八-アタシの宝
カミオに諭された。
「意地を張らずに、素直に ここに泊まってよ」
泊まらせて もらうことにしました。
「バユタ亭」は、宿、食堂兼酒場、当然 本日は休業。
客のいない食堂に、僕は一人、丸テーブルを前にして座っています。
目の前には酒がある。
カミオ達は、奥へ入っていった。
いろいろ片付けも あることでしょう。
カミオが気を利かせて、
酒の入ったボトルと、ショットグラス、乾きモノみたいなオツマミを 用意してくれる。
ショットグラスに 自分で注ぐ、薄い琥珀色しているようです。
香りも それなりにキツイ。
口に含む。アルコール度数は 高いようだ。
わるくない。いや、うまい。
この世界にも、蒸留酒が あるらしい。嬉しい事です。
このカラダの年齢は、正確に判らないが、中世の文明開度と監理者が言っていました。
飲酒制限年齢は、気にする必要は ないでしょう。
ウィスキーというより、バーボンという風合いでした。
乾きモノも、この酒に合う。木の実っぽいものです。
結構、飲んでしまった。
貴重なものだったらどうしよう?
しばらくして、カミオが戻ってきました。
僕が、席を立ち 気持ちよく飲みすぎたことを 詫びると、
「伽弐亜は、謝ってばかりだね。そういうの疲れない?
その酒は、高級品ってわけじゃない。気にしなくていいよ。
でも、お勧めの酒なんだ。気に入ってくれたなら、アタシも嬉しいよ」
少し遅れて、マイミもやってきた。
カミオが 軽く叱る。
「遅いよ。何やってたんだい。夕食を作るよ。アンタも手伝いな」
「簡単なもので悪いね。明日はちゃんと作るから 勘弁ね」
明日も泊めてくれる? いや、泊まらせるつもりでしょうか?
豪華ではなかったが、十分おいしかった。
食前に 食材に感謝の言葉と、
食後に 二人に 労いの言葉をかけたら、驚かれました。
「さて、マイミ。アタシは、伽弐亜と二人で話をしたい。
もう、休んでくれるかい?」
「私は、邪魔? 伽弐亜ぁ、私がいてはダメ?」
「僕は構わないが、お母さんがマイミがいると、話しづらいんじゃない?」
「アンタとは、今日でなくても話せる。
伽弐亜は いつまでこの街に居るか判らない。
二人で話したい内容もあるんだよ。
マイミ、子ども扱いするつもりで外させる訳じゃない。
おとなしく席を外しておくれよ」
「ふ~ん。大人の打合せ・・・・・。あぁああ、ごめんなさい。お母さん、あの.....」
いいかけて、マイミが真っ青になって、母であるカミオに謝罪します。
カミオは、苦笑いして、
「魔獣に噛まれたとでも思って忘れる事にするよ。終わった事は、しょうがない。
口から出てる途中で気付いた事は、褒めてあげるよ。
もういいから、自分の部屋に戻りな」
マイミは、なぜか名残惜しそうに、奥へと消えていきました。
この世界では、ことわざが 、「犬」が「魔獣」に置き換わるんだ。
魔獣に噛まれたら、死なないのかな?ああ、強姦=死に近いのか、この世界は。
そんなこと考えるのは、不謹慎だろうか。
(ごめんなさい)一人心の中で謝罪した。
「さてと、アタシも飲ませてもらうよ」
そう言って、カミオが自分の分のグラスを置き、僕の対面に座る。
改めてみると、カミオって、金髪で華奢の感じの女性。
決して、肝っ玉 女将って雰囲気じゃ無い。
口調と、見た目のギャップがある女だ。
女性特有の儚さも感じさせる、魅力ある女性....。
こんな女が、あんな目に・・・・。
悪いのは盗賊だが、己の力不足を責めずには いられない。
そんな僕の姿を 察してか、
「言いたい事があれば、遠慮はいらない。
でも先に言っておく。明日は忙しくなるよ。
今日の襲撃を ギルドに報告しなけりゃならない。
アンタが、ギルドに行ってくれるかも、決めとかなきゃならない。
ああ、そんな話は後にしよう。
言いたい事あるんだろ。
さあ どうぞ」
少し捲し立てるように、カミオが一気に話した。
きっと僕の話を じっくり聞く準備でしょう。
僕は、イスをたち、腰を90°曲げて、カミオに頭を下げます。
「お言葉に甘えて、謝らせてください!
これは、僕のワガママです。
カミオさんを さらに傷付けること、承知しております」
「本当に、申し訳ありませんでした!」
どのくらい経ったのだろう。
1分くらいか? 5分か? それとも、もっとか?
カミオが口を開く。優しげな声が。
「まず、頭を上げておくれよ。そして座っておくれ。
な~んか、今日一日の付き合いで、少し予想できたけれど、
伽弐亜ぁ、アンタの頭の中、やっぱり理解できない。
少し説明して。
そうじゃないと マイミは 渡せ・・・・・。
ああ、言葉使いは楽にな」
マイミ、ひょっとして、僕にくれるの? ネコの子じゃあるまし。
今日会ったばかりですぜ、お母さん。気が早すぎませんか?
