剣士 A-桜
彼女が持っている得物は、日本刀のようだがそれにしては短かった。しかし、現状問題なのは「斬撃が得意な味方がいない」状況だったので武器がどんな形状していようととにかく斬れればいいのだ。
「すみません、僕は片手槌なんで、そっちお願いします!」
「わかった!」
救援に来てくれただけでなく、指示を受け入れてくれたのは凄くありがたい。マコトルには、今は斬撃系のアーツを使えないのだから。
逃げるのではなく倒すとなると戦い方は違ってくる。
そもそも逃げていたのは、攻撃中に麻痺になって動けなくなったり、戦闘の音等の要素が他のモンスターを引き寄せて囲まれたくなかったからである。
そして、救援に来てくれた人間を置いて逃走するほど、マコトルは薄情な人間ではない。
「『ストンプ』!」
振り下ろした鉄槌はストーカーハウンドの頭に衝突する。倒せはしなかったものの、今回は頭上に星が踊った。
「動けないなら!『ハンマースイング』」
片手槌アーツ『ハンマースイング』:回転しながら横薙ぎの打撃を4回与える。追加効果はない。
一定時間経たないと同じスキルは使えない。この冷却時間は数秒だが、その間に横振りと振り上げを繰り返し、少しでもダメージを文字通り叩き込む。
マコトルは、ストーカーハウンドに反撃させるタイミングを"運良く"与えなかった。
攻撃パターンが2つくらいしかないために、読むのが容易と言えば確かにそうなのだが、まだ狩り慣れないモンスターであるし、『ストンプ』の追加効果も失敗する時は、失敗する。
救援に来てくれた女性プレイヤーの邪魔にならないように、マコトルは無我夢中でハンマーを振るい続けた。
ストーカーハウンドのHPバーは赤くなり、もう数ドットもない。
「たぁぁぁ!」
声を張り上げ鉄槌を勢いよく振り下ろす。
当たったと同時に、ストーカーハウンドはポリゴンを撒き散らし砕ける。
「ハァ…ハァ…」
荒い息を整えながら、装備を片手剣に入れ替える。
まだ戦いが終わったわけではない。名も知らない女性が戦っているのだ。
「そういえば…あっちは…?」
こちらはこちらで集中していたために、メタボスライムと女性プレイヤーのことは頭から完全に抜けていた。
片手剣を構え、メタボスライムの方を向く。
「アーツ!斬舞四連!」
体全体が淡い黄色のエフェクトに包まれ黒髪の少女は、踊る。メタボスライムの攻撃をひらりと避けては斬りつけ避けては斬りつけを4回。
その姿は、どこか神秘的で
「綺麗…」
マコトルは思わず見とれてしまった。
アーツの最後の一撃で、メタボスライムは弾けた。
少女は、息を整え、武器を鞘にしまうとこちらを笑みをかけてくる。
「大丈夫か?」
「は、はい」
思わず声が上ずるマコトルに手を差し伸べる。
「君、名前は?」
「マコトルです。」
名前を言ってから手を借り立ち上がる。
「そうか、私の名前はA-桜。ギルドメンバーからさくらと呼ばれている。よろしく」
微笑みは、美しくそして凛々しかった。
話を投稿すると、PVが急激に増えるのはわかるのですが、ユニークまで急激に増える理由がわからない。




