54 色気で人は死ねるのですわ!!
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大変励みになります!!
本日は久々に甘め。
デブスな姫様。
それはやはりわたくしのこと……でしょうか?
確かに基準は人それぞれ。
…………これは確認が必要ですわ。
「ねぇ」
「あぁ!?なんだ…………………よ?」
ん?どうしました?
勢いよくわたくしを振り返ったものの、目があった途端に狼狽える青年。
若干顔が赤いように見えるのは暴れたからでしょうか?
「わたくしのこと、ご存知?」
「…………は?」
「ですから。わたくしのこと、ご存知ですか?」
「は、はぁ?知る訳ないだろう!女の騎士なんて会ったこともねぇ!」
「よく見てくださいませ。騎士の格好じゃないときに会ったことは?」
「ねぇよ!」
「…………本当に?」
「お前みたいなやつ忘れるわけねえだろ!」
…………お前みたいなやつってどんなやつですの。
そこのところを詳しく突っ込みたいのは山々ですが、今は重要なことではございませんので問いただすのは差し控えますわ。
「なっ!?お前、このお方を知らないのか!?だってお前、さっき………!」
「しつこいな!知らねぇよ!誰だよ!!」
思わずラルフと目を合わせて固まりましたわ。
これは、何かがおかしいですわ……。
「………申し遅れましたわ。わたくし、レギーナ・アルエスク。アルエスク王国の第一王女ですわ」
「………………………は?」
固まる青年。
つまりはどういうことですの?
もしかして………青年が会ったのは、わたくしではありませんの?
「ねぇ。あなたが昨夜会ったのは、わたくし?」
「ち、違う………こんな美人じゃなかった。もっとデブでブスで………。い、いや、騙されるかよ!お前が偽物なんだろう!?レギーナ姫はデブスで有名なんだからな!こんな細くて美人なわけないだろう!?」
こんな時でなければ褒めていただけて嬉しいはずでしたのに……わたくしはレギーナ・アルエスク。
「残念ながら、本物ですわ」
「…………嘘だろう?じ、じゃあ俺は?俺はどうなるんだ!?だってレギーナ姫が!あいつが俺を守るからって………!」
「唆されたからってやっていいことと悪いことくらい分かるだろう。聖女の殺害未遂は重罪だ。覚悟しておくことだな」
「そ、そんな……………」
それ切り項垂れ、大人しくなった青年は、両脇から騎士たちに腕を掴まれて引きずられるように連れて行かれましたわ。
「どういうことですの………?」
わたくしの偽物がいる?
それとも…………?
*******
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
荒い息遣いのオーリャのお顔が目の前に。
頬を伝う汗や、少し汗の匂いが混じったオーリャの香り、そして真っ直ぐにわたくしを見つめる瞳が、わたくしの脳内でナントカ物質を大量発生させてクラクラいたしますわ!!
「ね………ねぇ、な、なんで逃げたの?」
「ま、まさか!?逃げてなんかいませんわ!?う、うふふふふ!」
「じゃあ、なんで、全力で、走ったのさ」
「それは、えっと……そう!突然走りたくなっただけであって、決して逃げていた訳ではございませんのよ!ええ!」
「ハッ、ハッ………しかもなんで、レーナは、い、息が、切れてないの………!」
「いえ、まぁ、あれくらいなら……。って!そ、そんなことより!こここ、この格好は!問題だと思いますのっ!!」
オーリャの顔を見た途端、逃げ出したわたくしは先程城の裏手の人気のないところでオーリャに捕獲され、壁に追い詰められているのですわ!
壁ドン?
いいえ!そんな甘いものではございませんわ!
両手を頭上で纏められ、両足の間に!オーリャの左足が!左足が入っているのですわぁぁあぁああぁあ!!
「逃げませんから!逃げませんから離れてくださいませぇぇええ!!」
「レーナは嫌なの?」
「嫌とか嫌じゃないとかではく!」
「だって婚約者なんだもの。これくらい普通だよ」
「ふ、普通!?」
「それにほら、逃げられると捕まえて…………食べたくなるだろう?」
「た……食べ!?」
「食べても、いい?」
ギャ―――――――――――!!!!!
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぃぬぅぅうぅうぅううう!!!
吐息と共に耳に爆弾来たぁ―――――!!!
眇めた目がなぜそんなにも艶かしいんですの!?
オーリャがわたくしを色気で殺しにかかってくるぅぅぅ!!
