48 ワルツと阿波踊りのマリアージュですわ!
読んで下さりありがとうございます!!
ブクマ、評価、感想、めちゃんこ嬉しいです!!
「緊張してる?」
「えぇ、少し…………」
嘘。本当はめちゃくちゃ緊張しておりますわ!
アルエスク城の舞踏会広間の入り口。
わたくしとオーリャは名前を呼ばれるのを待っておりますわ。
こういったパーティーでは地位の高い者が後に呼ばれるもの。
ですから、わたくしたちペアは後ろから三番目。
つまり、お父様たちとお兄様たちの前に呼ばれるのですわ。
わたくしにとって初めての社交界。
緊張するに決まっていますわ!
デブでブスで性悪と有名なわたくしが出た瞬間の皆様の反応が恐ろしいですわ……!
「大丈夫だよ。僕がずっと側にいるから」
「心強いですわ」
「でも僕は君を他のやつらの目に晒すのが嫌だな」
「もしやそれは、わたくしがデブス……」
「マイナスな意味じゃないから。いや、僕にとってはマイナスだけど。他のやつらが美しく着飾った君に見惚れるのが嫌なんだ」
「まさか。そんなこと有り得ませんわ」
「はぁ………」
だってそうでしょう!?
わたくし、デブスの性悪ですのよ!?
「実際の君はデブでもブスでも性悪でもない。噂なんて今夜のパーティーで払拭されて、すぐにみんなの羨望の的になるよ」
「そんな訳ありませんわ?」
「はぁ………」
オーリャはやれやれ、といった風に、再び溜め息をつきましたわ。
でもそんなシンデレラストーリー、わたくしには当てはまりませんわ。
だってわたくしは悪役令嬢ですもの。
「まぁ、どんなに他の人が欲しがったって、君は僕の婚約者だけどね」
「そう、ですわね…」
それは本心かしら?
それともこれから心が離れていくのかしら?
召喚の儀で見つめ合っていたふたり。
あれは強制力によるもの?
それとも強制力なんて関係なく、オーリャは………。
「オレグ・ガルロノフ様、レギーナ・アルエスク様――――――!」
「さぁ、行こう」
わたくしの思考を遮って、その時が来ましたわ。
わたくしはオレグ様の手にそっと自分の手を添え、目の前で大きく開かれた扉から中へと入っていったのですわ。
大きくて煌びやかなシャンデリアが目を引く、この城で最も大きな会場。
美しく着飾った紳士・淑女たちがわたくしたちに注目していますわ。
ひそひそと囁く人・人・人…。
そんな中、わたくしはなんとか微笑みを浮かべて歩きますわ。
「え、笑顔が引き攣りますわ…!」
これからダンスを踊らなければならないというのに、この体たらく……!
わたくしが緊張でガチガチになっていると…きゅっと指先を握られましたわ。
「オーリャ?」
「レーナ、大丈夫。自信を持って?君はこの会場にいる誰よりも美しいよ」
見上げれば、蕩けるような笑顔。
あぁ…なんて素敵なのかしら。
オーリャの今日の出で立ちは、黒のスリーピース。
わたくしの深い青のドレスに合わせ、チーフやカフスなど、ポイントに同じ深い青を取り入れていますわ。
それは、わたくしがパートナーなのだという証。
まだ…ううん、少なくとも今日だけは、オーリャはわたくしのパートナーなのですわ。
「私とダンスを踊っていただけますか?」
会場の真ん中、全員が注目する中、完璧な仕草でダンスに誘ってくださるオーリャ。
「喜んで」
こんなに素敵なことってあるかしら?
こんなに煌びやかな会場で、大好きな人と社交界デビューのファーストダンスを踊ってもらえるなんて…!
ここは…そうね。そうよ!楽しんでしまいましょう!
音楽が流れ、オーリャのリードで流れるようにステップを踏みますわ。
「緊張が解れたみたいだね」
「ええ、お陰様で」
皆様がわたくしを疎んでいようと、オーリャが本当は詩織様と踊りたかったのだとしても。
いいの!どうせ踊らなくちゃなんですもの!楽しまなくっちゃ!
同じ阿呆なら踊らにゃ損損♪
頭の中でワルツに合わせてそんな歌詞で歌う。
作曲家の方にあまりにも失礼だけれど…なんだか楽しくなってきてしまいましたわ。
自然と広角が上がり、ステップも流れるように、軽やかに。
周りの目は気にしない。
お、な、じ、阿呆なーらー♪
三拍子に合わせて(頭の中で)歌って、踊りますわ。
踊、ら、にゃ、損、そーんー♪
「楽しそうだね」
「ふふっ。そうですわね。だって楽しまなくては損だと思いましたの」
ふっふっふ。
まさかわたくしの頭の中でこんな歌が流れているとは誰も思いますまい。
楽しい気持ちそのままにニコニコとしていると、オーリャが少し困ったように笑いましたわ?
「そんな可愛らしい顔をされると皆が君に注目してしまうよ」
「ふふっ。オーリャは本当にお上手ですわね」
「はぁ………」
オーリャは今日何度目かの溜め息をつきましたわ。
オーリャは、やはり……
「わたくしとでは楽しくありませんか?」
「え?」
「だって溜め息ばかりついていますわ」
オーリャは目をぱちくりとさせ、意外そうにわたくしを見つめましたわ。
そして次の瞬間。
「そんな訳ないだろう?すごく楽しいよ」
「っ!」
満面の笑みでそんなことを言うものだから…わたくし、不意打ちで撃ち抜かれましたわ!
ズキュン!
レギーナの壊滅的センス。




