24 ちょっと失礼いたしますわ!
読んで下さり本当に本当にありがとうございます!
毎回遅くなってしまってすみません!
次回はもうちょっと早く投稿できる予定でおります。
「はぁ、疲れた………。討伐よりも野営よりも馬車が疲れた…」
「同じく、ですわ……」
馬車を降りたわたくしとオレグ様は隠すことのできないほどの疲労を駄々漏れ垂れ流しにしながら馬車を降り……降り…………くぅっ!こんな時でもオレグ様のエスコートはスマートですわね!?手を離すときに名残惜しそうに指先をきゅっと握られて…はぁん!かっこいいですわ!ときめきますわ!好きですわぁぁあ――――――!
…………こほん。取り乱しましたわ。
わたくしたちがこんなに疲れている原因はただひとつ。
「あ、兄上…兄上ぇぇ………うっ、うぅぅぅ〜〜〜」
目の前にいる、ジメジメと…今にもキノコが生えてきそうなこの男のせいですわ!!
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城へと急ぐ馬車の中。
オレグ様、ボリスラーフ、ヤーナとわたくしと…
「アルエスクの悪行、此度の訪問で王に突きつけてくれよう!」
ルスラン様……。
どうしてもわたくしたちに物申したいのか、自分が乗ってきた馬車があるにも関わらず、アルエスクの馬車に乗り込んできたのですわ。
「……ですから、置いてあった置手紙はボリスラーフ本人が書いたもので、彼の意思なんだって本人が言っているでしょう?」
げんなりとした表情を隠しもせず、オレグ様が反論しましたがどうせ…
「そんなわけないだろう!兄様が出て行く理由がどこにある!?アルエスクが攫ったに違いない!」
「「「「………………」」」」
ほら、聞かない。
先程から堂々巡りで…あぁ、疲れましたわ…。
ルスラン様が言う手紙。
それは誰かが誘拐を偽装するためにボリスラーフに無理矢理書かせた置き手紙……などではなく、単にボリスラーフが自分で、自分の意思で書いた家族に宛てた別れの手紙だったのですわ。
ではなぜ疑っているのか?
「なぜいつも珍妙な言い回しをするくせに、手紙では普通なのよ…」
ヤーナ…激しく同意ですわ!
なぜかボリスラーフの厨二病の呪いは書くときには発現しないらしいのですわ!
だから手紙の内容はもちろん普通の文章で、いつもの発言とあまりにも掛け離れている内容に本人の意思で書いたとは信じてもらえず、これは無理矢理書かされたのでは?もしや誘拐されたのでは!?と、憶測が憶測を呼ぶ結果に……。
え、その厨二病の発言はボリスラーフの中のどこでどう変換されて出てくるんですの?謎過ぎますわ。
「………我が魂の言霊はゼレグラントでは届く前に屍と化し、我が呪文は段々と呪われていったのです(私の言葉はゼレグラントでは聞いてもらえず、段々と私の言葉は厨二病になっていったのです)」
ギャーギャーとアルエスクを悪く言っているルスラン様をガン無視し、遠い目をして教えてくれたボリスラーフ。やはり苦労しておりましたのね…。
よくよく聞けば、話を聞かないのは現王の父親もだとか。
父親も弟も話を聞いてくれず、段々と病んでいって今に至る…と、いうことのようですわ。
確かに自分の意見をまともに聞いてもらえない状況が続けば疲れちゃいますわよね…。
………それにしてもルスラン様は延々と煩いですわね!?
「名乗り出なければ良かったのでは?」
「………いえ、バレるのは必至ですわ」
例えボリスラーフがルスラン様に見つからないように過ごしていたとしても、アルエスクでは食事の際、料理長が挨拶をするのが定例。
拒めば理由をアルエスクの王家に説明しなければなりませんわ。嘘で免れればいいのかもしれませんが…今回の訪問で万が一にもゼレグラントに発覚したとき、アルエスクが隠していたと思われる可能性は否定できませんわ!今回の来訪者は話を聞きませんし。そうすれば戦争になりかねませんわ!
そう、ボリスラーフはアルエスクのために名乗り出てくださったのですわ!
