マの3
-----マイミの独白、まだ続き------
「伽弐亜は、アタシが思うに『迷い人』じゃないかと 推測している」
「『迷い人』って? なぁに、お母さん」
「うわさの範疇の話さ。その説明は、今は勘弁しておくれ。
もし、そうであれば 伽弐亜は、この世界で 一人ぼっちということになる」
「そうなんだ。それだったら寂しすぎるよね。私たちが家族に なってあげようよ」
「ふふ、伽弐亜も 暴力少女は、願い下げなんじゃない?
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ああぁ、また、なんで泣く?
あんた、そんなに涙もろかったっけ?」
「だって、お母さんが、あんまり言うから」
「今日は、もう言わないように気をつけるよ」
「今日は?」
「こんなおいしいネタ、手放すつもりは無いよ」
「もう、いい加減にして。話が進まないよ。さっきから」
「そうだね。あんた、さっき「家族になってあげよう」って、言ったじゃない。
私の意見と、同じということさ」
「少し、解かってきたけど、それでも「私を差し出す」が、イマイチ分かんないよ?」
「ふふふ、自分に正直になってごらん。マイミ。チャンスは待ってくれないよ」
さっきから、熱があるみたい。風邪でも ひいたかな?
「アタシが あんたを差し出すっていう意味は、二人のことを許可するということさ。
本来なら、あんたら二人で、全て決めればいい。
でも、あんたは 頭の奥まで ウブだし、恋したことも無いだろ?
伽弐亜も朴念仁で、間違いないと思ったからさ」
「朴念仁って、どういう意味、お母さん?
それに、相手は、私じゃなくてお母さんでも いいんじゃない?」
「朴念仁知らないか。まあ、似たもの同士の二人だってことさ。
アタシも子供に手を出すほど、困っちゃいない。
それに、娘の好きな相手を取るほど、悪い親じゃないよ。アタシは」
なんで、私が 彼を好きなことに なっているの?
アイツのことを考えると、胸が少し ドキドキするだけで、別に好きじゃない。
私はピンチに陥った時、わたくしマイミを 颯爽と助けてくれる、王子さま。
一択だ。
これは、譲れない。他に選択肢の余地は 無い。
アレ? 伽弐亜ぁ、助けてくれたな?
でも、颯爽とじゃない。お母さんを......。
でも待てよ、結果として、お母さんも助けてくれたわけだし。
でも、見た目が 王子?
少々無理すれば、王子様に見えないことも無い。
結構 好みな見た目だ。黒髪も良い。
アレ?ひょっとして、伽弐亜が、私の 運命の王子さま?
ナイナイ、あんな泣き虫、運命の人じゃない。
でも待てよ? 私たちの為に泣いてくれたんだよね?
ということは、ワ・タ・シ、運命の王子様を ぶっ飛ばしちゃったの?
やっ・ちゃっ・た・わ・け?
すでにベットの中だが、それとは別に、目の前が暗くなった気がした。
そして、頭の上から 母の声がした。
「ふふ、ようやく気付いたようだね。
ネタを手放したくないけど、カワイイ娘のためじゃ、ショウガナイ。
助けてあげるよ」
「助けてくれるって、アイツに 一緒に謝ってくれるの?」
「はは、それも面白そうだけどね。
たぶん、 謝罪 競争になるよ。間違いない!
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ああぁ、また、なんで泣く?
今度は、意味わからないぞ?」
私は、嬉しくて泣いてしまった。
母が、いつも通りに 軽口を 叩いてくれるのだ。
この時ようやく、彼に 本当の 感謝 が、できたような気がした。
「ごめんね。今度は なんでもない。
どうやって、助けてくれるの?」
「伽弐亜の本音を あんたに教えてあげるのさ」
「そんなの解かるの?」
「ああ、今日会ったばかりだがね。
経験上、ありゃ単純さ、心の中はね」
「ふ~ん、それで?」
「あんたのことは、なんとも思っちゃいないさ」
「殴ったこと?」
「それも含めてさ。多分、女としても見られていない」
「べっ別に、怒ってなければ、良いんだからね。私は」
「もう、素直になりなって。だから、「差し出そう」って、話になるのさ」
「う~ん、解かったような、分からないような。
伽弐亜は、私を受け取ってくれるかな?」
「その点は、アタシも判らない。
多分断るとしたら、遠慮的なものと思うんだ。
世界で一人きりで、寂しくない人間って、いないと思うから」
気持ちの整理が つかない。
望まれてなら、まだマシだが、無理やり受け取ってもらうのも、抵抗がある。
まあ、でも、何かを強制されるわけではないので、
今日はもう、考えるのを辞めよう。
私の気持ちを 察してか、再び頭の上から、声が掛かる。
「もう寝ようよ、マイミ。眠れなくても、目を瞑っていいるだけでもいい。
明日は、今日の後始末で、結構、忙しいんだ。
よく、考えな。でも、チャンスは待ってはくれないよ。憶えておいて。
おやすみ」
「おやすみなさい。お母さん」
私は、母の胸で眠りについた。
眠れないかと思ったが、母の心臓の音が 心地よく、スッと寝ることができた。
いつもと同じに、目が覚めた。
なぜか、自分の家で、自分の部屋で、自分のベット、ああ、お母さんのベットか?
で、目が覚めたことに、すごく感謝の思いが 湧きあがってきた。
変わらない日常って、こんなに ありがたい モノ だったんだ!
お母さんの声がした。
「ふふ、また泣いてる。いつから泣き虫マイミになったの?」
「お母さんは、もう! おはよう の前に それ? 挨拶は大事って、いつも言ってるじゃない」
「おはようさん。なんか 「災い一転して、幸運 転がり来る」って、
よく言うじゃない?そんな気がしてきたよ。アタシたち、親子。昨日死んだんだ。
新たに生まれ変わったつもりで、今日からガンバロウ!」
「そうだね。家族も増えるし。きっと楽しくなるよ」
「あらあら、まあ? もう子づくり しちゃたんだ。
ぐっすり寝むれたから、お母さん 気がつかなかったよ」
「朝から、勘弁してよ、お母さん。伽弐亜、本人のことよ」
「ふふ、もう決定なんだ。その意気よ。プッシュ、ぷっしゅで、押し倒すのよ。
分かっているわね? マイミ。逃がしちゃダメよ」
「押し倒すは、余計よ。
ごちゃごちゃ考えるのは、止めたわ。
伽弐亜には、家族になってもらえるよう頼んでみるつもり。
お母さんも協力してくれるでしょ?」
「う~ん、もちろん賛成だけど。
もっと、強引な容が、良いと思うんだよね、あたしは。
おっと! これは ふざけていないよ。真面目な話だよ」
「まずは、伽弐亜と話し合おうよ。彼の意見も聞くべきだよ」
「あはは、彼か? 初めて呼んだね。名前以外は、アイツとかだったのに ねえ。
そうだね、まあ それが良いかな?
彼? あはは、彼の意見は消極的なものだと、ヨむけれどね」
「もう、お母さんは。真面目な話だか、からかってんだか、判りづらくてしょうがないよ。
朝ごはんに しようよ。少し早いかもしれないけど。
私、伽弐亜、起こしてくるよ」
「そうそう、がんばんな。積極的にいかないと、何も始まらないよ。
ああ、これも おふざけ無しの 話だよ」
伽弐亜の寝ている、客室に行く。
これだけが、昨日と違う日常。
大変なことがあったが、得たモノもあったのだろうか?
そう思うようにしよう。母を見習って。




