六月 登場人物
以前、簡単な前書き、登場人物についての説明があると良いのではないでしょうかとご意見を戴きました。
(ありがとうございました。)
「六月」ではなんの前置きも説明もなく、この物語の主人公「小角」が登場するので、序盤では何の事やらわからないことだらけだったと反省しています。
「六月」に先立つ時代の物語の筋に触れる部分もあるので、あまり詳細ではありませんが、簡単に名鑑を造ってみました。
「六月」では名前のみ登場する人物も含まれています。
葛城の民(六月では既に国としては存在しない、民は離散)
小角
「小角」は葛城の民の間で、役公となるものが受け継ぐ伝統的な名。
ここでは「六月」における小角について。
字名は真火
父は葛城の民、八咫。母は賀茂県主の娘、瑞希。
葛城王(橘諸兄)、宮子とは乳兄弟。
父母を亡くし、一族が離散した後は一人葛城山に棲む。
赤子の道鏡を拾い育ての親となる。
葛城王の庇護のもと、皇家と深く交流する。
吉備由利の名で真備とともに阿倍内親王を支えた。
前鬼、後鬼
葛城の土蜘蛛。国つ神の力が結ぼれた地霊。
国つ神が滅びるまで役公の守り手として仕えている。後鬼は喋れない。
母刀自
金剛山に住む白い狼。
天狼
母刀自の連れていた仔狼。
仏教界に身を置く人々
道昭
僧侶。西漢直の船恵尺の子。
鎌足の長子定恵(俗名は真人)とともに唐に亘り、玄奘三蔵に学ぶ。
斉明七年(661年)の帰朝船で、三韓との戦乱の最中にあった唐を出る。
白村江への出兵準備中の日本へ経典を持ち帰った。
六月では既に故人
義淵
僧侶。父は百済系渡来氏族市往氏、母は物部阿刀氏。
檜前で生まれ、葛城皇子に引き取られる。
雷丘の斉明帝の後岡本宮で育ち、鸕野讚良と草壁皇子に親しむ。
元興寺に入り唯識・法相を修め、龍蓋寺(岡寺)を創建した。六月では既に故人
玄昉
僧侶。道昭、義淵の弟子。物部阿刀氏の生まれ。
遣唐留学僧となり、帰朝後僧正となる。六月では既に故人
行基
僧侶。道昭、義淵の弟子。西漢直の河内高志氏の生まれ。
弾圧されながら民間布教を続け、後、大仏造立の勧進を受ける。
六月では既に故人
良弁
僧侶。義淵の弟子。東大寺の前身寺院金鐘寺を開き、東大寺初代別当となる。
行表
俗名は百戸。葛城高宮で生まれ、檜前で育ち、僧侶となる。最澄の師。
道鏡
俗名は狼児
物部弓削連の血筋。
生まれてすぐに葛城山に捨てられたが、金剛山の母刀自に養われる。
真火に拾われ、晩年の義淵のもとで成長し、僧侶となる。
佐伯直真魚
平城京の大学寮の明教科の学生だが僧侶を志す。
最澄
俗名は広野。西漢直の三津首の家柄に生まれ、僧侶となる。行表の弟子。
皇統の血を受け継ぐ人々
氷高皇女(元正帝)
草壁皇子と阿閇皇女(元明帝)の第一皇女。
六月では既に故人
珂瑠皇子(文武帝)
草壁皇子と阿閇皇女(元明帝)の第一皇子。
六月では既に故人
首皇子(聖武帝)
父は珂瑠皇子、母は藤原宮子。
六月では既に故人
阿倍内親王(孝謙・称徳帝)
父は首皇子、母は藤原安宿媛。
六月では既に故人
大炊王(淡路廃帝、淳仁の諮号は明治時代。)
舎人皇子の子(天武帝の孫)。
藤原仲麻呂の外戚。仲麻呂の推挙で帝位につく。
(恵美押勝の乱の後、帝位を廃されたため謚は無かった。)
