怪談話の結末…
ある蒸し暑い日の夜、五人の若者が百物語をしようと集まった。
その五人をA,B,C,D,Eとする。
その五人は、連日の猛暑にほとほと参っていた。
そしてその内の一人が、今回の百物語を思いついた訳である。
どうせ金もなく、それにこの暑さを何とか出来るなら…と軽い気持ちで快諾した。
それが、恐怖の始まりとも知らず…。
そして夜になり、怪談が始まった。
相も変わらず、その日は熱帯夜であった。
そしてA,B,C,D,が順番に話し、次はEの番であった。しかし
A、「次はEの番だな、じゃぁ怖いヤツ頼むぞ」
E、「いや…ゴメン。俺、怖い話全く知らないんだ」
C、「え~!?でも、何か一つくらいは知ってるだろ?」
E、「いや、本当に知らないんだよ。お前らだけで頼むよ、ホント」
A、「ったく、しょ~がねーな…。」
E、「悪いな…」
とEをそのままにして、怪談は進んだ。
しかし話が進むと、さすがに話のオチが分かったり、洒落で終わったりしてきた。
しかし、最初の頃より部屋の空気が重くなり、時たまラップ音らしきものまで聞こえてきたりした。
洒落で終わらせたりしたのは、その重くなった空気を明るくしようとして話したのである。
そんなこんなで99話までいき、Eを除く全員の話のネタが尽きてしまった。
そこで、未だ一話も話していないEにAが何か話させようとしつこく催促したのである。
D、「なぁE、頼むよ。俺達もう全部話終えて、もうネタ無いんだよ」
E、「いや、でも俺本当に知らないから…」
A、「いやもうこの際なんでもいいよ、なっ皆?」
他の皆は同意するように頷いた。そして…
E、「……本当に、良いんだな?」
D、「おっ!?なんだあったのかよ。お前、勿体ぶるなよ。で、どんな話なんだ?」
E、「……実は、この部屋入ってから俺の足…こんな……なんだ…。」
Eは泣きそうになりながら、震えながら自分の足を指差した。そこには…、
そこには、Eが逃げられないように、Eの足首をガッチリと掴んでいる腕が生えていたのである…。
A,B,C,D、「「「「う、うわあああああああああああああああああああああ!!!!!?」」」」
それを見た四人は、脇目も振らず一目散に逃げるように、その部屋から出ていった。
E、「待ってくれよーーー!!置いてかないでくれよーーーー!!!」
Eのそんな声を後ろから聞いたが、構わずその部屋から四人は逃げた。
そして暫らくして皆落ち着いた時に、「俺達何やってんだ!?」と思い部屋に戻っていった。
そこで見たものは余程恐ろしいものを見たのか、正気ではなくなったEがいたのである。
そしてそんな事があった日から暫らくして、その四人を含むクラスメイトの何人かが、精神病院に入院しているEの見舞いに行った。
A、「じゃあ俺たちはこれで…。」
B、「またお見舞い来るからな…。」
C、「それまで元気にしてろよ~…。」
D、「それじゃあな…」
しかし他のクラスメイトの言葉を余所に、その四人の声を聞いたEは突然目をむき
E、「なぁぁぁぁぁぁぁんで逃げたああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
と、地獄の底から叫ぶように、そう叫んだのである。
今まで『正気ではなかった』彼の目が、その一瞬だけ、まぎれもなく『正気』の目だったのである。
四人はそれを聞き、思わず逃げるようにその病室を後にしたのである…。
Eは今では自宅療養をしているが、入院していた時とあまり変わらない…。
だが、Eが後にも先にも『正気』の目になったのは、病室で叫んだ「あの時」だけであった。
いったい彼は何を見て、そうなってしまったのかだろうか。それはもはや誰にも分からない…。
皆さんも安易な思いでの百物語等は、決してしてはなりませんよ?
この世のものではない「何か」を、呼び出してしまうかもしれませんからねぇ…。。
本当に、皆さんもご用心、ご用心…。