約束
どうなんでしょうか...
まるで微熱の様に昼の熱を残した夜の街
その中にぽっかりと空いた公園のベンチで
俺はロンとの思い出に浸っていた。
彼女との出会いは確か...
「何貴方 ホームレスさんなの訳?」
本当に辛辣だったなぁ
「貴方って 随分とテキトーなのね
真面目に生きなさいよ 真面目に」
ハハ...大きなお世話だよ全く
彼女の一言 彼女の動作
思い出す思い出す思い出す
「もう十分だよな...」
何時間も座りっぱなしだった重い腰をあげる
大きく伸びをする
そしてここからが本番だ
公園の真ん中の時計台を見る
よし丁度だな
「きゃぁぁぁぁぁあ」
公園の林の方から女性の叫び声がした
俺が駆け付けると
そこには目を血走らせた男が
半裸の女に馬乗りになっていた
俺に気付いた男が俺を睨む
「あぁ? 現在お楽しみにつき立ち入り禁止なんですけどぉ」
「うるさい」
「はぁ? てめぇも グァァア!」
俺は男を蹴り飛ばす
カチッ
「貴女は立てるならそのまま逃げくれ」
女に一言かけると蹴り飛ばした男の方へ歩き出す
「俺の獲物なんだがぁ?何してくれてんだよぉぉぉお!」
立ち上がった男が殴りかかってくる
武道の心得があるのだろう
その拳は並の人間相手なら敵なしだろう
しかしその拳を避けながら俺は男に話し掛ける
「お前女ばっかり殺してんだよな?今までに何人殺したよ」
カチッ
「知らねぇよぉ!!」
まだもラッシュを続ける男
「その中にさ 俺の知り合いがいた訳よ」
カチッ
「そいつはさぁ いい奴だったんだよ
本当お前みたいな奴に殺される様な奴じゃない」
「そいつは残念だったなぁ
俺が殺したって事はいい女だったんだなぁ」
男は気持ち悪い声で笑った
カチッ
「だからお前に復讐するよ」
「3分 俺がお前を蹴り飛ばしてから3分経った」
男は心底どうでもよさげに腕を持ち上げプラプラと
挑発するかの様に動かした
「それがどうしたんだよぉ 俺はピンピンしてるぜぇ?」
「いや死ぬよ 確実に」
俺は手に握られた懐中時計を一瞥した
「その前に殺してやるよぉぉお!」
何処かから取り出したナイフを構えて
男が突進してくる
カチッ
「ぐふっ」
走っている途中で男は吐血し倒れる
「俺の愛したものを壊した罰だ」
そのまま男は死んだ
「俺はこの力が嫌いなんだ」
「強そうでいいじゃない」
「護るための力ならまだしも復讐って...」
「いいじゃない世の中護るのも仕返すのも出来ない弱い奴ばっかりなのよ ?」
「でもこれは誰も救えない自己満足な力だろ?」
「じゃあ私と約束しましょう」
「約束?」
「なによ私は一回貴方を助けたじゃない」
「あれは不可抗力みたいなもんだろ」
「いいから!」
「もし私が殺されたりなんかしたら
私はすっごく相手を恨むと思うのよ。当然よね?」
「まぁ...」
「だから そいつを貴方の力で道連れにして
それでスッキリ成仏するから」
「まず殺される様な事するなよ...」
「もしもよ もしも!」
「分かったよ」
あの時の約束守ったけどさ
ロン お前やっぱりいい奴だよな
お前を殺した男のこと全然恨んでなかったし
普通に成仏してんじゃねぇか...
幽霊にでもなってくれたら
あの男は生かしておいたのに
まぁ約束破りって怒られるんだろうが...
明日はちゃんと約束を守ったって
ロンに報告しに行きますかね