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3 泣きすぎですわ!

読んで下さりありがとうございます。

ブクマ嬉しい!



次の日からさっそくラルフの特訓を受け、今日は2日目。

ちなみに今日の特訓は初心者らしく、走り込みと受け身ですわ。やっぱり目標のある運動はやりがいがありますわね!まだまだ体が重くて動くのも大変ですが…わたくし、目標があると頑張れるタイプの人間ですの。頑張りますわ!

え?目標はどこかって?もちろん、ドラゴンを倒すことですわ!燃えますわ〜!

昼食をとっていると、ヤーナが手紙を持ってきてくれましたわ…号泣しながら。


「ぐすっ。姫様。ふぅっ、ガルロノフ令息から…うぅ、お手紙が、来て…お、お、お、おりまずぅ〜〜〜」

「あ…ありがとう…」


ヤーナ、泣かないでちょうだい!確かに受け身で全身痣だらけだけど、わたくし清々しい気持ちなのよ?この痛みも成長の証ですもの。私を思ってくれるのは嬉しいけれど、あなた過保護すぎましてよ。


オレグ様のお手紙は少しブルーの入った封筒と便箋で、ガルロノフ家の紋章が透かしで入っているもの。わたくしはいつも柄や紙質を変えたいろいろな種類のものを使用しておりましたが、彼が違うものを使ったことはなく、いつも彼にとって最も身近であろうガルロノフ家で使っているものでしたわ。ここにもわたくしと彼の気持ちの差を感じますわ。ツキツキと心が痛みますが…これも仕方のないこと。ここで気付けて良かったのですわ。


いつものように今日も過剰に神経を使いながらペーパーナイフで封筒を開けている自分に気付き…ちょっと悲しい気持ちになりましたわ。

これは彼からの手紙を全て綺麗にとっておきたいという想いからきているわたくしの癖。でももうこの恋は実らないと分かっていますもの…。わたくしってば未練タラタラですわね。でもこのまま婚約者でいたら処刑…!頭と体がサヨナラするのはごめんですわ!この想い、必ず断ち切ってみせますわ!


きのうと一昨日届いたオレグ様のお手紙はまだわたくしが一昨日書いた謝罪のお手紙が届く前に書いてくださったものでしたので、いつも通り、その日あったことや以前私が出した手紙へのお返事が当たり障りなく書いてありましたわ。毎日書くのは面倒でしょうに、それでも丁寧な文字と文章で書かれていることに改めて気付き、彼の優しさに少し泣きたくなりましたわ。だって今まではそれが当たり前だと思っていたんですもの。今更気付くなんて馬鹿な女ですわ…。


で、今日のお手紙はもちろん一昨日わたくしが書いたお手紙へのお返事でしたわ。要約すると毎日の手紙と週末のお茶会の廃止に対して、正直ありがたいけど本当にいいのか?という内容ですわ。

まぁ、そうなりますわよね!

オレグ様が疑ってしまう気持ちも分かりますわ。実はわたくしがオレグ様の気持ちを試しているだけだとしたら?「送らなくていいとわたくしが言っても、それでも送るって言ってくださると思ってたのに!愛を感じませんわ!」とか騒ぎ出したら面倒ですもの。

わたくしはこんなんでも一応王族。ガルロノフ家的にも怒らせたら間違いなく厄介な相手ですわ。以前のわたくしでしたら言いそうですしね!うわぁ、わたくし痛いですわ!これが黒歴史というやつですのね…。でもわたくし、この業を一生背負っていく所存ですわ!

そんな厄介な相手なのに、オレグ様が「ありがたいけど本当にいいのか」と聞いてきたっていうのは…やはりお手紙とお茶会が相当今までご負担となっていたのでしょう。今回のわたくしの手紙に縋らずにはいられなかったんでしょうね…。オレグ様、3日前までのわたくしが本当にごめんなさい!後で午後のお茶の時間にでももう一度謝罪のお手紙をしたためましょう。


「姫様、午後の特訓に行きますよ!」

「ラルフ。はい!今参りますわ!」

「ぐずっ。うぅ…うぅぅぅ……いっでらっじゃいまぜぇぇ〜。本当に…本当に、どうかご無事でぇぇぇ〜〜〜」

「…討伐に行くわけじゃないぞ?」


ヤーナ、泣き過ぎですわ!あぁ…鼻水が…。

でもこれもわたくしを思ってのこと。ありがたいことですわ。あなたの鼻水はわたくしが責任を持って拭いて差し上げますわ!さぁ!このハンカチにひと思いにふんっと!ふんっと!



