閑話 ある王国の国王と王妃の逢瀬
いつも読んで下さりありがとうございます!!
すみません、「次回歓迎パーティー」と言っていたんですが閑話を入れさせていただきます。
このタイミングで入れないとだいぶ後になってしまうので……。
次話は明日か明後日に投稿予定です。
すみましぇん!!
「ちょっとよろしいでしょうか?」
国王の執務室に、妖精もかくやというほど可憐な微笑みを浮かべた王妃が訪れた。
王妃は成人した子供がふたりもいるとは思えないほど若く美しい。
今尚、貴族からも国民からも「妖精姫」と呼ばれ、幅広く愛されているほどに。
「あぁ、何か用………………か」
側近たちと魔物の被害状況と復興について議論を交わしていた国王は顔を上げ、美しい微笑みをたたえた王妃を仰ぎ見て………固まった。
そんな国王の様子に気付かぬ側近たちは、滅多に会うことの叶わない、美しい王妃が登場したことに色めき立った。
「おぉ!これは王妃様!ご機嫌麗しゅう」
「皆様いつもご苦労様。ごめんなさい、お邪魔だったかしら?」
「いいえ、いいえ!邪魔だなんてとんでもない!お会い出来て大変光栄でございます」
「そう言っていただけて良かったわ」
そう言って王妃は細い指を頬に添え、首を少し傾けた。
その可憐で美しい姿に、側近たちは年甲斐もなく、キュンとときめいた。
おじさんたちが。
さすが妖精姫。演技はばっちりだ。
そんなことは露知らず、側近たちはいらない気を回した。
「陛下。そろそろお昼時ですから、一度休憩にしてはいかがでしょう?」
「あ、いや……」
全ては尊敬する国王と、美しい王妃のため。
「そうですな!王妃様とゆっくり食事をしてはいかがでしょう?」
「しかし、その……」
だから、国王の顔色がすこぶる悪いことには気付かなかった。
「まぁ!よろしいの?皆様のお気遣い、大変嬉しゅうございますわ!」
「ちょ、待っ……」
憐れ、国王。八方塞がりである。
「ではお言葉に甘えましょう?あなた」
「………………………うむ」
そして腹を括ったのだった。
珍しく国王の歯切れが悪くなってしまったのも無理はない。
国王は気付いていたのだ。
王妃のこの可憐な笑顔の裏に、とてつもない怒りが潜んでいることを。
******
バタン。
無情にもドアが閉まる音が執務室に落ち、側近たちが退出したことを知らせる。
国王の願い叶わず、側近たちは行ってしまった。
「……で?あの態度はなんなの?」
そして妖精もどこかへ飛んでいってしまった。
「あの態度、とは…………?」
「聖女へのあの態度よ!」
「うむ………………」
国王は焦った。
表情はほとんど変わらなかったが、心の中はパニックだった。
聖女への態度。
思い出されるのは召喚の儀での自分の態度だ。
勝手に召喚しておいて上からの物言い。
あれは無い。確かに、無い。
体に染み付いてしまっている統治者としての態度が邪魔をした。
だが、それも言い訳に過ぎない。
「レーナちゃんと同じくらいの年の子が、いきなり知らないところに連れてこられたのよ?あなた、レーナちゃんがそんな目に合わされたらどう思うの」
国王は異世界へ連れ去られ、あんな扱いやこんな扱いを受けるレギーナを想像した。
現実には今回召喚された聖女は手厚く手厚くもてなされているのだが、そんなことは忘れ去られていた。
「………………異世界ぶっ潰す」
「そら見なさい」
冷酷で、心の無い王。
そう皆から恐れられているアルエスク現王。
実際、統治者として命令を下すときには冷たい判断を下すときもある。
だがそこに私情は無く、あくまでも合理的で、且つ国のための決断。
だからこそ冷酷であっても皆に尊敬され、崇拝されているのだ。
だがしかし。
王妃だけは知っている。
実は国王が家族を溺愛していることを。
メロメロでデロデロであることを。
だからこそ、王妃は聖女の立場をレギーナに例えたのだった。
「し、しかしだな………」
「しかしもへったくれもございません!反省なさってください!」
「う、うむ。すまなかった………」
歯切れが悪い。ものすごく歯切れが悪い。
これが冷酷な王として畏怖され、尊敬される王なのか。
王妃はちょっとイラッとした。
「で?聖女にはいつ謝るのです?」
「あ、謝る!?王たるもの、人に頭を下げるなど…!」
「ふーん?謝らないんだ?」
「いや、だって……」
冷酷な王の口から「だって」と言わせられるのはアルエスク国内、いや、全世界で王妃だけであろう。
「謝らないのならそれなりの誠意を見せてください!」
「誠意?いや、聖女は手厚くもてなしていて、これ以上の誠意と言うと…」
「問答無用!歯ぁ食いしばれ!!」
ドフッ!
「ぐふぁっ!!!」
妖精姫の可憐とは程遠い力強いフックが、鳩尾に入る。
顔に食らわせれば跡になり問題になるので、あくまでも見えない場所、且つ、大きくダメージを食らうところに的確に打ち込む王妃は只者ではない。
ちなみに国王の呼吸は一瞬止まった。
「これで誠意といたしましょう。今後このようなことの無いようになさってくださいましね」
「ハイ……………………」
妖精のような笑顔で言う王妃は、それはそれは美しかった。
結局、国王はこの王妃を憎むことなどできないのだ。
なぜなら、彼の溺愛する家族には王妃も含まれているのだから。
読んで下さりありがとうございます!
ブクマ超嬉しい………!