なら最良の道は何か?それは前もって名乗り出てルスラン様に理解してもらうことなのですわ。
誘拐ではなく、自分で出ていったこと。
アルエスクは自分が王子だということを知らなかったのだということ。
今、何不自由なく暮らしているということ。
それらを理解してもらって…できることなら自分が王子であることを黙っていてもらえれば円満に解決するのですわ!
それらを説明すると、ヤーナは納得したように頷き、そして未だ騒いでいる王子に目を向け…ジト目に。
「でもあんなに話を聞かない王子に理解なんてさせられますかね…」
「…………………………ね」
ルスラン様はまだアルエスクが誘拐したと思っているらしく、今度はアルエスク王家の悪口を言い始めましたわ。その王家のうちのひとりはここにおりますのよ?
え?デブス?…………反論出来ませんわね!わたくし、ついほんの数刻前までデブスでしたもの!でも今はぽっちゃりくらい…だと思いますわ!だから敢えて言うならば『ぽっちゃりブス』ですわ!わたくし進化しましたのよ!おほほほほ!
あ……ちょっとちょっと?ヤーナさん?その射殺さんばかりの視線を和らげてくださいませ?視線が不敬罪レベルですわ!って後ろ手に持っているのは暗器ぃぃ!!!
ひぃっ!?オレグ様も剣に手を添えない!笑顔なのにおでこの青筋が立っていて怖いですわ!?そして冷気がっ!オレグ様が使うのは水の魔法でしょう!?もう氷の魔法も使えるようになるのではなくて!?
こ、これは…城に着く前に馬車内で惨劇が起こってしまうのでは…………!?
ボリスラーフは未だ死んだ魚の目をしている状態。
ふむ。ここは私がなんとかしなければなりませんわね!!
「ルスラン様!失礼いたしますわ!!!」
「?」
ドンっ!ガッ!
「ふがっ!?」
「少々わたくしのお話を聞いてくださいませぇぇ!!」
「「「んなっ!!?」」」
わたくし最終で強硬な手段に出させていただきますわ!!ごめんあそばせ!!
現在、わたくしの右手はルスラン様のお顔の横で壁に突き、左手はお口を覆う状態。
言わば壁ドン状態ですわ!(片手は口を塞いでますけども!)
そう!ルスラン様の行動も発言も制し、強制的にわたくしのみに集中していただいておりましてよ!
ルスラン様はふがふがとどうにか拘束を逃れようとしておりますが、そこは最近の鍛錬で鍛え抜かれたわたくしの力でねじ伏せさせていただいておりますわ!ふんす!
不敬罪?わたくしは王女ですわ!どうとでもなりますわ!………たぶん!!
「ルスラン様。お兄様を大切に思っていることは十分に伝わりましたわ。居なくなってお寂しかったでしょう?」
わたくしが労しげな視線を送れば、睨んでいた鋭い目が少し和らぎ、暴れていた体の強張りが緩まったのを左手越しに感じますわ。
「でも今のボリスラーフをちゃんと見てあげてくださいませ。不幸せに見えまして?」
ルスラン様は少し目を見開いてボリスラーフの方を………あ、私が押さえてるから向けませんわね?
あらよっと。
左手をちょっとずらして顔を横に向けて差し上げる。
………………あ。
ちょっとグキッて音がしたような……?き、気のせいですわよね?あらやだ、涙目で睨まないでくださいませ!?
と、とにかくほらほら!ボリスラーフを見てくださいませ!
「ルスラン…」
「ふがふが……………」(恐らく『お兄様』と言っている)
真っ直ぐ見つめ合う兄弟。
兄は色気を漂わせた落ち着きのある雰囲気を纏い、弟は威厳とカリスマ性を持ち合わせた重厚感を纏い。
一見全く違うように見えても、よくよく見れば意志の強さを感じさせる瞳はふたりとも同じように輝いていて。
あぁ、やはりおふたりは兄弟ですのね…と、改めて思いましたわ。
「俺は、今、幸せなんだ」
「「「「!!!」」」」
ボリスラーフが、普通の言葉を…!!?
ゆっくりと紡がれた言葉は真っ直ぐで。それだけでも驚きなのに、ボリスラーフはいつもの憂いを帯びた顔ではなく、お日様のような、心からの笑顔をたたえて。
「幸せ、なんだ」
我は魔王の血、我が弟は魔王の妻の血をより濃く受け継いでいる。
(ボリスラーフは国王、ルスランは王妃に似ています。)




