~炎帝、覚醒~4
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
~第七章~
俺は今、学校の保健室兼病室のベッドの上に寝ていた。
傷はかなの手当てにより外傷は殆ど無いが闘いの後なので検査入院といったところだ。
あの後、俺の携帯に一本の連絡があった。
相手は貴田、街に潜伏していた獣魔人達を一人残らず蹴散らしたという報告だ。
貴田の能力は他者に触れることで相手の心を読んだり自分の思考を相手に伝えたりすることが出来る能力だ。
学校で肩に触れられた時に現在の状況はあらかた伝えていた。あとはライクスの部下達を蹴散らす間、俺は奴の気を引くという作戦だったわけだが……。
……俺はライクスを倒した。一見、余りにも生々しいやり方で。
終わった後、ここで先生方に怒られたさ。コリスやかなも作戦の協力をお願いされたらしい。何も言っていないのにコリス達があの場所に来た理由も知ることが出来た。
さらに言えばコリスには発信機のようなものを取り付けていたらしい。相手の基地を見つけ一気に畳む作戦だったとか。
もちろんコリスの了承を得てだ。
知らなかったとはいえ俺は作戦を台無しにし、あまつさえ死ぬかもしれない無謀ともいえる闘いをした。それは確かに反省している。
でも、奴は許せなかった。あの時見せたコリスの顔は本物だった筈だ。だから闘った。それだけさ。
中嶋先生の『まぁ、まぁ皆さん。優一くんも無事だったわけですし、今日の所はこの辺でね。』の一言で一度話しは終わった。
そして今に至るわけだ。
「中嶋先生、俺の闘ったライクスってそんなに強い相手だったんですか?」
俺は目の前で堂々と椅子に座っている中嶋先生に質問した。
「あぁそうだな。お前らにはまだ授業で出していないが、喋る獣魔人ってのはB級レベルだな。」
レベルは大まかに分けて小型魔獣がE級、獣魔人がD級、大型魔獣がC、ライクスのような奴がBで、さらに実力が伴うとA、S、らしい。だが、これはあくまで目安であり実力は闘ってみないと分からないそうだ。
俺が最初にライクスと出会った時、魔獣の方を先に狙ったのは学校では一番危険なのは魔獣だと教えられてたからさ。
「そもそも、お前ら2年はまだ実習期間のようなものだ。変な事言って何らかの事件に巻き込まれないとも限らない。だからこのことは3年になって実力が付いてきた頃に授業をすることなんだ。それに、お前ら2年の依頼は実力のある生徒に出してるのも確かだが、レベルB以上の相手の依頼はやらせていないし、C級の奴も極力避けている。今回はたまたまの偶然だ。すまなかったな。」
先生は深く頭を下げて詫びを入れた。
俺は慌ててそれを止めさせる。
「ところで先生、ずっと気になってたんですが、なんでコリスを俺の元に居させたんですか?ライクスの実力は先生があいつを見た時分かった筈ですよね?それなら俺の所に置くのは安全ではないと思うんですが。」
最初は救ったんだから最後まで面倒見ろ的なものだと思っていたが今の話を聞いて疑問に思ったことを聞いてみた。結果的に守れたが失敗する可能性もあった。市民を助けることが仕事のこの機関の筈だ。なのにそんな重要任務を俺にやらせた。これは何か理由があるきがしたのだ。
先生は少し悩んだ顔をしたあとため息を一つ付いて俺を見た。
「これは本当にお前が強くなってから言うつもりだったが……。」
先生は溜めながら険しい顔をして言った。
「実はお前の親父が関係しているんだ。」
「……はぁ!?」
突拍子も無い話に少し着いていけなくなりそうだった。
『俺の父さんが関係している?』
確かに父さんは強かったと言う話はよく耳にしたが突然いわれると実感が湧かない。腑に落ちない。
「確かに父さんは強かったですけどそれがどうして……。」
戸惑いながらもおそるおそる聞いてみた。
「お前の親父はな優一、かつて神の力を手に入れた人なんだよ。」
「……!?」
神、神ってあの世界を変える力をもつあの力のことか?
「『神炎帝』〈しんえんてい〉それが彼の通り名だ。神の力は黄金の輝きを放ち、炎もその色に染まる。神の炎〈ゴッド・フレイム〉最も強力な力の一つだよ。」
「でも、そんなに強い力なら何故親父は死んだんですか!?」
神の力を手に入れたんなら大抵の敵に負けるとは思えない。それにあの父さんが負けるなんてありえない!
