儂、攻略対象の騎士団長の長男と出会う
キョウヤ=バルト。父親は現騎士団長であり、侯爵家である。
キョウヤの先祖は転生者であった。
数々の英雄譚を残した先祖を崇拝し、十歳にして大人と殴り合っても負けない力を持っていた。
キョウヤが学園の曲がり角に差し掛かった時、
「きゃあっ!」
走って来た少女とぶつかった。
「おっと」
ぶつかった少女が倒れそうになるのを見て、足のバネを使い少女の背後へと回り込み、背中を支え抱えた。
いわゆるお姫様抱っこである。少女は自分の状況を理解すると、顔を真っ赤にする。
「大丈夫?」
にっこりとキョウヤが微笑みかけると、少女はこくこくと頷く。
キョウヤは十歳にして、大人と奪い合っても負けないイケメン力を持っていた。
「怪我が無くて良かった」
そっと少女をおろすと、少女は顔を真っ赤にしてキョウヤに何度もお礼を言う。
「きゃぁーー、わ、わわ、私バルド様にお姫様抱っこされたわ!」
そう言いながら、少女は喜びながら駆けて行く。
「あ、廊下を走ると危ないよ?」
やれやれ、と少女を目で追うキョウヤ。
少女が曲がり角に差し掛かった時、
「きゃあっ!」
角から現れたヘレンとぶつかった。
「ぬうん!」
ぶつかった少女が倒れそうになるのを見て、足のバネを使い少女の背後へと回り込み、背中を支え抱えた。
いわゆる垂直落下式ブレーンバスター、落下前状態である。少女は自分の状況を理解すると、顔を真っ青にする。
「儂に攻撃するとは、小童。いい度胸をしておるな」
ヘレンがドスをきかせた声で問いかけると、少女はぶんぶんと首を横に振る。
ヘレンは十歳にして、ヤクザとシマを奪い合っても負けない迫力を持っていた。
「儂に逆らうと死あるのみ。一つ賢くなって良かったのう、小童が」
少女を勢いよく廊下へ叩きおろすと、少女は頭を流血で真っ赤にして、ヘレンに何度も命乞いする。
「儂一生の不覚、この身体は少女であった。致死威力を見誤ったわ、去れ小童」
「ぎゃぁーー、わ、わわ、私、殺されてしまうわ!」
そう言いながら、少女は駆けて行く。
その二人の様子を、キョウヤは信じられないという顔で眺めていた。