7 イエス!パッション!ですわ!
読んで下さりありがとうございます!
剣の特訓を始めて数カ月。
今まではラルフに個人授業を受けておりましたが、先日「姫様は自分の手には負えません…」と匙を投げられましたわ…。なぜですの!?
わたくしの出来が悪過ぎるということですの!?心当たりは…ええ、ございますわね!
そんな訳でラルフから騎士団に混ざっての訓練を勧められ、本日に至るのですわ!
ちなみにラルフは副団長ですの。騎士団の中では三番目の地位なのですわ!実は凄いのですわ!
え?なぜ副団長なのに二番じゃないのかって?
なぜなら副団長が三人もいるからですわ。で、ラルフは副団長の中で二番目の地位なのですわ。ちなみに団長はおひとりでなのすけどね。
さぁ!今日からいよいよ騎士団に混ざって訓練ですわ!
うふふ…わたくしの右手が疼きますわぁ〜!
……最近ボリスラーフと料理の研究をしているせいで頭の中が厨二病なのですわ。気をつけないといけませんわね…。
「今日からお世話になりますわ!よろしくお願いいたしますわ!」
「「「………………………」」」
ラルフから紹介を受け、挨拶するも…あら?皆様微妙な表情ですわね?
ちょ…ちょっとヤーナ!殺気を出さない!!わたくしは大丈夫ですわ!
「あー…姫君。騎士団の訓練に混ざるのはいいですが、我々は遊びでやっているのではありません。王族に対してこのような物言いは失礼とは存じますが、我々の訓練の妨げとなる場合には速やかにご遠慮願いたく存じます」
ナイスミドルな団長様より丁寧な言い方ではありますが…「邪魔するなら帰れ」というお言葉をいただきましたわ!
こら、ヤーナ!殺気を出さない!ナイフを出さない!いつも持ってるんですの!?怖いから!!
でも確かにその通りですわ。皆様国を守るために日々本気で訓練してらっしゃるんですから、わたくしなどお遊びに見えることでしょう。ですが…
「わたくしも遊びで来ているわけではございませんわ!追々魔物も倒せるようになって、国のために役立ちたいと思っておりますの。邪魔だった場合、訓練から外していただいて結構ですわ。ですがその時はせめて端の方で訓練させてくださいませ。皆さんの訓練方法やフォームをお手本にさせて頂きたいのですわ!」
そう!婚約破棄されて処刑回避のために国外逃亡しない限りは、この国のために魔物を狩りますわ!わたくしこれでも姫ですから。この国のために頑張る所存ですわ!
わたくしの発言に驚いたのか、団長様が目を瞠りましたわ。
国のお姫様が魔物退治をするだなんて考えられませんものね。
「ですがその……姫君は運動はあまり……得意ではないのでは?」
「え?……あぁ!」
分かりましたわ!この体型ですわね!?
確かにこの体型で剣術を習おうなどと…なめてんのか?って感じですわよね!分かりますわ!
痩せてから来られれば良かったのでしょうが…わたくし毎日努力をしているのになかなか体重が減らないのですわ。なぜなんでしょう。
ですので皆様には大変申し訳ないのですが体重を減らすのは後回しにして、まずは剣術を習いたいと思っておりますの!
なんせわたくしは動けるデブですから!……くっ。自分で言っていて悲しいですわ…。
「大丈夫ですわ!こう見えて運動神経は人よりございますの!」
「そう…ですか?」
「はい!」
まだ目は疑っているけれど、不敬罪になるからでしょう。それ以上は突っ込んできませんわね。
これは…わたくしの努力で認識を覆すしかありませんわね!精一杯頑張りますわ!技術はまだまだでも、努力と根性だけは負けない自信がありますから!えぇ、根性論ですが……なにか!?バカにしてはいけませんわ!情熱は人の心を動かしますのよ!?イエス!パッション!
「もちろん皆様よりも能力が劣っていることは存じております!ですが頑張って食いついていくので…何卒、何卒!ご指導賜りたく存じますわ!!」
「あ、ええ!はい!もちろんです!」
わたくしの熱意(もしくはわたくしの後ろにいるヤーナの殺意)に圧されたのか、団長様にご指導いただく言質をとれましたわ!うふふ!