「詳しくは知らないがリスクの話は聞いた。」
リスク?
「その炎は自分の寿命を力に変えて闘うらしい。強力ゆえのリスク、無い話ではない。」
『リスクのせいで父さんは死んだ。』
父さんは突然死んでしまった。何も言わず。ただ残された家族の俺達が沢山泣いたことを覚えてる。
でも、家族に何も言わないまま、わざわざ寿命を削ってまで闘い勝手に死んでいき、家族の皆を悲しませた父さんに不思議と怒りを覚えなかった。
「だがな優一、お前の親父は沢山の人を……。」
「先生、大丈夫です。分かってますから。」
あの優しい父さんがただで死ぬ分けがない。沢山の人を救い死んだ。逆に俺は突然死んだ父さんに怒るよりも、沢山の人を救った父さんを誇りに思った。
「デキの良い息子で羨ましいよ。」
「あぁ、そうだ。早く本題を言って下さい。」
いきなり父さんの話をされたから盛り上がってしまった。父さんと俺の関係てなんだろう。
「すまないな。話を戻すが、まずお前の親父は神の力を有していた。そして、その息子がお前だ。つまり、お前には神の力が宿っている可能性が高いんだ。」
俺に神の力が?
「そんなのあるわけ無いですよ。先生も知ってる通り俺は弱いんですよ?そんな力あったらとうの昔に使ってますよ。」
確かに父さんの炎の力は受け継いだが、俺の炎が金色に輝いたとこなんて見たことない。まぁ、つい先日、黒色にはなったが……。
「あともう一つ、調べでは神同士はお互いに干渉できないらしい。つまり、神の力であるコリスの力は神の血統を持っているお前に適用されないんだ。聞くが、お前は彼女といていいことが沢山起こったか?」
言われてみれば、特になかったかもしれない。皆がやったーやったーと騒いでいたが俺はいつも通りの生活を送っていたような?
「いや、それでも。」
「納得できないか。だが、お前のそばにいたいと言ったのは彼女だ。おそらく感覚的にお前とだったら力を使わずにすむと感じたんだろうな。」
そういえばあいつ、『私がお願いしたんです。あなたならきっと大丈夫だと思ったから。』とか言ってたっけ。
「お前に渡した瓶持ってるか?」
「これですか?」
懐からあの小さな瓶を取り出した。父さんの片身だと思ってずっと持っていた。
「開けてみろ。」
俺は先生に言われるままに瓶の蓋に手をかけ、開けた。
中からは淡い光が漏れてきてその光が俺の体に浸透するように入ってくる。
『暖かい。』
俺が感じたのは身体の芯からくる暖かさ。この感じには覚えがあった。
「……父さん。」
間違いないこの感じは父さんの炎だ。暑くて体が焼けそうになるぐらい熱いのにどこか暖かい。子どもの時に感じた父さんの温もり。
自然と涙が頬を伝った。溢れてくる懐かしい気持ちに心が溶かされてしまいそうだった。
「それはお前の親父の炎だ。そして、これで炎の継承は終了した。」
「……?」
「お前らの家系は代々、自分の炎を瓶に閉じ込め、次の世代に自分の炎を託すというのが慣わしだ。そして、それはお前の親父にお前が一人前になったら渡してくれと頼まれた品でもある。B級クラスを倒せたら一人前だ。だが、勘違いするなよ。お前はまだ弱い。まだ経験も不足している。これからの修行も怠るなよ。」
「分かってますよ。」
俺はただ父さんに認められたようで嬉しかった。もうこの世にはいないけど、この炎が俺と父さんを繋いでくれる。
「それが俺の言いたかったことだ。あとは身体を充分休めておけよ。これからのこともあるからな。」
先生は椅子から立ち上がると病室からゆっくりと出口に向かって歩きだした。
と、思いきやくるっと首だけ回してとんでもないことを言い出した。
「あ、お前2週間ほど停学だから。あんま家からでるんじゃねーぞ?」
「何ーーーー!!!」
そんなにあの事件が注目されてるのか。これじゃまるで問題児じゃないか。
自分のやったことの重みを充分に噛み締めながら俺は身体を休めることとなった。
~第八章~
2週間、俺はこれからについて彼女と話し合っていた。
「コホン、えーコリス様、あなた様の依頼は無事完了いたしました。なので、学校側からありました通りですね。あちらが用意された入居場所でお暮らしなされた方が良いと思いましますしだいなのですよ。」
わざとらしく、あくまで相手を傷つけないよう自分に出来るだけの丁寧な言葉で俺は彼女に語りかけた。だが……。
「……やだ。」
「ふざけんな!このやろー!」
コリスは断固として取り合ってくれない。なんだか、先日の闘いのあとからさらに懐かれた。最近では一緒にお料理するぐらいに。
「いいかよく聞け!俺は確かにキミと共に暮らしてきた。突然だったし、住む場所の確保も出来てなかったからな。だがしかーし、今は違う。住む場所は出来た。つまり、キミの巣立ちの日を迎えたわけさ。さぁ飛び立つんだ。キミの輝かしい明日はあっちにある!」
高らかに掲げた指が眩しい。今のかっこよかったよな。
「やだ。やだ!ここから出たくないー!」
わがままなお嬢さんだ。勝手は自分では何も決めることが出来ず時の流れを呪いたくなるような生活をしていた筈なのに、ここ数日でメキメキ強くなってる気がする。そんな過去を乗り越えられるほどの強い精神があるのか?
