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閑話? ある王立魔導師団長の懐古 種を蒔く編

読んでくださり本当に感謝です!

これにて師団長編は終わります。

次回からは再びレギーナ視点。


すぐさま陛下にレギーナ姫の件で謁見の申出をすると、すぐに許可が降りた。

確かに娘のあの太り方は異常事態だ。気にもなるだろう。


陛下とは何度か会ったことがあるが、威厳のある、大層整った顔のお方だ。

そもそもアルエスクの王族には美形が多い。

レギーナ姫のあの可愛らしい顔立ちも間違いなく遺伝だろう。

そんな可愛らしい姫が見る影もなく太ってしまったんだ。きっと心を痛めているに違いない。


自分より魔法に詳しい者は少なくともこの国にはいない。

自分がレギーナ姫のことを救える唯一の存在なのだということが分かれば、陛下も自分を再びレギーナ姫の指導役に任命するに違いない。

そう思ったのだが……


「え?今、なんと?」

「もう魔法の訓練は必要ない。そう言ったんだ」


レギーナ姫が太った原因は魔法にあること。そんな現象は今までに報告がないこと。そしてその理由も、今まで魔法が発動しなかった理由もレギーナ姫の魔法が珍しい属性だからではないか、ということ。

それらを説明してのこの反応。

…………なぜだ?


凍てつくような視線に晒され、すくみ上がる。

しかしここは引くわけにはいかない。

自分がレギーナ姫に会える貴重な時間が無くなってしまう。


「し、しかし…貴重な属性かもしれないんですよ?国に大きな富をもたらしてくれるに違いありません!」

「富、ね…………。師団長。この話は誰かにしたかね?」

「いえ……レギーナ姫の変化を見てすぐにこちらに参りましたのでまだ誰にも…」

「そうか。ならばこのまま誰にも洩らさぬように」

「な、なぜです!?」


さっぱり分からない。

あのように太ってしまってはレギーナ姫は噂好きな貴族たちの格好の餌食となってしまう。


「師団長の懸念していることはもっともだ。だが、それよりも重要なことがある」

「それよりも、重要なこと………」


国の発展よりも、娘の噂を払拭することよりも大切なこと、とは……?


「恐らくあのように太ってしまえば公爵家は婚約解消を申し出るに違いない。そうすればあの子は傷物になる」

「し、しかしレギーナ姫はアルエスク王国の第一王女です。太っていても婚約の申し出は掃いて捨てるほど来るのでは?」


例えば自分とか。自分とか。自分とか。


「いや。むしろ好都合だ。ガルロノフ公爵家と婚約した時は周りがうるさかったので仕方がなかったのだ。だが今後はこれを口実に断れる。城を出るならば魔法を使えなければ揶揄され苦労するだろうと世話を焼いたが…嫁に出ないならば魔法を使えぬことなど大したことはない。とやかく言うやつは不敬罪で引っ張れば良い」


不穏なことをスラスラと言う…。


ガルロノフ公爵家の息子とレギーナ姫が婚約者なのは有名な話だ。

なんでもレギーナ姫から望んだことで、ガルロノフ公爵家が()()()()婚約を認めた…というのは有名な話だ。


ガルロノフ公爵家の息子を見かけたことがあるが、とても異性から人気があるらしく、周りにたくさんの女性が群がっていた。

その真ん中でニコニコと笑顔を浮かべていてどうにも胡散臭くていけ好かない野郎だと思ってはいたが…まさか陛下も彼との婚約を望んでいなかったとは。


しかしその婚約の解消にはたくさんの犠牲が伴う。

陛下の真意はなんなのか…いまひとつ話が見えない。


「仰っている意味がよく分からないのですが………。陛下は何をお望みなのですか?」


ギロリと氷点下の視線を寄越され、ビクリと肩が震える。

これが一国の王の威厳…。


「望み?そんなもの決まっておろう。可愛い可愛いあの子を余の側に置いておくことだ」

「………………へ?」


思わず間抜けな声が出た。

まさかの親バカ思考だった。

マズい。不敬と咎められるか…?

恐る恐る見上げれば、陛下から不穏な空気が出始め…お、鬼の形相………。

ヤバい。処刑される。


「周りがとやかく言いやがって…。他国に嫁がせろ?国内のパワーバランスを見て降嫁させろ?何様だ?うちの娘は道具じゃないんだぞ……!」


自分の不尊な態度に対して怒っているのかと思えば、陛下は自分のことなど全く気にしていない様子。

むしろ忘れている。


「王妃だって余が床に(ひたい)を付けて嫁に出さぬよう頼めば嬉々として受け入れたわ」


陛下土下座したの?


「そもそも噂など王妃(あいつ)が喜んで跳ね返すわ」


え?あの可憐な妖精姫が?


「闇のギルドひとつ持ってるんだぞ。余だって殺せるわ」


王家の(妖精姫)、怖えぇ…………。


「へ、陛下………」

「………………」


ようやく自分がいることを思い出したのか、気まずい空気の中、無言で見つめ合う。

相変わらず強面ではあるが先程までの恐怖はない…………が。

今まで知らなかった陛下の一面……妻に弱く、ひどく親バカであるという一面を知り、なんとも言えない気持ちになる。


「…………とにかく。そういうことだ」


…………………了解デス。

って、いやいや!ダメだ!それじゃ自分とレギーナ姫との絆が切れてしまう…!


「しかし陛下!」

「この話は終わりだ」


もう何も聞き入れないとばかりに、陛下は立ち上がるとマントを翻して振り返りもせずに去っていってしまった。


ひとり取り残され、迷子のような気持ちになる。


「レギーナ姫…………」


困ったことになった。

自分が彼女を救ってあげるつもりだったのに…。

あわよくば彼女と…そう思っていたのに。

チャンスは泡となって消えてしまった。


「………………いや、まだだ。まだある」


()()を使おう。


アレを使えば…ガルロノフ公爵家の息子とも別れ、自分のところに()()()()()()()()のでは?

さっそく計画を練ろう。


待っていてね、お姫様。

君から望んで自分のところにの来るようにしてあげるからね。



そして、種を蒔いた。




ドロドロしててごめんなさい!

まさかの国王陛下もヤンデレ…。

ヤンデレの呪いが解けません。

誰か解呪を…!


でも次回からはドロッとしない予定なので気軽に読んでくださると嬉しいです。

ドロッとした方が好きな方は…要相談!?

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