六月では既に故人
美努王
敏達帝の血を引く栗隈王の子。
壬申の乱では父とともに筑紫で近江朝廷の要請を拒んだ。
天武、持統朝で官人として生きる。六月では既に故人
葛城王(橘諸兄)
父は美努王、母は県犬養連三千代。
六月では既に故人
志貴皇子
葛城皇子(天智帝)の第七皇子。母は越道君娘女。
政争を避け、歌人として生きた。
白壁王、湯原王、海上女王の父。
六月では既に故人
舎人皇子
大海人皇子(天武帝)の子。
日本書紀の編纂者。三原王の父。
弟の新田部親王ともに氷高皇女から首皇子の後見を任された。六月では既に故人
長屋王
大海人皇子(天武帝)の三世王。父は高市皇子、母は御名部皇女(元明の同母姉)。
夫人は元正帝の妹 吉備内親王、藤原不比等の娘 藤原長娥子など。
六月では既に故人
海上女王
志貴皇子の子。首皇子の夫人となるが長屋王の変の後、宮を下がる。
壱志濃王の母。
六月では既に故人
湯原王
志貴皇子の子。
海上女王は異母姉妹。
政治から距離を置いて静かに生きる。光仁天皇即位前に薨去
六月では既に故人
壱志濃王
母は海上女王。湯原王を父として山崎で育つ。幼少期から山部王と親しむ。
白壁王(光仁帝)
志貴皇子の子。母は紀橡姫。
山部王(桓武帝)
父は白壁王、母は大和新笠。大枝で育つ。
早良王
父は白壁王、母は大和新笠。山部王の弟。
出家して良弁に師事するが、父の即位後に還俗。
井上内親王
父は首皇子、母は県犬養連広刀自。
幼少時に伊勢斎王となり、弟の安積親王の病死で退下する。
酒人内親王と他戸皇子の母。
酒人内親王
父は白壁王、母は井上内親王。
他戸皇子
父は白壁王、母は井上内親王。
朝原内親王
父は山部王、母は酒人内親王。
安殿親王
父は山部王、母は皇后乙牟漏。
神野親王
父は山部王、母は皇后乙牟漏。
伊予親王
父は山部王、母は南家吉子。
有智子内親王
父は神野親王、母は交野女王(三原王の娘)。
藤原氏の人々
藤原不比等
藤原(中臣)鎌足の二男。
山科の田辺氏に養育された。兄は遣唐留学僧、定恵。
六月では既に故人
藤原宮子(宮子大夫人)
父は藤原不比等、母は賀茂娘女。
珂瑠皇子の妃。首皇子の母。
六月では既に故人
藤原安宿媛 (光明子)
父は藤原不比等、母は県犬養連三千代。
首皇子の夫人、後、皇后。阿倍内親王の母。
六月では既に故人
恵美押勝(藤原仲麻呂)
藤原武智麻呂の次男。
六月では既に故人
藤原宇比良古(袁比良売)
父は藤原房前。藤原仲麻呂の夫人。
聖武、孝謙・称徳に命婦として仕える。後、大炊王の尚侍。
六月では既に故人
藤原良嗣 (宿奈麻呂)
藤原宇合の次男。妻は安倍古美奈
六月では既に故人
藤原百川 (雄田麻呂)
藤原宇合の八男
六月では既に故人
藤原緒嗣
藤原百川の長男
藤原乙牟漏
父は藤原良嗣、母は安倍古美奈(桓武帝尚侍)
山部の妃、後、皇后。安殿親王、神野親王の母。
藤原吉子
父は藤原是公。南家武智麻呂の曾孫
山部王の妃、伊予親王の母。
藤原種継
父は藤原清成。式家宇合の孫
母は秦朝元の娘
藤原薬子
父は藤原種継、母は不明。夫は藤原縄主。
藤原仲成
父は藤原種継、母は粟田道麻呂の娘
皇家を取り巻く人々
吉備真備
明教博士(儒学者)
遣唐留学生から官人となり、葛城王の抜擢で阿倍内親王の学士を勤め官位を進めた。