「お前なー。この前の俺を見てただろ。俺はあんな残酷なことの出来るブラックな人間なんだぜ。怖くないのか?」
ライクスとの一戦を最後まで見ていたのは、こいつとかなだけだ。あの時の俺は自分でも思う程、恐ろしかった。俺にはあんな残酷なことできるんだと自分に恐怖しまくったよ。
あの時の俺を思い出したのか、一瞬、ビクッと震えながらも彼女は答えた。
「確かにあの時のあなたは怖かった。でも、あれは私の為に闘ってくれたあなたなの。今まで、私の為に助けてくれる人はいなかった。私という物の為に闘い争ってきた人達ばかりだった。だから、怖かったけど嬉しかった。」
涙をこぼしながら言ってくる彼女に何も言えなかった。てか、何か誉められたみたいで恥ずかしい。
「でも、私、あなたに守られてばかりで、あなたに何もしてあげてない。だからあなたに幸せになってもらうために少しでも何かしたいの。」
そんな風に思ってたのか。でも、そんな事故犠牲の精神は気に入らない。
「あれは、任務だったからやっただけだ。それ以上でもそれ以下でもない。お前の為にやったんじゃない。任務の為にやったんだ。お前が俺に何かすることはない。俺がお前にすることもない。任務は終わったんだ。お前はお前のいるべき場所に帰れ。」
俺は冷たく突き放した。彼女も相当堪えたらしい。ショックで泣いてしまっている。
しょうがないんだ。じゃないと彼女のためにならない。いつも助けられては恩を返していたんじゃ身が保たない。これからの彼女の為にも今は心を鬼に……。
「ま、まぁ、どうしてもってなら俺の言うこと聞いてもらおっかな~。」
明後日の方向を向きながら両手を頭の後ろに組み。なかなかの日和ぶりを見せて話した。
俺、やっぱり女に弱い。
心の弱さを心の中で悲しみながら彼女をチラ見した。
彼女はパーと明るい顔をするとまだ赤い目元を輝かせて今か今かと俺の言葉を待っていた。
こいつも不器用だな。
「そうだな。任務をこなしたことと、死にかけたことと、お前の身の回りの世話をしたから。三つ程にしとくか。」
嫌な顔一つ見せずに俺を真剣な眼差しで見つめていた彼女に面と向かって話した。
「まず、一つ。ここから出ていけ。」
一瞬渋った顔をしたが、命令だぞっと補足すると渋々頷いた。命令強力だな。
「二つ目、お前、自分の力については先生からの説明は受けたな?」
「はい、とても強力なものだと教わりました。」
彼女自身、半信半疑だろうが、納得してもらう外ないな。
「お前はその力を早くコントロールできるようにしろ。命令だ。」
コクコクと頷く彼女、ま、これは断ることもないか。てか、当たり前だし。
「そして、最後のお願いは何ですか!」
何でテンションたけーんだよ。こいつ絶対Mだろ。
「あぁ、最後の命令な。最後はもう金輪際、こういう風に何かを自分の身を削ってまで返そうとするな。それが命令だ。」
コリスはビックリした顔をして驚いている。その顔には困惑の顔をしていた。
「でも、私はこれからどうやって恩を返していけば……。」
悩んだ顔をして、どうすればいいのか必死で考えているらしい。あ、また涙が出そうだ。
「そんな、深く考えるな。気持ちでいいんだよ。気持ちで、助けてくれたらありがとう。それでいいだろ。」
「でも、それじゃ……。」
「だーかーら。深く考えるなって、それでも何か返したいんならこんなんじゃ無くてもっと気持ちの籠もったことしろよ。四つ目になるかもしれんが、それを考えるのも命令だ。ハイ終了、この話もう終わり。」
勢いのままに話を強制的に終了させた。コリスは目を回しながら。うー、と唸って分かんないけど分かりましたと言った。
これは彼女の為だ。まだ、難しくても時が何とかするだろ。他人任せになるが、あとは彼女しだい。俺に出来ることなし。
