第5話:玄関先の攻防
「う、うわわわわわ・・・。そんな物騒なもん、いきなり振り回すなよ〜。」
「宍戸とか言ったな、貴様! ふざけたマネしやがって。この間の借りはここで返させてもらう!」
小五郎が玄関先に飛び込んだ時、
刀を抜き放って肩をいからせている壬生浪士組副長の土方歳三と、その怒りを持て余して弱っている晋作とが目に入った。
・・・予感的中・・・
小五郎はがっくりきた。思わず柱に手をかける。
「・・・晋作、あなた。よりにもよって、ご家老様の名を騙るとは・・・。」
「おおっ、小五郎。いいトコに来た! なんとかしてくれよ〜、こいつー。」
すがる目つきの晋作。
「やれやれ・・・。」
小五郎は歳三の方を向いた。居住まいを正す。
「先般は私どもの者が失礼した様で、申し訳ありません。――とりあえず、一旦その刀をおさめてもらえませんか?」
だが歳三はあくまで頑なである。
「そいつを引き渡してもらうまではだめだ。」
「それはできかねます。」
「じゃあ、実力で貰い受けるまでだ。」
今にも飛びかかってきそうな様子に、小五郎は一喝した。
「ここは長州藩邸です! そんな乱暴なこと許されると思ってるのですか!」
「そうだそうだ。そんな無茶したら、お前んトコの姫さん、どうなるか分からないからなー。」
続いて晋作がそう言った瞬間、歳三の顔色がさっ、と変わった。
小五郎も青くなる。そしてキッと晋作を睨んだ。
「晋作っ!!」
「うっ、あ、悪い・・・つい・・・。」
晋作も自分の失言に慌てふためいている。
「そうか・・・。やっぱり山崎の言うとおり、ここにいたか。一度ならず二度も! 俺らをバカにしやがって! 貴様ら許さねえ!!」
歳三の目は真っ赤に燃え滾っている。
刀を握る手にも力が入っている。
本気で斬る気だ・・・。
プライドを傷つけられた者ほど怖いものはない。
小五郎はじりじりと半歩後ずさった。
歳三から視線を外さないようにしながら、横目で距離を値踏みする。
刀掛けまで三歩、だが刀を取るその間に踏み込まれる可能性は高い。
歳三の刃は一瞬でも気を抜けば容赦なく襲い掛かってくる気迫に満ち満ちている。
果たして間に合うか?
小五郎が意を決した、その時――。