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贈られし者-プロローグ編-  作者: かにはユ
7/11

七-出発進行

抱き合ったまま、二人で大泣きして、どのくらい経っただろう。

「コホン!」

何かを催促するような、咳払いが聞こえ、僕は冷静さを取り戻す。


落ち着いてみれば、結構恥ずかしい。

しかも、無理やり抱きしめた形。


やってしまったか!


これから先、母子おやこを どこかに送り届けるまでの間、

ダブルの冷たい視線に さらされ続けるのですか?

無視されるのですか?


「伽弐亜様の、人となりは 少しは理解しました。

でも、この世の中、見ず知らずの人を助ける方がいるとは、思いません。

ストレートに あなた様の要望を おしゃってください」


暖かい口調だった。ほっとした。

マイミの頭を 一撫でして、体を離す。

遠慮もあるだろうし、さっき会ったばかりで身元も不明同士です。

事務的に行った方が、話が進むでしょう。


「まず、様 は不要です。呼び捨てで、お願いします。

丁寧な言葉も要りません。普通の話し方で結構です」


ファンタジー定番に従い、呼び捨てを希望する。

それと、多分短い付き合いだろうけど、フレンドリーに接して欲しいのもある。


「無理のない要望は、素直に従う所存です。でも、せめてサン付けで 呼ばせてください」

カミオが希望する。


で、お願いします」

我ながら 命令に近いな、こりゃ。


「承知しました。こちらから要望を言える立場ではございませんが、

カニヤサマ、いえ伽弐亜も丁寧な言葉を 自重していただかないと、話しづらいです」


これは、うっかりしていました。ゴメンなさい。

娘のマイミというと、借りてきたネコのように おとなしく僕達のやり取りを見ている。


「普段も ほぼこの語りです。でも楽に話します。

まず座って、落ち着いて話しましょう。

マイミも一緒に参加して。さっきは突然 抱きしめてゴメンね」


カミオは、適当な場所に 素直に座る。

マイミは、僕を軽く睨みます。

そして、(嫌なこと されてない) という風に 伏し目がちに 少し首を横に振ってから、

カミオの隣に座った。


「僕の要求は、特に無いかなあ」


カミオが目を丸くする。直後に クスリと笑う。

いい表情だな。女性は笑顔がいいな。

マイミは、不審人物を見る視線を ぶつけてくる。

彼女らに言葉が無いようなので、続けます。


「あなた方の生活に、踏み込む意思は ありませんが、今からの行動の為に

無理の無い範囲で、二人のことを 教えて欲しい」


「例えば?」

マイミが口を出す。


「住んでいる場所は?」


「 アルネシタ領の領都アルネシタよ。知っている?」

マイミが答える。

カミオは 黙って見守ってます。


「行ったことは無いが、聞いたことはある。

そこでは、何をして生活してたの?」


「職業?お母さんと二人で、宿屋兼食堂をしているわ。

「バユタ亭」という名前よ」


「今日はどうして、盗賊に襲われることになったの?」

瞬間、二人とも表情がこわばり、体を震わせる。

軽率な質問だったろうか?


「とっ隣町に用事があって......、帰ると途中でした」

カミオの方が、やや震える声で返す。


「楽に会話してもらえた方が助かるよ。

答えづらい質問は、そう断って貰えばい」


今度は、二人とも微笑む。いいもんだ。


「二人を アルネシタまで送ろうと思う。

そうですね、

見返りは、道中 この地域の常識なんかを 教えて貰いましょうか」


「そう。伽弐亜は 今、多くを 私たちに望んでいないんだね。

逆に教えてほしい。伽弐亜の身の上は、秘密なのかい?聴かない方がいいのかい?」

カミオが聞いてきます。


この世界の監理者、秘密にしろとは言ってなかったよな?確か?

「身の上を聞かれるのは、問題ありません。

とても ややこしいので、説明に時間が掛かるので、おいおいと。

でも僕に興味を持ってもらえるのは、むしろ ありがたいかな?」


「う~ん、納得できない部分もあるけれど、まあいいや。

仮に、伽弐亜にどんな悪意があっても、抵抗のしようも無いものね。

伽弐亜の意向に従うよ。用心の気持ちが残るのは、勘弁ね」


そう言って、カミオがウィンクする。

何か 率直に嬉しい。

あんな目に遭ったばかりの女性の 前向きな感じが、たまらなく嬉しい。

少し、涙ぐんでしまった。


「な~に、泣いてんの。男の癖に。強いんだか、弱いんだか 判かりゃしない」

マイミが、軽口を叩く。

馴れすぎです。

コヤツは 少し遠慮を覚えてほしものです。


「さあ、出発しましょう。目的地はアルネシタで」

僕は立ちあがり、出発を宣言する。


「アタシが馬車を操作するから、

伽弐亜は、後ろでマイミに聞きたいことを聞いて。

マイミ! あんた、伽弐亜に丁寧に答えるのよ。

奴隷として売り払われても、文句言えない立場なんだから!

