~炎帝、覚醒~3
ここまで読んでくれた方ありがとうございます。
~第五章~
はっきりいって、俺は家で絶句していた。何故だ。彼女達は晩ご飯を作ってくれたらしい。
ありがとう。
「って、そうじゃねーだろ!なんでかなが家にいんだよ。」
かなはC組期待の優等生様だ。それがなんで家に。
「えぇ~。いいじゃない優ちゃん。昔もよく一緒にいたでしょ。それにコリスちゃんに聴いたら晩ご飯の話してないっていうじゃない。だったら来るしかないじゃない。」
「優ちゃんっていうな!しかもいつの話だよ!」
かなは頬を膨らませてブーブー言ってる。ウッゼー!!!
コリスちゃんは粗食中、まぁ、コイツはいいや。
「でも、マジで今ダメだって。お前には言ってやるけど、これ一応、任務だからね?営業妨害ですよー。優等生ー。」
「フフフ。あまいね優ちゃん。私は何も知らずにココへ来た。つまり、何も知らない私をココに入れてしまった。これは優ちゃんのミスよ。私はいいけれど優ちゃんの仕事の信用を失わせたいならいいんじゃない?」
頭がいいと悪知恵が凄まじいな…………怖。
「それに、最近のコリスちゃん危険そうなんだもん。」
かなはコリスの能力を知らない。知らないが、彼女は彼女でコリスをちゃんと見ていて心配してるわけか。
「わぁ~たよ。今回だけな。」
「さっすが優ちゃん。やっさし~。」
屈託なく笑うかなに、俺も思わず笑ってしまった。さすが優等生、相手の心を掴むのもお手のものですか。
食事を終えてかなも帰って行った。
「優一、コリスちゃんに悪い事したら駄目だよ。」
要らないおせっかい付きで。
今は食器を洗っているところだ。コリスとね。
「……優一、何か私のことを聞いたの?」
コリスがそんな事を言ってきた。
そんな真剣な顔してたかな?それとも、先生と校長室に行ったところを見ていたのか。
「あぁ、少なくてもお前の大まかな出生ぐらいは聞いたかな。」
コリスは曇りを含ませた顔で俺の洗った皿を取った。
「……私のこと嫌いになった?」
不安なのか。これが彼女の見てきた過去の重さ。こんな質問、そうそう言うわけないよな。
「正直、驚いたさ。」
彼女の顔がより一層、曇った。
「でも、キミをより守りやすくなった。」
彼女が顔を上げて俺を見た。
「こんなこと言ったら、同情に聞こえるかもしれないけど。キミのことを知ることが出来て良かった。どこの誰かも分からない人よりもどこの誰か分かる人の方が安心だ。まぁ、俺の自己満足だけどね。」
俺は笑顔で彼女を見た。彼女は頬を染めながら。
「……私を守ってくれるのがあなたで良かった。」
「っ!?」
殺人級の笑顔で微笑んでくれた。その笑顔たるや俺が皿を落としてしまうぐらいだ。
パァリーン
「あぁ、ごめん大丈夫だった。」
「は…い…。」
彼女の顔が赤い。俺の顔も火照ってきた。炎の使い手の俺を萌やすなんて、くそ!
空気も気まずい。俺は逃げるように
「ここは俺が片付けるから、キミはお風呂に入ったらどうかな?」
俺は何を言っているんだーーー!!!
この気まずいタイミングでこの変態発言、遂に俺の言語能力も狂ってきたようだ。
「……分かり……ました。」
駄目!そんな顔でお風呂に行かないで!何かヤバいよ空気がヤバい。こんな状況は駄目だ。
「あはは、じゃあ俺、片付け終わったらコンビニで何か買ってくるからアイスでいいかな?」
「……はい。」
逃げたと思うならそう思うがいい。それでもこの雰囲気は駄目なんだ!
