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58 あー、無理ですわ!

いつも読んでくださりありがとうございます!

とてもとても嬉しいです!!!



師団長様が実は人を人とも思っていない人だったこと。

少なからず今回の動機にわたくしが関わっていたこと。

そして、未然に止められなかったこと………。

怒りと悔しさと罪悪感で、心が掻き乱されますわ。


でも……わたくしは、王女だから。

人を裁くことも義務だから。

目を背けてはいけませんわ。


わたくしは両足に力を入れて両手を握りしめ、真っ直ぐに師団長様を見据えますわ。



「アナトリー・インギス魔法師団長。あなたがそのような思想………つまり、人は皆自分本位である、という考え方を持つことは自由ですわ。そしてあなたがそのような考えに至らざるをえないような経験をなさってきたことには心より同情致しますわ」



師団長様は赤い瞳のせいでかなり嫌な思いをしてきたとおっしゃっていましたわ。

それで人間不信になってしまったのかもしれませんわ。

………だとしても。

師団長様のしたことは許されざる行為。

なるべく声を荒らげないよう、なるべく落ち着いたトーンで話し掛けますわ。


諭すように、分かってもらえるように。



「ですが、誰にどのような仕打ちをされたのだとしても。例え理不尽な目に合ったのだとしても。他人を傷つけたり、人生を狂わせてもいい理由にはなり得ませんわ。よって、今回の………」


「………………では、どうすればよかったんですか」


「え?」


「自分は………自分は!どうしても諦めたくなかったんです!」



『あなたを』

言わずとも伝わる程に、執着を隠しもしない、ギラギラとした目でわたくしを見てくる師団長様。

でも、だとしても、わたくしは………。


わたくしが師団長様の視線に狼狽えていると、スッと横から大きな背中が入り込み、師団長様の視線を遮りましたわ。



「諦めろ。レーナは僕の婚約者だし、レーナが好きなのは僕なんだから」



わたくしを隠してくださったのは、オーリャでしたわ。


『君のことは必ず守るよ』


広い背中に守られて、オーリャが言ってくれた言葉が蘇りましたわ。

どんなに太って醜くなっても、わたくしを見捨てなかったオーリャ。

ずっとわたくしを好きでいてくれたオーリャ。

オーリャがいてくれるだけで、こんなにも安心するなんて……。

不安だった気持ちが凪いで、体の強張りが解けていきますわ。



「また、お前か…………!」



安心したのも束の間、怒りの滲む声に驚き、オーリャの背中から覗き見れば……そこには、見たこともない程恐ろしい顔をした師団長様が………!



「お前さえいなければ、レギーナ姫は自分を選んでくれたのに………!お前さえ、お前さえいなければ………!」


「僕さえいなければ、ねぇ………」



あんなにも恐ろしい師団長様を目の前にしても余裕の表情のオーリャ。

それにまた煽られたのか、師団長様が声を荒げますわ。



「いつもいつも邪魔ばかりして!婚約者の立場に胡座をかいてレギーナ姫のことを大切にしないくせに!与えてもらうばかりなくせに!なのに……なのに!レギーナ姫の隣にはいつもおまえが………!なぜだ!レギーナ姫が頼るべきは自分なのに!!」



違う……それは違いますわ。

オーリャは確かに愛情を示してはくれませんでしたが、わたくしが不安なときはいつも励ましてくださいましたもの。

今回の事件だって、ずっと。



「胡座をかいていたことは否定しない。それで彼女に誤解させたのも事実だ。だが、僕は彼女を陥れようだなんて考えたことはない。彼女を不安にさせたり、不幸にさせてまで手に入れようだなんてしない!」


「結果、幸せになれればいいだろう!自分だけに感謝し、自分だけに愛され、自分だけを愛せば幸せなはずだ!」



えぇ………?

本気で言ってますの?



「そんなの無理ですわぁ」



あ、ヤバ。本音が出ちゃいましたわ。

でも………やっぱり無理ですわね。



「む、無理…………」



膝から崩れ落ちる師団長様。

えっと……………大変申し訳ございませんわ?

でもわたくし、政略結婚が普通な王族の一員ではございますが、保身のために愛のない、消去法で伴侶を決めるなんてことはしたくありませんわ。

それなら、ずっとひとりがいいですわ。



「アナトリー・インギス。あなたには追って沙汰を言い渡しますわ。それまで城の牢へ投獄といたしますわ」



扉を開けると、そこには騎士団が数名。

その方々に両脇を抱えられ、立ち上がらせられた師団長様と不意に目が合いましたわ。

深い緑の髪と、綺麗な、赤い瞳。



「………そういえば、あなたの髪と瞳。クリスマスツリーみたいな色合いですごく綺麗ですわって思ったんですの。あぁ、でも………クリスマスは前世の記憶ですから、あなたがわたくしに入れた記憶ですわね?」


「クリスマ、ス………?」


「あら、師団長様が入れた知識ではございませんの?嫌だわ。ではわたくしが頭の中で作った知識かしら?」



なんてことかしら。

これが師団長様の言う、シュラーツェ草で作られた記憶に勝手に頭で肉付けしてしまった記憶、ですのね?

わたくしったらなんて想像力が豊かなのかしら!

何もかも設定が完璧ですわ!

クリスマスの日にち、クリスマスで食べるもの、飾るもの、街の様子、過ごし方…………って、わたくしの想像力、逞しすぎやしませんこと?



「ま……待って下さい!あります!」


「え?何がですの?」



わたくしが、自分の知らなかった一面に吃驚していると、詩織様が何やら興奮しておられますわ?



「クリスマスです!」


「え?」


「だから、本当にあるんです!クリスマスが!地球に!」


「クリスマスがあるっていうのはもしかして………白い髪と髭で全身赤の衣装を身に纏うお爺さんが12月24日の夜に全ての家の良い子達にプレゼントを届けてくれる、ケーキやチキンでお祝いする世界的イベントの()()クリスマスですの………?」


「そうです!宗教的観点など一切合切無視し、いつからかリア充カップルが街に溢れるようになった、()()クリスマスです!!」



どういうことですの!?

わたくしは答えを求めて師団長様を見る。



「…………自分がレギーナ姫に入れた知識は、前世の記憶があるということ。そこで読んだ本がこの世界のことであり、本の内容はガフロノフ様と聖女が結ばれ、レギーナ姫が断罪される。そして、自分はレギーナ姫の味方である、ということだけです。内容については何も知りません。ということは…………レギーナ姫は本当に、転生してらっしゃったのですね!?」


「えぇっ!?」


「転生した記憶がシェラーツェ草がきっかけで呼び起こされたのでしょう。なんという、奇跡………!光の魔法が発現したのも前世と関係があるに違いありません!あぁ、研究したい………!」



こんなに研究熱心な方なのに……惜しいですわ。



「反省してるのか、甚だ疑わしいな」



オーリャ………激しく同意ですわ。



このお話の後に書くお話に思いを馳せていたら知恵熱出ました。

子供かっ!

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