初潮が 何才だったからなんかでも、ちゃんと答えるのよ!」


(マイミの母上よ、暴走しています。馬車の運転は ぜひ安全運転で!)

ぼくは、心から そう願わずには いられなかった。


「道は分るかい?カミオ」


「大丈夫、少し飛ばすけど、今日中に街に着くと思うよ」

(くれぐれも、安全運転で)




結構 揺れた。ハードな馬車の旅だった。

舌を噛みそうで、会話は、ほとんどできない。

マイミは、軽く睨んだり、

目が合うと恥ずかしそうに、そっぽ向いたり、声を出そうとして止めたり、

それなりに いそがしそうだった。


馬車は楽しげに進む。

馬って人の気持ちが 判るんだったけ?

楽しげな雰囲気が、カミオの気持ちだったら、いいな。


馬車の揺れもあって、会話は困難のようだったので、

気配及び魔力の探知の練習をする。

もちろん、自己流である。

機会があれば魔術も、キチンと学び直したい。

再び、襲われてはたまらない。

ファンタジー世界の お約束では、魔獣も居るはずだから。


まず、気配感知が出来るようになったようだ。

さすが、世界の監理者、

「魔法のほとんどを使用可能状態」で、送り出してくれたようだ。


カミオから、しなやかで強い 気 を感じる。

きっと、それなりに強いのだろう。

さきほどの、娘に対するボディーアッパーも見事だった。

娘を盾にされ、戦えなかったのかな?

目の前の、マイミからはカミオはほどの 気 の強さは感じられない。

目が合うと、(なによ!ふん)って、感じで、目を逸らされた。

[友好スキル]に類するモノよ、どこへ旅立った。先輩 世界の監理者ぁ、頼んます!


まあ、いい。次は、魔力探知のマスターです。

これも、あっさりマスターできた。

おお今度は、マイミが大きい。

僕自身のは判らないので、比較できないが、かなり大きい方なんじゃない?

それに比べて、カミオはたいした大きさでは、ないようです。


ちゃんと機能しているかどうか、確かめようもないが、

向かってくるような、気 も、魔力も感知することは ありませんでした。





夕闇が迫り、薄暗くなる頃、領都アルネシタに到着する。

お約束の門番がいる。

でも、ここのイメージは 関所。


ここを通るには、身分を証明するメダルが必要らしい。

当然、母子おやこは、持っている。普通に通れる。

僕は?僕のは?先輩 監理者サマぁ、用意してないの?

正に、門前払い?せめて、街に入りたいよ。

そこでゆっくり母子おやこに、別れを告げたい。

できれば、お詫びと 道中の感謝の言葉を添えて。


妄想に反して、あっさり通れました。

お金を払えばよかったのね。

銀貨1枚。

賊から奪った お金から払った。

ここは、前世の日本ではない。問題は ないでしょう。

仮の身分証のカードを渡される。

有効期限は、1日。

1日以内に、正式な身分証を手に入れるか、再び銀貨1枚。

つまり、明日のうちに、おおやけの機関に 出頭の義務。

そんなこんなで、街に入れました。


場合によっては、街の外で彼女らに 別れを告げようと考えていた。

僕としては、キャンピングトレーラーが有るので、最低限の食料と、現金があればいい。

二人には帰る家があるようなので、食料さえ貰えれば、

ほとんどのお金は渡すつもりでいました。

しかし、二人に慰留されました。

母カミオには、懇願されました。

娘マイミには、半ば脅迫された。このまま別れるのは、許されないそうだ。

なんで?


僕としても 今現在の この世界の知己は、彼女達だけであります。

可能ならば、この関係は大事にしたい。

でも、恩着せがましいことは、したくない。

彼女らの家、「バユタ亭」には、行くつもりは無かった。

カミオにも、謝りたかったが、彼女の心の傷を えぐるようなモノ。

僕の気持ちを済ませるために、謝罪すればいいと言うものではないでしょう。


マイミの脅迫?はスルーできるが、

カミオの「話を させては欲しい!」は、受けるべきと思いました。


客として、泊まらせてくれと頼みましたが、二人は 拒否!

しばらく、営業は休むそうだ。

まあ、当然だろう。あんなことが、あったのだから。

だから、客としては泊まらせられない 。

じゃあ、他で泊まり明日顔を出すと言ったら、マイミに叱られた。


「私らの、宿屋としてのプライドを考えろ!」


どうすりゃ、いいんだ?

すると、カミオに諭された。


「意地を張らずに、素直に ここに泊まってよ」


おっしゃる通りです。


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