「移動は明日なんだしよ。飯にしようぜ。何がいい?まぁ、今ある食材で作るしかないけど豪華にしようや。」
俺がニカッと微笑むと
「優一はずるいですね。」
そう一言残し、俺とキッチンに立った。
最後ぐらい2人仲良く作りますか。
~エピローグ~
次の日、俺は彼女を連れて校長室に向かった。停学中でも、依頼についてなら学校に来ても良いことになってる。途中、周りからの視線が痛かったが気にしないことにした。
彼女を無事送り届け、そのまま帰路についた。歩き慣れた道、最近は2人でこの道を通ったもんさ。
「明日から静かになるな。」
鼻で笑いながら家についた。
次の日、ピンポーンという目覚ましにより覚醒した。俺はバリバリ停学中、用事で誰か来るという予定もない。何より時間も10時頃じゃないか。
「ほんと誰だよこんな時間に。」
睡眠を妨げられて少し機嫌を悪くした俺の頭は彼女の登場でもやもやした気持ちに一変した。
「おはようございます。優一。」
ニッコリ微笑むコリスに俺も条件反射で
「おはよう。」
あっさり返した。
次第に俺の思考も回復してきた。まず最初の言葉は……。
「なんでお前がここにいんだよ!」
大きな声で相手によく伝わるよう。ナイスなボイスで叫んでしまった。アパートの皆さんごめんなさい。
そんな俺を無視しながら坦々とコリスも答えた。
「私、今日づけでここのアパートの202号室に住むことになりました。至らない所もあるかと思いますがどうぞ宜しくお願いします。」
流石、礼儀正しいな全く。最初のころは基本的な日本の風習を知らなかった筈なのに、いつの間にか覚えてる。天才の成せる技か。いや、神の力か。
どちらにしろ、追求することは一つだ。
「宜しくねコリス、ところでコリス。ここの入居についてなんだけど。誰かからここにしろって言われなかったかな?」
「どうして分かったんですか?確かに中嶋先生に……。」
よし、決まったな。
コリスが最後まで言い終わる前に彼女の肩に手を置き。優しい笑みで言った。
「コリス。俺、行くところが出来たからちょっと行ってくるわ。鍵は閉めていつものところに置いといてくれ。じゃあな。」
ビシッと敬礼してダッシュで走った。もちろん、行き先は学校だ。
ものの10分程度でついた。いつも30分ぐらいの筈だが、なかなかのランナーぶりで通学路を走り抜けた。
「なかしまーーーーーー!!!!」
大声で怒鳴りながら体育館を目指す。奴はいまあそこにいる筈だ。
体育館のドアを思いっきり開け放ち、ターゲットを探す。
今はC組の授業中か。少し見渡しただけで奴を見つけた。
「テメーー!!なんでわざわざ、俺のところにあいつを住まわせてんだよーーー!!!」
奴はケロッとした顔で答えた。
「え、楽しそうだからいいんじゃね。」
そう言い終えた瞬間に俺の拳が奴の頬をえぐった。
「馬鹿な、ここまで戦闘力を上げていたなんて。」
雑魚キャラのようなセリフを放ち中嶋は倒せた。
俺は初めて奴から一勝をもぎ取った。周りからの声援も厚い。
「よくやった。ナイスだ火村!」
「俺達のためにありがとう。」
「俺達C組はお前を誇りに思うよ。なぁ!そうだろ皆!!!」
「「「おぉぉーーーー!!!」」」
それはクラスが一致団結した瞬間だった。俺も勝利の味を噛み締めた。
その日の午後。郵便局のお兄さんが速達ですと封筒を渡しに来てくれた。
差し出し先は学校か。何だろう。と、中に入っていた。紙を読んでみる。
そこにはこう書かれていた。
『天石学園、2年C組、火村優一殿。このものの停学日数を2週間から3週間に変更する。』
というものだった。
「あり?」
俺はただ呆然とその紙を見つめた。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。