魅力は、まあ あるが、どちらかというと お母さんの方が、欲しいかな?
イカン、イカン。妄想とはいえ、不謹慎ダ。
デモ 気ニナル。
「マイミくれるんですか?お嫁にですか?無茶苦茶、気が早くありません?
当人、二人とも初耳ですよ」
「だから、その言葉使いは・・・。
はあ、もう いいや。好きに話しな。
サンだけは、外しておくれ。
マイミを渡すといったのは、従者、パーティーメンバー、そんな意味だよ。
もちろん、二人が合意すれば、嫁でも善い」
ファンタジー世界の 単語連発ですね。
「マイミの件は、置いといて。僕が謝罪した理由を お話します」
「ああ、頼むよ」
そう言って、カミオが空になった、二つのグラスに酒を注ぎます。
「言いずらいのですが・・・・。あの時、僕は カミオさ・・を 犠牲にしました」
「ああ、冷めた目でアタシが、犯されているを見下ろしていたな」
「すいません! 本当に、申し訳!ありませんでした」
「アタシの裸を見たかったわけでは無いようだね。当初は疑っていたさ。
他に理由があったんだろ。
だいたい、魔力封じのグッズ 沢山付けられていただろ」
「言い訳にもなりませんが、魔力封じのグッズを外すのに 注意を カミオさ..に、
向けさせておきました」
「結局、アタシ等を助ける為の、ことだろ?
アイツらは、伽弐亜を 仲間にしようとしていたもんねぇ」
「申し訳ないというのは、優先順位を勝手に つけていました。
確たる理由はありません、下心は無かったと誓えます。
マイミを 若い女性を 将来のある女の子を 絶対助けたかった!」
「ははっ、アタシには将来無いってか?
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ああぁ、わるかった! 泣くんじゃない。冗談だって。ほらこれ飲んで」
悲しいやら、カミオに対して申し訳ないやら、
彼女の心の強さに 触れることができて 嬉しいやら、いろんな涙が止まらない。
本来は、あの襲撃事件の犠牲者谷、遺族に もっと心を砕くべきかもしれない。
でも、今は 近くで生きている二人のことで、いっぱい、いっぱいだ。
「母親が望むのは、自分のことより子が優先は、解かるだろ?
伽弐亜は 良くやってくれた」
でも、僕は。
「アタシが あんたに向ける気持ちは、感謝だけさ」
そんなこと言われると、また泣けてくる。
「マイミを渡すってのは、半分冗談だけど、
アタシの一番の宝を 差し出してもいいと思うほど、あんたに感謝してるってことさ」
半分は、本気ですか?ネコの子じゃないでしょうに。
「まあ、伽弐亜の気持ちは、わかった。キリがないから終わりにしよう。
お互い納得はしていないが、対立している部分は 皆無みたいだからね」
「わかりました。ありがとうございます」
「だから、逆だっての・・・・・。はあ、ほんとにキリが無いや。
それで、これから伽弐亜は、どうしたいんだい?」
「ハイ?」
「行く場所とか、逢いたい人とか、何か目的があるんだろう?」
「特には。っていうか、全くないなあ。
とりあえずアルネシタに来ようと思ってたくらいでしょうか?」
「大体、何処から来たんだい。
ああゴメン。尋問みたいだね。無理に答える必要は無いよ」
「大丈夫です。特に聞かれて困ることは、ありません。
ただ、説明が めちゃくちゃ難しいんです。
色んな意味で、遠くから来ました。
この国?の常識的なことを 全く知らない程の遠くです」
「じゃあ、しばらくこの街に居るのかい?」
「この街が、僕の滞在を許す環境であれば、しばらくは」
「念のため聞くが、伽弐亜は 懸賞首じゃないよな」
「多分、違うと思います」
「多分とは?」
「記憶が曖昧な部分に加えて、今日、賊とはいえ 人を殺しました」
「ああ、アイツなら懸賞が掛かっている可能性も高いから、
褒められることはあっても、罰せられることは、まず無いさ」
「じゃあ、おそらく大丈夫でしょう」
「明日は、アタシと一緒に ギルドに行くかい?」
「ギルドで身分証明の メダル?は、作れるんですか?」
「作れるよ。ギルドに加盟することになるけどね。
細かいことは、ギルドで聞いておくれ。あんたが、一緒だと今日の説明も しやすい」
「僕が同行することで、カミオが楽になるなら、同行します」
明日の予定が、決まったところで解散となり、休むことにしました。
僕の部屋は、とりあえず客室を使わせてもらう。
興奮が抜けきらず、寝付かれないと思いましたが、すとんと意識を手放しました。
人と触れ合った、今日が この世界での生活の始まりなのかもしれない。
そんなことを考えながら............。
プロローグ編はここまでです。この後、3話ほど マイミ視点のお話を 毎日10時投稿する予定です。