コンビニはアパートから徒歩10分ぐらいの所にある。俺は予定どおりアイスを買った帰りだった。
「やぁ、奇遇だね。炎くん。」
後ろから冷めた声が聞こえてきた。
「奇遇ね。嫌な偶然だよ。」
俺も皮肉で返してやった。
「なぁ~。教えてくれよ。お前の住処ってさぁ~。何であんな結界強いんだよ~。」
機械的な音を立てて何かが俺の後頭部に向けられた。
「結界?何の話だ。」
「しらばっくれてんじゃねーぞ!カス!テメーが何かしねーとあんなもの作れるわけねーだろーが、あぁ!」
いきなりキレるなよ。短期は損気だぞ。
だが、本当に知らない。結界が張られているのも知らなかった。
「そんなことどうだっていいだろ。」
ここは、黙っておいた方がいいだろう。コイツが勘違いしてるのならそのままの方がいい。
「それで、どうした?結界を壊せばいいものを律義にも待っててくれているのか?」
「イヤイヤ、イヤイヤイヤ。こちらとしてわよー。出来るだけ派手なことしたくねーわけよ。前も言ったがあの女さえ回収出来れば俺様ハッピーな展開が始まるのよ。分かる?だからよー。頼んでんじゃん。俺様頼んでんの。結界消してくれってさぁー。」
「ヤダって言ったら?」
「シーユー。グッナーイト!」
バァン!
乾いた音が街に鳴り響いた。
俺は前屈みになる形で弾をかわした。ついでに後ろに蹴りを放る。
俺に銃口を向けていた張本人、ライクスもバックして蹴りをかわしていた。
「アララー。やっぱりこうなるー?一発なら街の餌どもも気付かないと思ったんだが。二発目以降は厳しいなぁー。」
「やる気か。」
構えを取って威嚇する。奴は心底楽しそうに
「いいのかい?こんな所で暴れて、俺様はいいんだよ。周りは全てゴミだから。でも、カス男くんはそれでいいのかなぁー。人を守るのが仕事のくせにそれじゃあ。俺様と変わらないじゃない。……それにさぁー。」
銃口を俺に向けながら。
「これは、命令だぜ。最初っから対等だと思うなよ。勘違いしてんじゃねーよ。周りの風景変えられたくなかったら、大人しく女を渡せって言ってんだよ。オーケー?」
「……。」
「俺もそこまで鬼じゃーねー。明日のこの時間に前の工業地帯にこい。もちろん、救援はノーなんで、救援呼んだら部下達を解き放ってパラダイス開く予定なんで、明日また楽しもうぜ!」
ライクスの体が霧に包まれていく、そのまま煙のように奴は消えていった。
「明日か。」
明日、明日の俺次第で彼女の因縁を断ち切れるかもしれない。だから俺のやるべきことは……。
「……。」
何も考えることはない。俺も覚悟は決まっている。
『さて、帰るか。』
彼女を巻き込みはしない。俺が守る。
でも……。
ふと、通路を見るとコンビニ袋が転がっていた。
「はぁー。」
俺は深いため息と共にもう一度コンビニに駆け込んだのだった。
次の日、日課になったコリス様を起こしをして、学校へ登校した。
「コ~リスちゃん。」
早速コリスに抱きついたのはかなだ。
コリスもこの頃、頬が緩んで皆にも笑顔を見せるようになった。噂では、コリス様ファンクラブなるものが設立されてるとか。
流石コリス様ですね。
「優一くん。おはよう。」
貴田は俺の肩に手を置いて挨拶してきた。
「貴田か、おはよう。」
いつものクールスマイル、カッコ良くてかなわないな。それに……。
「優一くん。死ぬなよ。」
こいつの能力に感謝するよ。
「あぁ、今日、決着を付けてくるさ。」
「優一くん応援してるよ。あと、街は任せてね。」
『貴田、ありがとよ。』
心の底から貴田に感謝した。あとでアイス買ってやるか。コンビニのだけど。
放課後、待ち合わせまで2時間となった。
今日の晩ご飯はかなに任せた。2日連続だったけど快く引き受けてくれた。ちなみにポイントは理由を聞かずに二つ返事で了解してもらえたことだ。
俺は一人公園のベンチで座っていた。時間も時間なので子供達の姿も見えない。
「あと数時間なんだよな。」