  *******



特訓を終え、お茶をいただきながら手紙を書ておりましたらお客様がいらっしゃいましたの。


「レーナっ!!」


ズバーン!と扉を開けて転がるように駆け込んできたのは、大層見目麗しい、ヴァシリーお兄様ですわ。わたくしと同じで金の髪に青い瞳。でもデブでブスなわたくしとは違って、兄は目鼻立ちも美しく、スラッとした長身。妹のわたくしが言うのもなんですが、完璧な王子様なのですわ!完璧な王子は髪を振り乱していても、なんかわなわなしていてもカッコいいのですわ!さすがですわ!

ちなみにレーナというのはレギーナの愛称ですわ!


「お兄様、ごきげんよう」

「あぁ、今日も可愛いな、我が妹よ………………って、ちっが――――う!!」


まぁ!お兄様が顔を両手で覆って後ろに大きく仰け反りましたわ!なんて素晴らしい柔軟性!なんて素晴らしい体幹!わたくしも見習いたいものですわ!こ…こうかしら?


「姫様。場が混沌とするのでおやめ下さい」

「あらそう?」


お兄様と同じポーズをとったらヤーナに止められましたわ。まぁ、そうね。話が進まないものね。これはお兄様が帰った後で改めてやりましょう。やり方は覚えましたわ!


「お兄様、どうかなさいまして?」


だいたい何が言いたいのかは分かっているけれど、一応聞いてみましたわ。


「どうかなさいまして?じゃない!話は聞いたぞ!」


お兄様はガバッ!と起き上がり、(今までさっきの体勢をキープなさってたんですのよ!お兄様さすがですわ!)カッ!と目を見開いて、私の肩をガシィッ!と掴んで…ってお兄様!さすがにちょっと痛いですわ!


「おまえ、明日ドラゴンを倒しに行くんだって!?」

「あ、全然何の話か分かっておりませんでしたわ」


なぜそういう話になったんでしょう?確かにわたくしドラゴン討伐は最終目標にしておりますが…さすがに明日行ったらプチッとやられて…そう、()られてしまう自信がありますわ!


「お兄様、落ち着いてくださいませ。どうしてそう思ったのかは存じ上げませんが、わたくしにそんな予定はございませんわ?」

「ほ…本当か!?良かっ…」

「当分は」

「いつかは行くんかーい!」


まぁ!勢いもタイミングもバッチリの見事なツッコミですわ!その証拠に、いつもツッコミをしているヤーナが密かに悔しそうにしておりますもの。さすがお兄様!でもヤーナのツッコミもいつも素敵よ!

お兄様は先程までの鬼気迫る雰囲気から打って変わって眉尻を下げてわたくしを諭します。


「いいかい?レーナ。君はこの国のお姫様なんだよ?そんな危ない真似しちゃダメじゃないか」

「でもわたくしダイエットしたいんですの。だから同時に護身術を学んで…」

「ダ……ダイ、エッ、ト………………だと?」


あ…あら?お兄様から冷たい空気が…。あら?しかもどんどん強く…?

お兄様は氷の魔法の使い手。そして完璧な王子様は魔力量もものすごく多いんですの!だから感情が高ぶると魔力が漏れ出てしまうのですわ!…って、そんなことより寒いですわ!これはもうすでにブリザードですわ!!部屋の中が極寒ですわ!!


「お兄様!抑えてくださいませ!寒くて凍えてしまいますわ!」

「ダイエット…ダイエットだと…?」


ひぃっ!?何がそんなにお兄様の逆鱗に触れてしまったんですの!?ブリザードが吹きやみませんわ!?


「ダイエットっていったら辛い運動と過酷な食事制限だろう?レーナがそんな辛い目に合うなんて…耐えられない!」

「いえ、お兄様?ダイエットって一言で言いましても、いろんなダイエットが…」

「それに…それに………」

「…………お兄様?え?な…泣いて…………?」


お兄様泣いてます!?これは涙!?……と、鼻水!?まさかこんな一瞬でこんなぐちょぐちょに!?イケメンでもこれは引くレベルの大洪水ですわ!?

な、何がそんなに泣くようなことが………


「痩せてしまったら!レーナが…レーナが減ってしまうじゃないかぁぁぁぁぁあああ!!」

「うそーん!?」

「ダメだ!絶対にダメだ!」

「お、お兄様、落ち着いて…………」

「殿下!気をお鎮め下さい!部屋が凍ってしまいます!」

「レーナが…僕のレーナが減っ………いやだぁぁぁ!!」

「お兄様!ちょ…泣かないで!」

「殿下ぁ!その大事な姫様が凍ってしまいますってば!」


なに、このカオス………!お願い、誰か止めてぇぇぇ!!!


「はいはい、バカ殿下何やってるんです?失礼しますよ〜」


ゴッ。

わたくしの願いが届いたのか、ブリザードは一瞬にして収まりました。

心神喪失状態にあったお兄様の後頭部に思い切りのいい一発をお見舞いしたのは、お兄様の側近であるパーヴェル・フキノフ様でした。



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