「みんな心配していたんだよ。君が部屋に閉じ籠もって出てこなかったから。常に自分を見張らせて、眠りも短くて………」
「だ、だって…………」
いつの間にか自分が何か行動をしていないか不安なのですわ。
寝ていると思っている時に、知らないうちに行動してしまっていたら?
自分のアリバイがない時にまた事件が起きたら?
何もかもが信じられなくて、わたくしは常に自分を見晴らせ、そして怖くて外に出られなくなってしまったのですわ。
今日はお父様、つまりは国王に食事に付き合うよう呼び出されたので、仕方なく外に出たのですが……食事が終わった帰り道にオーリャと遭遇。
反射的に逃げてしまったわたくしをオーリャが追いかけ、今に至る、のですわ。
「ねぇ、なんで逃げたの?」
もうすっかり息も整い、いつも通りのオーリャの真っ直ぐな瞳がわたくしを射抜きますわ。
「だって、だって…………」
「僕は君を失いたくない。もうすれ違いは懲り懲りだよ。まだ僕のこと、信じられない?」
「違いますわ。信じられないのは…………わたくし自身、ですわ」
そう、わたくしが怖いのはわたくし自身に付き纏う『強制力』の恐怖。
そして悪役令嬢としての運命。
あの日、前世の自分を思い出してしまったわたくしは…………。
「………………?」
ふと、その瞬間。
何かが心に引っ掛かりましたが………目の前のオーリャの言葉で吹っ飛んでしまいましたわ。
「好きだ」
「ふへっ!!?きゅ、急にどうしましたの!!?」
「全然急じゃない」
「あの、いえ、そうではなく…………んむぅっ!?」
くくくくくく、くち!くちぃ!!!
唇が…………触れてるぅぅ!!!
これって………キキキキキス!?キス!?
わたくしオーリャにキスされてますの!!?
ふわぁぁああああ!!!
な、なんかはむはむされてるぅ!!
男性の唇がこんなに柔らかいなんて………!
オーリャったら睫毛長い………素敵ですわ。
わたくしが段々ととろんとしてくると、瞑っていたオーリャの瞼が開き、ゼロ距離で目が合いましたわ!
ハッ!?こ、これって…キスをするときって、目を瞑っていなきゃいけなかったのでは!?
で、でも今更どうすれば!?
パニックに陥ったわたくしの内心を知ってか知らずか、唇を合わせたままふっと微笑むオーリャ。
ぐっはぁ!!
ダメ。死んだ。萌え死にしましたわ、これ。
あ。天国が見えますわ………。
「おっと」
腰が砕けたわたくしは為すすべもなく、オーリャによりかかってしまいましたわ。
触れるだけのキスなのに………!
「ふふっ。可愛い」
死ぬぅ―――――!!
鼓膜が死ぬぅ――――――!!!
「ねぇ、レーナ。僕はレーナのことが好きなんだ。レーナだけが好きなんだ。もう疑わないで。信じて。僕を頼ってよ」
「オーリャ………」
「犯人を探そう?一緒に」
「はん、にん………?」
犯人。
もしわたくしが何もしていないのならば。
強制力が働いたのではないのならば。
そこには必ず『犯人』がいるはず。
でも……そんなもの、存在するのかしら?
わたくしが犯人だったら?
強制力で犯人にさせられる運命なのだとしたら?
「僕は君を信じる」
「!」
「君は人に恨みをぶつける人ではないし、不思議な力が存在するのだとしたら、それこそ君のせいではない」
「でも、だって……!」
オーリャはニカッと笑いましたわ。
その笑顔は飾り気のない、晴れ渡るような笑顔。
「大丈夫!最後は一緒に逃げちゃおう!なんとかなるさ!」
「オ、オーリャ…………!」
わたくしは張り詰めていた糸がぷつんと切れて、オーリャの胸を借りて声を上げて泣いてしまったのですわ。
頼っても、いいのでしょうか?
運命に巻き込んでもいいのでしょうか?
無条件に自分の人生全てをかけてわたくしを信じてくれたオーリャの気持ちが嬉しくて、抱きしめてくれる腕が嬉しくて、わたくしは暫くの間、オーリャに縋って泣いてしまったのですわ。
物陰からわたくしたちを見ていた影には気付かずに……。
そろそろ終盤。
………と言いつつ長くなったらごめんなさい。




