儂は転生する
「(ぬう、前書きだと?)バーブー?」
「おめでとうございます、貴方はヒロインになります」
若い娘が俺の前に立っていた。異世界転生と言ったか。
「ぬぅ……?娘、ヒロインとは何だ」
「ヒロインとは、色々な人に愛される女の子です」
「断る!」
「でも、このままだと死んじゃいますよ?」
「儂に脅しとは、娘、死にたいらしいな」
「いえ、もう寿命なんです。ほら」
娘が促す方へ目を向けると、自分の身体が見えた。
「むぅ、儂は冥界に来たのか」
「まあ、そんな物です。で、異世界なら転生できますけどどうしますか?」
「死んだのだから、娘。貴様に任せよう」
「良かった、じゃあヒロインにしますね。能力に希望はありますか」
「今のままの力を持ったまま転生させて貰おう」
「はい、解りました。それでは転生させちゃいます」
その時、女神は知らなかった。
この男、戦武王と呼ばれ、一万年伝承される伝説の暗殺拳の伝承者だという事を。
「(ぬう、儂は赤子に生まれ変わったか)バーブー!」
「ほら、パパでちゅよ」
「ママでちゅよー」
そして儂をあやそうとしてくる。それより腹が減った。
「パパはこの国の騎士、強いんだぞ?お前もそれくらい強くなるように鍛えてやるからなー」
そう言った優男は儂の顔を撫でまわす。
「(調子に乗るな、小童が)バーーブ!」
「貴方、ヘレンは女の子なのよ、鍛える必要なんて無いわ」
「(いいから飯を出せ娘、殺すぞ)アブババババ」
「よーしよしよし、よーしよしよし。たかいたかーい、たかいたかーい」
撫でまわす優男にうんざりした儂は、男が抱き留めたそのタイミングで男の首に二本の指を付きたてた。
「たかいたかーい、たかいた……た……たわばぁぁぁ!!?」
バチュゥゥン。男の身体がねじ曲がり爆散した。
「き、きゃぁぁぁぁぁ!!!」
「(黙れ娘、しかし腹が減った。儂の食事らしいおっぱいとやらは残しておいてやろう)バーブー!」
ヘレナ=ガーディアン男爵令嬢。下級貴族である。
彼女は男爵令嬢であり、学園に入り王子の婚約者である悪役令嬢に虐められ、友人達に背中を押されヒロインを告発する。
その後、公爵家に引き取られ、王子と結婚して幸せに暮らす。そういう運命を持ったヒロインであった。
「あなた、あなた!?」
「(動くな娘。飲みにくいではないか)バーーブーー!」
この赤子には、座右の銘がある。
『決められた事には従わない。俺が道だ』
「(ぬう、後書きだと?)バーーブー?」