言葉にすると重たい痛みのようなものを感じた。今まで、よく考えていなかった。
怖い、死ぬのが怖い。
前の闘い、俺は奴に手も足も出なかった。悔しかった。苦しかった。それでも俺がここまで来れたのはコリスという支えがあったからだろう。
彼女を言い訳にして心を支えていた。弱い自分から逃げていた。でも、今日で全ての決着が付く。
言葉だけなら簡単だ。しかし、考えれば考えるほど深みにはまって抜け出せなくなりそうだった。
「少年。」
ビックリして横を見てみると作業服姿の男性が隣に座っていた。
『いつから隣に!』
俺が困惑していると男性は坦々と言った。
「何を考えているか知らないが、今のお前の気持ちでは何も出来ないぞ。」
何か分からないけど。どことなく雰囲気が瑞覗さんと似ている。相手の内側を覗いているような感じが。
「少年。男ならもっと欲深くなってもいいと思うぞ。少年は考えが堅いところがありそうだからな。」
いきなり現れて失礼な人だな。でも、
「……欲深くってどうすればいいんですか。」
自然と自分の口から言葉が漏れていた。
「俺、今女の子を守ろうとしているんです。でも、自分は弱い。最初にソイツと闘った時、俺、ボロ負けしたんです。何も出来ずに。そして思ったんです。ソイツと闘い、負け、女の子も守ることが出来ないんじゃないかって、そんな思いが駆け巡ってるんです。」
闘う前なのに悔しさで涙が出そうだった。言葉にするとこれだけ重い、深く考えているほど重みも強くなる。
歯を食いしばることしか出来ない今の自分にも嫌気がさす。こんなんじゃ本当に……。
「その心は強いさ。だが、踏ん切りを付けられていないんだな少年。少年いいか。覚悟を決めたんならウジウジするな。そして、もっと欲しろ。自分の求めたものを。一つでもいい。二つでもいい。それ以上でもいいさ。但し手に入れろ。必ずな。欲は人を強くするものさ。強い奴は皆、求めているんだよ。何かをね。少年はもう見つけてるじゃないか。あとは手に入れるだけだ。」
男はスッと立ち上がると公園の出口へ向かっていった。
「少年。お前の思いは少年の父によく似ているよ。」
「あなた父さんを知って……。」
最後まで言う前に男は消えてしまった。
立ち上がり時計を見る。予定の時刻も刻一刻と近づいてきた。俺も公園を出て自分の向かうべき場所に向かった。
あの人のお陰で頭もスッキリした気がする。少なくとも、もうウジウジはしなさそうだ。
~第六章~
目の前には、もう二度と見たくない奴トップ10・ザ・俺の第二位、イカレた上級者、ライクスがいる。
「あり~?何だよ。カス、結局持ってこなかったんだ。」
俺は時間ピッタリに到着していた。職業病でね。
「あぁ、俺はずるい男になるって決めたんだ。だから自分の大切なものはお前なんかに触らせたくないんだよね。」
拳を構えた。言葉はもう要らない。
「カスよ~。お前はもうちょっと利口だと思ったのになんで最後までカスなんだよ……。」
右手がゆっくりと持ち上がってゆく、そのまま銃口が俺に向けられ。
「カスはさっさと逝っちまえよ。」
銃声、これが開戦の合図になった。
体を捻ってかわす。ついでに炎を両手両足に纏うのも完了。
早速、噴かして距離を詰めた。飛んでくる弾は必要最低限の動きでかわした。
『あと少し!』
射程圏内まであと少しのところで。
「おせーぞ。カス!」
向こうからこちらに瞬時に移動してきた。
メキッ!
軋んだ音を立てて、奴の拳が俺の腹部を容赦なく抉る。
『今度は見えたぞ!野郎、銃の反動を利用してブースト掛けてやがった。』
だが、銃の反動で移動しているなら方向転換は難しいハズ、銃の軌道を見れば対処は可能だろう。
続けざまに銃の横振り、大きい銃は鈍器並みの威力はある。
『避けられない!』
咄嗟に腕をクロスして、ガードした。だが、勢いを全て殺すことは出来ず、そのまま吹っ飛ばされた。
受け身を取るがライクスの姿がない。
さらに右の横腹に鈍い痛みが!