「では…まずは姫君の実力を見せていただきたい。……タラス!」
「はい」
呼ばれて前へ出てきたのは20代半ばの男性。
オレンジの髪で少し長めの襟足。へらりと笑った顔が…なんだかチャラそうですわ。
ですが見た目で判断してはいけませんわね!そんなこと言ったらわたくしの見た目なんて……うぅぅ…。
「ではこのタラスと軽く手合わせをお願いいたします。危険ですのでこちらの模擬剣をご使用ください」
「分かりましたわ」
渡された模擬剣は普通の剣と同じくらい重いですわ。ですが鋭い刃の部分が潰されており、当たっても切れることはないでしょう。…が、重い分、勢いが出て当たれば相当痛いでしょうね…。
ですが怖気づいてはいられませんわ!ファイト!わたくし!
「ルールは剣のみ。魔法はなしで…よろしいですね?」
「結構ですわ!」
どうしましょう…なんだか震えてきてしまいましたわ……。
「姫さん大丈夫かーい?震えてるじゃないですかぁ?団長、まだ姫様には模擬戦は早いんじゃなーい?」
「こらタラス!敬語を使え!」
前言撤回。やはりチャラいですわ!見た目通りチャラいですわ!中身が見た目を裏切りませんわ!
だからヤーナ!殺気がだだ漏れですわ!?
「大丈夫ですわ!これは武者震いですの。ラルフ以外と戦うのは初めてで…わたくし、興奮してしまいましたわ…!」
「へ……へー………」
チャラ男に引かれましたわ!?
「で、では……双方よろしいかな?…………始め!」
ズザッ!ガキ――――――――ン!!!
「「「………………………………」」」
「あぁ…ごめんなさい。またやってしまいましたわ……」
先手必勝!とばかりに地を蹴り、勢いを乗せたまま相手の剣を薙ぎ払い、また………折ってしまいましたわ。
「わたくしまだまだ技術が足りなくて…すぐに相手の剣を折ってしまうんですの。なかなか打ち合いまでいかないのですわ。でも剣を手にするとどうしても力んでしまって…こんなんだからラルフが剣術を教えてくれなくなったのですわ…」
「「「………………………………」」」
騎士団の皆さまがギギギっと油の足りないブリキの玩具のように、ラルフを見ましたわ。その先にいたラルフは…死んだ魚のような目。そんな目をするほど酷いんですのね…。
「えぇ…あの体型なのに一蹴りでここまで跳ぶのぉ…?副団長、手に負えないって…え、そっち?もしかしてもう姫さん、副団長を越えちゃったとか?マジかよぉ…。身体能力半端ねぇ…」
チャラス様…じゃなくてタラス様が何やらブツブツ言っているけど…ここまで聞こえませんわ。え?なに?「まさかここまでとは…」とか聞こえたけど…え、わたくしって他の方から見てもやっぱりそこまで酷いの?まだまだ鍛錬不足ということですのね……なるほど、分かりましたわ!
目を見開いたまま呆然としている団長様を真っ直ぐ見据えます。わたくしの本気が、伝わるように。
「わたくし自分が恥ずかしいですわ。もっともっと鍛錬いたしますので、見限らずにどうか…わたくしに剣術を教えて下さいませ!」
「ムリだ!!」
「ムリですの!?」
食い気味に否定されましたわ!?でもわたくし負けませんわ!!
それから同じような押し問答をし、最終的に騎士団の訓練に参加はしてもいいが教えるのは勘弁してくれとのことでしたわ…無念!
でも必ず皆様を見て、目で学んでやりますわ!わたくしただでは起きませんわ!!
「皆様、どうぞこれからよろしくお願いいたしますわ」
皆様に改めてお辞儀をすると…全員、丁寧なお辞儀を返してくださいましたわ!
なんとか熱意は通じたようですわね!
やはりどの時代も、どの世界も、根性論は大事なのですわ!
イエス!パッション!
認められたのは根性ではありません。
騎士団は実力主義!
でもまぁ……イエス!パッション!




