序章
―――2051年8月1日、VRMMORPGの世界で2作目のゲームが正式リリースされた―――
世界は歓喜した。
人の意識をデジタルにおき、仮想現実を実現したゲームハード:トレースコア
それが発売されたのが2046年、その時も世界は歓喜したが欠点があった。
容量不足。人の意識を回収しデジタルのみに作用させるのに手一杯であり、仮想空間の描写に回せなかったからである。
3年後、回収を重ねトレースコア2が発売された。欠点を克服したこのハードはネット回線を通じて大規模の人数を参加できるネットゲームを可能とした。
トレースコア2の発売から半年後世界初のVRMMORPGが正式リリースした。
しかし、これは動きの確認等やプレイヤーの感想を得て、次の製品を作るためのテストケースとして作られており、内容が少なく、1年で終了した。
あらかじめテストケースであり無料とされていたので誰も文句は言わなかった。
そしてついに、βを経てVRMMORPGの世界で2作目のゲームが正式リリースされたのだ。
Skill Link Online通称SLOと発表直後から言われているこのゲームは、初回生産を50万本として1本5000円で売られた。
その代わり使用料無し課金アイテム類はアップデートをしても絶対に投入しないと明言していたので初回分は予約でほぼ売り切れた。
ゲームを手に入れたものは、ネットワークサーバが動くと同時にのめりこんだ。
正式サービス開始から8時間後、プレイヤー達はログアウトできないことに気づく。
そして、はじまりの町の広場に戻されていた。
「まさか、デス・ゲームがはじまるんじゃ……。」
その声がトリガーとなり、空に大きなウィンドウができた。中には初老を向かえた男性が映っている。
「その通り!……かな」
あまりにもデカい音量に、幾人かは耳を塞ぐ。
「SLOはこれより、ログアウト不可能となる。ゲームクリアとなる100階層最深部に到達できなければ、現実世界への帰還はできない!」
「君達の肉体については心配することがない。すでにあらゆるメディアを通して状況は報告されており、順次介護施設に移動する大勢が整っている。そういえば自己紹介が遅れたな」
男はそういうと、あーあーとか発声して声を整えていた。
「私の名は、河内 一郎」
その名は、トレースコアの基礎理論を作り上げ、そしてこのSkill Link Onlineの開発ディレクターである。彼がいなければ、VRゲームは真に完成しなかったと言われている。
「もっとも現実世界の私は既に死んでいるがね」
その言葉に一瞬どよめきが大きくなる。
「8時間前、つまり正式サービス開始とされる時間に、私は思考スキャンを行って、ネットワーク内にばら撒いた後、電気ショックで心臓を停止させた。」
河内 一郎は腕を組み、言葉を続けた。
「死んだという事実を告げたことからわかるように、私の目的は大規模テロでなければ金でもない。またただ単にこの世界いるために君達を巻き込んだわけではない。見たいのだよ。この世界で君達全員がどのような物語を描くのかを、ただそれだけだ。その全てを同時に把握するために私は思考をデジタルに移した。」
ディスプレイ内の男が死ぬ前に撮影された映像なのか。デジタルに移した思考と言うものが作り出したCGなのかはわからない。
ただ亡霊は恍惚の表情を浮かべ、このように締めくくる。
「以上で、Skill Link Onlineの真のチュートリアルを終える。この8時間で上がったLVやアイテム等は一度リセットさせてもらう。またチュートリアルイベントの類も消去する。β版やこの8時間で培った知識で100層を無事生還して欲しい。」
―――デス・ゲームが始まった―――
初投稿です。大目に見てください(汗