「……っ!」
今度は受け身を取れず、地を転がった。
立ち上がろうと体に力を込めるとスッと左肩の力が抜けた。
少し遅れて発砲音が耳に届いた。
左肩が熱い。わざわざ肩を見なくても状況が肩の状態をものがたっている。
「カス!今ならまだ間に合うぜ!あの女をさっさと連れてくるなら。楽に逝かしてやるよ。じゃねーと……。」
一拍置いて、心底楽しそうに顔を朱に染めながら奴はいった。
「俺様の銃で風穴のラインを引いてやるよ。大丈夫、点々じゃねー。ラインだ!」
凄いこと言うな。どこまで狂ってるのか。精神科で調べてもらいたいところだ。
パァーン!
着弾点は俺の右足、容赦ないな。
また、声が出なくなった。ピンチの時、俺はしゃべれなくなるらしい。こんな所で知りたくなかった。
倒れることもないグロッキーな俺の後頭部を瞬時に移動したライクスがわざわざ銃の方で殴ってきた。
クラってきたよ。
何も抵抗出来ず、地面に倒れる俺。
倒れるの今月で何度目だ。基本は中嶋のヤローにやられてるから。30回ぐらいか?
でも、これは実戦、倒れれば負け、さらに死ぬ可能性もある。
「……カス……てんのか?……あぁ!」
奴の声も聞こえづらい。滑舌よく喋ってほしいなぁー。
『結局、俺は勝てなかったのか?いろんな人に迷惑かけてこれかよ!』
体が重い。俺は立ち上がる気力もなくなっていた。
圧倒的力の差。
一回、二回と手も足も出ない俺、勝つと心に決めた俺だったが気持ちが足らなかったのだろうか。
身体が冷えてきた。寒いな。
「んじゃ、ゲームスタート!足の先から脳天まで、美しいラインを引くよ。約束する。だから。安心して逝ってくれ!」
唯ならぬ緊張感の中、その声は俺の耳に届いた。
「ユウイチーーー!!」
その子は真っ直ぐ俺の方へ走ってくる。以前対峙したことがあるであろう獣魔人も俺の前にいるのに、ただ俺を助けるために走ってきた。
「なんだよ~。そんなじらさなくてもいいのに、あとちょいで殺しちまうところだったじゃん。」
ライクスは銃口を自分の後ろに向けた。その顔は笑顔が見える。
奴の姿が消えた。
その子、コリスの前まで当たり前のように立ち彼女を左手で抱えようとした瞬間。
俺の炎の右拳がライクスの顔面を捉えた。
突然の攻撃にライクスも反応出来なかったらしい。気持ちいように吹っ飛んでいった。
「優一、その怪我。」
左肩と右足からの出血に身体もボロボロ、見てるだけで痛々しい姿だったろう。
コリスは涙を浮かべながら
「私のためにごめんなさい。」
その言葉と共に、溢れた涙がこぼれ落ちていく。
今まで見たことのない彼女の顔、でも、こんな顔は見たくない。
「優ちゃん!」
少し遅れてかなも到着した。
「ヒドイ怪我、すぐ手当てするから!」
彼女が傷口に手おそえると淡い光が傷口を灯しみるみるうちに傷が癒えていった。
かなの能力は傷を治す能力、前線に余り立つことはないが後方支援の依頼で結構大きい依頼にも行った事のあるC組の優等生。
右足の傷は塞がった。
「次は左肩!」
テキパキと傷を治すさまは流石としか言えない。
「おいおい、そこのねーちゃん。簡単に傷を治されちゃ、困るよ~。」
俺は反射的にかなの前に右手をかざした。
弾は軌道を逸れ彼女の左腕に当たった。
「きゃっ!」
弾の勢いに押され、かなは倒れた。
『ヤロー、迷わず脳天狙いやがったな。』
未だ奴の笑顔は崩れていない。だるそうに立ち銃をこちらに向けているだけだ。
