番外編 ある兄弟の晩酌(別題 魔王と次期王の密やかなる宵宴) 後編
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いつも遅くて申し訳ございません(*_*;
「えっ?レギーナ王女は兄様の想い人が誰か、ご存知なんですか!?」
「ええ、もちろんですわ。見ていればすぐに分かりますもの!」
み、見ていれば、すぐに、分かりますもの………だと?
レギーナ王女に分かって、俺に分からなかった、だと…………!?
そんな馬鹿な!!
レギーナ王女といえば、特別な呪いでもかけられているのでは?と思うくらいに鈍感な姫君だ。
そのお姿は美しく、波打つ金の髪は陽光のように煌めき、青い瞳は凪いだ湖のよう。
肌も白くきめ細やかで、思わず触れてしまいそうになるくらいすべやかだ。
そして…何より!胸が!胸がでかい!!
あんなに細いのになぜ胸だけでかいんだ!?光魔法の影響なのか!?そうなのか!!?
光魔法、最高かよ!
清楚なのに巨乳とか、いいとこ取り過ぎる!
ガルロノフ子息が、う、羨ましい………!
………ゴホン。
とにかく。こんなにも美しく人の視線を奪う容姿をしているのに、本人はてんで自覚がない。
『女性の騎士服が珍しいんですのね!』
『こんなのが王族で驚いてらっしゃるわ!』
『まだまだ太っていますものね…恥ずかしいですわ!』
違う!
皆があなたを見てるのは美しくて可憐で巨乳だからだ!!!
そして太っているわけではないのでダイエットをしては駄目だ!絶っっっ対に!!
………ゴホン。
それに、それにだ。俺がそう言いたくもなる理由。
「あれだけあからさまだった俺の気持ちに気付かなかったくせに……」
そう!俺があんなにも分かりやすくアプローチをしていたというのに、レギーナ王女は俺の気持ちに欠片も気付かなかった。欠片もだ!
ガルロノフ公爵家子息にぞっこんなのは誰の目から見ても明らかだった。
だから端から叶う恋とは思ってはいなかったが、同じ舞台に上がることすら出来なかったのだ!
いまだに俺の気持ちは消化不良でモヤモヤと蟠っているというのに、この王女様ときたら………くそっ!今日も可愛いなバカヤロウ!!
と、とにかく。そんな鈍感なレギーナ王女に分かって、俺に分からなかっただと?………解せぬ。
「………して、兄様。その想い人とは一体誰なんです?」
「それは……」
兄様がレギーナ王女一行を振り返った、ということはもしや………!
そう思って王女の後ろに立つ、茶色い髪の女性を見………
「くっ……、申し訳ございませんでしたぁ!」
「…………………………は?」
「ルスラン殿下、俺………ずっと黙っていてすみません!」
「え?…………………………どぅえええええ!!?!?」
名乗りを上げたのは、目線を向けた女性…………の隣に立つ、アルエスク副騎士団長である、ラルフ………なんとかという筋肉だるまのような…………お、おおお、お、お、男ぉぉおおおぉお!?!?
短い金髪に日に焼けた肌の、強さと健康とゴツさをその身で現したような、筋骨隆々な、誰から見ても間違いなくマッチョな…………お、お、お、男!?男、だと!?!?
