37 愛しても、愛されてもいいのですわ!
読んで下さりありがとうございます!
ブクマしてくれた方、嬉しい…泣く……。
今回は甘め、かも?
オレグ様、ヤーナ、ラルフの視線がわたくしに集まっているのが分かりますわ。
わたくしが本当のことを話したら…?
既に本の内容はぼやけてしまっていますが、大筋はだいたい覚えていますわ。
ですがそれを話したとして、本当に信じてもらえるかしら…?
もし話して、信じてもらえなかったら?
3人の冷たい目を想像し、背中をぞくりと冷たいものが走りましたわ。
嫌われたく、ありませんわ……………。
わたくしが俯き、唇を噛んでいると、知らず知らずテーブルの上で握りしめていた手に温かい手が乗せられましたわ。
ぬくもりに誘われるまま顔を上げれば、そこには優しいオレグ様の顔が…。
「オレグ様……………」
「ねぇ、レーナ。君が何を憂いているのかは分からない。でも、これだけは分かる。僕は何を言われても君を嫌いになんてならないよ」
「で、でも…でも……!とても荒唐無稽なお話なのですわ!信じてもらえるかどうか…」
「信じるに決まってるじゃないか!君が嘘を言うわけない。もし、言ったとしてもそれはきっと誰かのための嘘だ。嫌ったりなんかしない。つまりは何を言われても嫌わないってことだね!」
「オレグ様…………」
カラカラと何の憂いもなく笑うオレグ様。
そんなにわたくしのことを信じてくださるなんて…!
感動してオレグ様を見つめていると、「んんっ」とわざとらしい咳払いが………。ん?ヤーナ?
「もちろん、ヤーナやラルフもね」
「もちろんです」
「そうですよ、姫様!」
「あ………」
オレグ様がやれやれと苦笑いをして付け加えれば、ふたりとも満面の笑みで力強く頷いてくれましたわ!
そう…そうですわ!わたくしのことをそんな理由で嫌いになったりするような方たちではございませんわ!
うん、こうなったら皆様にも一緒にわたくしが処刑を回避する方法を考えてもらえばいいんじゃないかしら!
とてもいい考えですわ!
もう、ひとりでうじうじと考えるのはやめますわ!
だって皆様わたくしを信じて下さる方々ですもの!
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「ないな」
「ありえませんね」
「無理がありますな」
「信じて下さらなかったぁぁああ!!!」
前世の記憶があること。
前世で読んだ小説にわたくしたちが出ていたこと。
そして内容がオレグ様を取られたわたくしが聖女様のことを虐めて処刑されるというものであること。
それらを説明した後の反応がこれですわ!
おかしい…おかしいですわ!!?
ここはまるっと信じて下さる場面ではなくて!?
そして『そんな…わたくしのこんな荒唐無稽なお話を信じてくださるだなんて!みんな………!!』って………言いたかった!言いたかったですわぁぁああ!!!
「あー、レーナ?勘違いしているようだけれど、信じていないわけじゃないよ?君が嘘を言っているとは思ってないんだ」
オレグ様のお話にうんうん、と頷くヤーナとラルフ。
「じゃ、じゃあ何が『ない』んですの!?」
「その本の内容だよ」
「内容…?」
「そう。キャスティングや設定はここと同じだ」
「そうでしょう!?アルエスク王国も、わたくしも、オレグ様も本の通りですわ!」
「うん、その本に書かれているのがこの世界のことなのは確かだと思う」
「なら…!」
「でも、蓋を開けると中身がだいぶ違うだろう?」
「中身…?」
舞台も登場人物も同じ。
アルエスク王国の姫が…今はだいぶ痩せましたけど太っていたことも同じですし、今は振り回してはいませんが、オレグ様がわたくしにぶんぶん振り回されていたことも残念ながら事実ですわ。
それに最近、魔物が増えてきていると聞きましたわ!
聖女様を召喚するのも近い未来、きっと現実になりますわ。
そう説明するも、誰も納得してくれませんわ。
「そもそも!姫様は聖女様にガルロノフ様を取られたとしても、そんな嫌がらせはなさいません!」
「でもヤーナ?恋は人を狂わせるって言うでしょう?」
「姫様は姫様自身のことを全く分かっておりません!」
「わたくし自身…?」
今のわたくしが聖女様にオレグ様をとられたらどうするかしら…?
小説ですとわたくしは聖女様の侍女たちに手を回してダサいドレスを着させたり紅茶をかけさせたり、どんどんエスカレートして最後は階段から突き落としたりしていましたわ!恐ろしい!
因みに階段から突き落とした時はオレグ様が聖女様を既のところで助けてくださり、侍女たちにやらせたことも後に全部バレて…処刑されたのでしたわ。
そんな恐ろしいことやネチネチしたこと、確かに好きではありませんわ。
でも、恋に溺れて自分を見失ったら……?
「姫様なら聖女様に直接言っているはずです!」
「え…嫌味を?」
「いえ、まさか!『オレグ様はわたくしの婚約者ですの!取らないでくださいませぇぇええ!』とかです!」
「うわぁ!直球!」
ヤーナから見たわたくしそんな感じですの!?