「て、めー!!!」
憤怒の形相の俺をあざ笑うように
「カスちゃん何言ってんの?回復要員は即倒すの当たり前じゃね?せっかく綺麗な肩と脚だったのに元に戻っちまってんじゃん。ふざけんじゃねーよーーーーーーーー!!!」
眉間にシワを寄せ、また突然ブチギレた。
ぎゃあぎゃあ、喚く奴を無視してかなを見る。
「かな!」
「私は平気よ。傷もちゃんと塞いだから。」
痛みの顔は消えない。前線に立つことのない彼女は傷を作ることに慣れてない。余り深追いはさせられない。
「ちっ!」
舌打ちしながら立ち上がり、ライクスを真っ直ぐ捉える。奴はまだ、絶叫中だ、やかましい。
だが、この言葉だけは聞こえた。
「おい!だからその女を渡せよ!そしたら楽になれるんだぞ!そんな物に身体張ってバッカじゃねーの?物の扱い方は物々交換だろ?俺ソイツ貰う、お前ら命貰う。それでいいだろーがよ!」
その言葉を聞き、隣のコリスを見た。
彼女のあの可愛らしい顔は涙と絶望に歪んだ顔を見た瞬間。プツンと俺の何かが切れる音が聞こえた気がした。
「大体、ソイツを匿うなんてどうかしてるぜ!ソイツは不幸を呼ぶんだよ。ソイツに近づけば近づくほど。酷いものを見せてくれる。そんな疫病神は、俺様達が上手く使うって……。」
もう一度、顔面に拳を突き立てた。今度のは簡単にかわされてしまう。
「おーほー。そんな顔出来んじゃん、俺様そんな顔した奴潰すの好きなんだよね。」
俺はこの時どんな顔をしていただろう。今まで作ったことのない顔なのは確かだな。
「殺す。」
ただ自分の思った事を呟いた。こんなにもドス黒い感情は初めてだ。
「ヒャッホーーー!!」
奴の弾幕をかわし、右の拳を握り締めた。もちろん、炎もプラス。
拳が顔面に当たる寸前で奴の体が後ろに逸れた。
『逃がすか!』
足の踏ん張りを利かせ、腕のリーチを伸ばした。
ゴツっ!
子気味よい音と共に奴の体が逆くの字に曲がる。
尽かさず、曲がった腹部めがけて左腕を鞭のように振るい、その体を地に叩きつけた。
まだだ。
湧き上がる感情が止まらない。
次第に右手の炎が黒色に染まっていく。
相手は即座に右手をこちらに向けて発砲する。だがそれも首を曲げるだけでかわす。
右手に黒い炎が溜まっていく、今までで一番強力な力がその右手に集まる。
俺は右手でライクスの右手に拳を振るった。
右手の直撃と共に大気が震えた。さらにライクスの右手も粉々に砕け散り、欠片も炎で燃やされた。
一番驚いているのはライクスだ。口をポカンと開けて間抜けな顔をしている。
俺は右手にさらに力を込めた。炎はみるみる勢いを増し、右腕を黒い炎で染め上げた。
「ま、まてっ!?」
俺の左手が頬を抉る。倒れたライクスの上に乗り激しい拳打を顔面に浴びせた。
ゴツっ!ガツっ!鈍い音が静かな工業地帯に鳴り響く。
「やめてー!!」
俺の左腕を誰かが止めた。俺の眼光がソイツを捉える。
『コリス?』
真っ赤な目で血に染まった俺に脅えながら、それでもその優しい手で俺の腕を押さえてくれた。
黒い炎はその勢いを落として元の色に戻る。さらに俺の両手の炎が消えた。
下のライクスを見る。顔の至る所に火傷と血を流し白目をむいて気絶していた。
『勝った?』
俺は重い足を動かし立ち上がった。
俺は確かに勝負に勝った。だが……。
心にもやを残しながら俺はその場でしばらく立ち尽くしていた。
まだ続きます。




