまっている。
黒板側——教室の前方の扉から、二人の男女が出ていくのとすれ違いに顔を覗かせ軽い調子でよっ、と声を上げながら片手を挙げた鴨仲を視界に捉えた私。
鴨仲が歩み寄って、不気味なほどの笑みをたたえ私の顔へと向ける。
「ご機嫌だね、いっちー……私、酷い目に遭わされる?」
「ふーたをイジめたことないじゃーん、私さ。そんなんしたら、のんのんに折檻められて来れなくなるって、ガッコーにさあ」
「ははは……冗談、キツいって。そんな過激じゃないでしょ、彼女……」
顔が引き攣り、乾いた笑い声で返した私。
「冗談キツい?いやいやぁ〜のんのんは恐いねーぇ腹ン裡はきっと。のんのんが向けてる好意が特別なのはふーただけだよ。部活仲間に向ける好意より深いね、ズブズブにってやつさ」
彼女は後半につれて、艶っぽい声音に変えていった。
周囲にいた生徒らが驚いた顔をして、私と鴨仲が交わす会話を聴いている。
鴨仲が普段見せる貌とかけ離れているからだろう。
普段の鴨仲いさなは、口数の少ない冷静沈着な女子な皮を被っている。
周囲の生徒には、イジめられてが、折檻められてとは変換しない筈だ。
「ゆっきぃーが恐怖政治みたいなこと……」
「ははっ。そんなことより、のんのんの観に行かない、今から?」
「そんなことって。部活あるんじゃ、いっちー」
「体育会系みたいにぎちぎちに管理されてないから良いの良いの〜」
「いっちーがそういうんだったら……行こうかな」
「うんうんっ!行こう行こうっ!」
鴨仲が元気に頷き、私の右手首をガシっと掴んで、体育館へと連行していく。