阿倍内親王の重祚後、造東大寺司を経て右大臣となる。
真火と親子のように親しむ。
飯高笠女
伊勢国の采女。文武、元明、元正に仕えた。
六月では既に故人
飯高諸高
笠女の姪。飯高氏の宗家に生まれる。
笠女の女童子から命婦となり、元正、聖武、孝謙・称徳と四代の帝に仕えた。
秦朝元
最盛期の唐で生まれ遣唐使の帰朝船で来日。
医術と語学で元正帝に仕えた。真火の医術の師。
六月では既に故人
県犬養連三千代
父は県犬養連東人、母は不明。
美努王と婚姻して葛城王と佐為王、牟漏女王を生む。
後、不比等と婚姻して安宿媛を生む。六月では既に故人
県犬養連広刀自
首皇子の夫人
井上内親王、不破内親王、安積親王の母。六月では既に故人
道嶋嶋足
牡鹿柵で生まれ、衛士として平城京に上り、授刀衛少将となる。
道嶋御盾
牡鹿柵の大領。父は道嶋嶋足
道嶋三山
道嶋嶋足の縁者。
大野東人、田辺史難波の指揮下で従軍。
呰麻呂の帰順を受けて、伊治城を1ヶ月で完成させた。
六月では既に故人
道嶋大盾
父は道嶋三山。
道嶋嶋足の縁で平城京の衛士となる。
後、陸奥の外官として伊治城の大領に着任。
坂上苅田麻呂
東漢直の坂上氏の宗家に生まれる。
孝謙・称徳、光仁、桓武に仕えた。
坂上田村麻呂
坂上苅田麻呂の次男、母は不明。外見は巨躯、黄褐色の髪と白い肌、蒼眼。
幼少期には交野の百済王氏のもとで育つ。
高子
美濃の采女
三善清継(百済系三善氏で文章司の外記)の養女として田村麻呂の夫人となる。
百済王明信
交野の百済王理伯の子。俊哲の姉。
一介の孫王の頃の山部王と想い合うが、氏族の意向で藤原継縄の夫人となる。
百済王俊哲
交野の百済王理伯の子。明信の弟。
幼少期から山部王と親しむ。
賀茂人麻呂
賀茂県主の家柄の生まれ。
賀茂小黒麻呂(賀茂娘女の兄)の長子 賀茂諸雄の子。
毛野の民
悪路王
「悪路王」は神守と呼ばれる毛野の国つ神の守り手が代々引き継ぐ名。
黒玉により、隠世と現し世を往き来する。
ここでは「六月」における悪路王について。
諱は玻璃
細い骨格、白い肌、白髪、黄褐色の瞳という特異な外見を持つ。
高丸
土蜘蛛。
他の土蜘蛛と比較しても一際巨躯であり、言動も思慮深く、視野が広い。
玻璃と阿弖流為の良き相談役。
赤頭
飯綱(オコジョ)の姿をした毛野の地霊。
阿弖流為
大墓の長の息子。後、伊治柵の長。
悪路王と親しく、呰麻呂の理解者。
弓弦葉
阿弖流為の妻。子は無い。
母禮
盤具の長の息子。兄を亡くし、長となる。石盾の養父。阿弖流為の盟友。
石盾
母禮の兄の息子。母禮の養子。
田鶴
母禮の兄の妻。石盾の母。後に母禮の妻となる。
七魚
呰麻呂の末子。
宇漢迷公宇屈波宇
志波の長。
聖武帝代に朝貢して姓を授かる。
一度は倭人との融和を目指したが、朝廷の陸奥政策に失望する。
阿奴志己
志波の長。宇屈波宇の子。
父の決断を誇りとしながらも、責任も感じている。
伊治公呰麻呂
伊治の長。聖武帝代に自ら伊治を割譲し、倭人の北進を止めようとした。
伊佐西古
早い時代に俘囚となった吉弥候の一族に生まれる。
俘囚として生きることを良しとせず、呰麻呂の挙兵に荷担する。
諸絞
伊佐西古の縁者。
八十島
呰麻呂の縁者。
乙代
呰麻呂の縁者。