はじめに
セオ…アンジュリク王国に暮らす青年。
天使…セオの前に現れた天使。男。
山脈と川が国境となり、他国との関わりは殆ど絶たれている国…アンジュリク王国。
豊かな土地に恵まれ古くから栄え、他国からの侵入も殆ど無く平和な歴史を辿ってきた。
専制君主政であり、国王は他国との交易などは限られた場所でしか許可していない。
より多く利益を…と考えるならば盛んにやるべきだが、それは大きなリスクを伴うことになるので、自給自足を主にし足りなくなったら補う程度に抑えるようにしていた。
明確にある王国間の溝を無くそうと動いた国もあったが、遠征に行った兵士は何度送っても”辿り着けず”に帰ってくる。
理由は、アンジュリク王国は神との契約により守られているからだ。
もちろん他国はそんなことを知らないので、王国は魔術によってか、あるいはもっと恐ろしい力によって守られていると考えていた。
王国には小さな国土に抱えられたこの大きな秘密の他に、王族は決して他言してはならないもう一つの秘密がある。
契約を破らない限り、アンジュリク王国は安定し栄えていく。
民に当たり前のように与えられている平和と、その裏にある秘密。
王族は知っていた。
『犠牲の上にしか平和は成り立たない』ということを。
しかし、その『犠牲』とは何なのか。
それは国王と極一部の者のみしか知らない。