「でもオレグ様がもうわたくしに興味が無ければ意味がありませんわ?」
「それでも嫌がらせはなさいません!姫様なら振り向かせるために努力なさるはずです!まずきっと美味しいお菓子を開発なさってガルロノフ様に捧げるはずです!」
「そしてドラゴンでも討って、ガルロノフ様に捧げるはずです!」
「ラルフまで!?わたくしネズミを飼い主に捧げる猫ではなくてよ!」
否定するも、『やりかねません!いや、絶対にやる!』と言い張るふたり。
オレグ様まで頷いてらっしゃる!?
「まぁ、レーナは嫌がらせやいじめはしないよね。そこまで努力して、ダメだったら…きっと諦める。僕のために……」
「…………………」
寂しそうに笑うオレグ様。
確かに…。わたくしは本のことを思い出してまず、『諦めましょう』と思いましたわ。
オレグ様の心移りに胸が痛かったのは確か。処刑が嫌だったのも確かですわ。
でも、わたくしは何よりも…オレグ様に、好きな人に幸せになって欲しかったのですわ。
そう考えると、あの本の信憑性はかなり低いのかもしれませんわ…。
「もしかしたら……あの本は事実とは異なるのかもしれませんわね」
「たぶんどういう風に伝わったのかは分からないけど、こちらの世界のことを知っている誰かが事実を参考にして書いた、ただの物語なんじゃないかな」
なるほど。アルエスクに住んでいた誰かが地球に転生して、故郷のことを参考にして物語を作ったのだとすれば。
それは事実とは異なる内容になっていたとしても仕方がありませんわ。
「そう、なのかもしれませんわね……。そう考えるとそんなに恐れることではないのかもしれませんわね…」
「でしょ?でもね、レーナ」
「はい?って……………っ!!?」
オ、オ、オ、オレグ様!?
そ、その背中の黒いオーラは何ですの!!?
「一番違うのは僕の気持ちだよ。そんなぽっと出の聖女に靡くように思われてたなんて…僕は悲しいよ」
悲しいの!?悲しいんですの!?
悲しんでいるというよりは……怒ってますわよね!?ね!!?
そして聖女様のルビがおかしいですわ!?それ、ダメなやつ!!
「それにまたオレグ様呼びになってたよ?聞き逃さないよ?」
「え」
「お仕置きが必要かな?」
にーっこりと笑うオレグ様。怖いですわ!?
でも、そう…そうなんですのね………。
「わたくし、オーリャと……呼んでもいいんですのね……」
「っ!」
記憶を取り戻してから今までずっと、オレグ様はいつか聖女様のものになるからって。わたくしの婚約者ではなくなるのだからって壁を作ってまいりましたわ。
だからこそ、愛称呼びは避けておりました。
でも、もしそうなら。本の内容が事実とは異なるのなら。
わたくしにはオーリャ、と呼ぶ権利がありますのね……。
そんなことを考えておりましたらふとオレグ様から不穏なオーラが消えていることに気付きました、が………?
「…………オーリャ?」
「ほっぺたちょっと赤くしてうるうるの瞳で『オーリャって呼んでもいいのね』発言マジ尊い………」
「え?なんて?」
顔を両手で隠しているオレグ様。
なんて言ってるのか全然聞こえませんわ?
お耳も赤いような…風邪?
「きゃあ!?」
そんな心配をしていたら、急にオーリャに手を引っ張られてぽすんとお胸にダイブッ!
固くて痛いですわ!?
うぅぅぅ〜!でも…嬉しいですわ!!
「好きだよ、レーナ」
「ふぁっ!?」
ニコニコと嬉しそうに笑うオーリャ。
ああ…わたくしは愛されてもいいんですのね。
「わ、わたくしも……」
「ん?」
「わた、わたくしも……好き、ですわ…………」
「!!!!!!」
愛しても、いいんですのね。
一瞬目を見開いて固まったオーリャ。
でも次の瞬間…
「好きだ!レーナ大好きだ!」
「ぐぁぁあああ!!?」
前言撤回!
ぎゅうぎゅうに抱きしめられて死ぬかもですわ!!
王女らしからぬ声も仕方がないのですわ!!
ぐ、ぐるじ………も、もう、ダメ、かもぉ…。
スパ―――――――――――ンッ!
「加減を知れ!この…バカ公子――――!!!」
「ぐぁっ!」
ヤーナ!?オーリャの頭を叩いたそれ、履いてたパンプスですわよね!?
ガルロノフ公爵家に訴えられますわよ!!?
頭を抱えて一頻り痛がったオーリャは怨めしそうにヤーナを見やった後、今まで見たことのないくらい幸せそうな顔でわたくしを見て……。
あぁ、愛しくて胸が締め付けられますわ。
「早く結婚して閉じ込めたいな」
………………?
「楽しみだね、レーナ」
……………………いえ、とても不安になりましたわ!
闇が見え隠れ!