「いやまさかそんな!?」
「ルスラン殿下、認めたくないとは思いますが、俺たち……」
「や、やめろ!聞きたくない!」
「いや、でも!俺たち本気なんです!!ここは弟君であらせられるルスラン殿下に認めてほし………」
「みなまで言うなぁぁあああぁあぁああああ!!!!」
「あっ!待って下さい!ルスラン殿下!」
俺はラルフの言葉を最後まで聞くことが出来ず、全力で敵前逃亡したのだった。
******
「ラルフ………あなたっていう人は………」
腹を抱えてひーひー笑い転げるラルフをジト目で見てしまうのは仕方がないことだと思いますの。
あんなにお兄様を慕ってらっしゃるのに、こんな風にからかってはいけませんわ。
そのように伝えれば、ラルフは悪びれることもなく。
「俺は何も嘘は言ってませんよ?ただ、俺とボリスラーフがいい友人であることを認めてもらいたかっただけです。最後まで聞かなかった殿下が悪いんですよ」
「だからって……」
「殿下が話を聞かないせいで俺らもずいぶん振り回されたんです。これくらいの意趣返しは許されますって。な?ボリスラーフ」
「うむ。それに…我が愛しの金糸雀は恥ずかしさの余り麗しきその顔を林檎の如く紅に染めてしまうからな………ふっ」
「金糸雀………」
「林檎………」
一同がボリスラーフの視線の先に目を向ければ………いつものようにわたくしの後ろに立ってはいるものの、顔を真っ赤にしてぷるぷると震えるヤーナの姿が。
「愛されてますのねぇ」
「んなっ!?ち、ちが………!ちょっと、ボリス!その言い回し止めてちょうだい!恥ずかしいわ!!」
「すまない。…………嫌、か?」
「ゔっ」
ボリスラーフが厨二病を止めたくても止められないことを知っているうえに、色気だだ漏れなそのご尊顔で溜息ながらに謝られてしまっては二の句も継げませんわよね、分かりますわ。罪なお顔ですわ!
…………ちょっと、オーリャ?目の前に立って視界を遮らないで下さいませ!
「ま、まぁ……嫌、では、ないわ…………。って、うゎっ!眩しっ!そんな笑顔でこっち見ないで!」
「あぁ、我が愛しの金糸雀よ……!」
「ひゃあっ!」
ボリスラーフが長い足で一気にヤーナとの距離を詰め、腰を抱きましたわ。キャッ♡お熱いですわ!
「ボリスラーフはヤーナ大好きだよなぁ。ヤーナと一緒にいたいがためだけに荷物に紛れてまで遠征にもついてくるし」
そう!ボリスラーフが荷物に紛れてまで遠征についてきたのは、愛するヤーナに誘われたからなのですわ!
愛しい人と離れたくなかったからだなんて……なんてロマンチック!
でも結果、吐いてしまって格好悪いところを見せてしまったと落ち込んでいたのですが………。
「コホンッ。姫様はいつから気付いていたんですか?」
「うふふ。ヤーナ、お顔が真っ赤ですわ?」
「くぅっ!」
「そうですわねぇ。わたくしはダイエットのメニューを考えているときから気付いてましたわ」
「えっ!遠征よりも前じゃないですか!」
そう。以前、ダイエットメニューを作るためにわたくしとお付きのヤーナは何度も何度も厨房に通っておりましたの。
その時の情景を思い出して、くすくすと笑ってしまいましたわ。
「だって、その時からボリスラーフはヤーナのことばかり見ていたんですもの」
「えっ!?」
「あれで気付かないなんて、ヤーナは鈍感ですわね!」
わたくしが満面の笑みで言うと………なぜか皆さんに残念なものを見る目でわたくしが見られましたわ?
あら?その目はヤーナに向けるべきではなくて?
「ヤーナ!?」
突然専属侍女が膝から崩折れましたわ!?
「姫様に言われる日が来るなんて…………」
「どういう意味ですの!?」
******
「兄様、先日は失礼しました!あれからよくよく考えて、俺、気付きました!異性間でも、男同士でも、愛があれば性別なんて些細なことですよね!これからはラルフというあの男性をもうひとりのお義兄さんとして慕っていきたいと…………って、兄様?」
「リ、リトルキティ…………」
ボリスラーフは、あの夜わたくしへと向けた目と同じ目で、可愛い弟を見つめたのですわ。
次回、レギーナとオレグの番外編デートを書いて、一旦お終いとさせて頂きます。
また気が向きましたら番外編を追加しようと思います!




