序章1 神話
まずは世界観の説明です。
本編は次回からになります。
まず、世界に一つの種子が存在した。
全てを内包した種子と、何物も存在しない空間。
それだけが世界の全てだった。
だが、ある日、種子は願った。
『芽吹きたい』と。
だが発芽する為に、世界には様々な物が足りなかった。
光が。
空気が。
根を下ろす大地が。
故に種子は自らの内よりそれらを切り離し、光を生み、大地を作り、風を廻らせた。
水を生み出し、宿す生物を創りだした。
生み出した子等が夜の闇でも迷わぬように、月や星も配置した。
こうして世界を創った種子は、世界の中心で芽吹き、根を下ろし、巨大な大樹となった。
大樹は子等の住処として、自らの内に住居すら作ってのけたのだ。
やがて世界は生物で満ち、様々な姿を現していく。
それは大樹の想像すら超える多様さであった。
そしていつしか、生物の中に高い知性を持つ者が現れた。
彼らは他の生物を支配し、同族間ですら争い、世界に戦争をもたらした。
大樹はその光景を見て悲しみ、彼らを統べる『神』を産み出す事にした。
こうして様々な神が生み出された。
太陽神ホルスが。
水神エイルが。
風神ハスタールが。
漂神レヴィが。
――そして破戒神ユーリが。
『神』は彼ら、すなわち人間を統制し、世界はいくつかの国に分かれることで争いは一端の終結を見る事となる。
やがて大樹は『世界樹』と呼ばれ、信仰の中心となった。
『世界樹』は『神』を従え、世界に平穏が訪れた……かに見えた。
いつしか北の大地に『魔王』と呼ばれる存在が現れていた。
すでに世界は世界樹の手を離れ、独自の進化を遂げていたのだ。
『魔王』は神の座を欲し、世界樹に取って代わるべく、大樹の頂を目指した。
そこには、世界樹の生命を凝縮した『若芽』が存在したからだ。
多くの神々が手を取り合い『魔王』に対抗した。
『神』と手を携え、人々も戦った。
だが……彼らの力は及ばず、『魔王』はその芽を手に取ってしまう。
世界の主が変わる――その時、『破戒神』を名乗る神がその力を暴走させた。
『破戒神』の力は、『魔王』を討ち払い……『世界樹』すらも吹き飛ばしてしまったのだ。
『世界樹』は半ばまでへし折られ、創造と信仰の中心を失った世界は多いに乱れた。
後の世は、この争いを『神魔大戦』と呼び、禁忌として伝えていくことになる。
人の世界が再び平穏を取り戻すまで、幾年もの時間が必要となった。
北の魔獣たちも、中心となる『魔王』を失い、勢力を弱めたのは不幸中の幸いだったと言えよう。
こうして人は、世界の平穏を取り戻した。
そして、今は神魔大戦より五百年の年月が経過していた。
名も無き語り部が受け継ぐ神話より。
口伝による伝承なので、いい加減なモノですね。
詳しくは前作( http://ncode.syosetu.com/n8735cc/ )をご参照ください。