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GENIE  作者: ロッカ
4/6

意思疎通は明確に

ゲンは伸び上がってジャンプすると思い切りスパイクをかました。

叩かれたボールはビーチバレーの定義を根本から覆す様な「ギュルルルッ!」といううねりを上げ、対峙していたジットの真横に落ちた。

同時に砂煙がドウッと舞い上がる。


「・・・・ゲンどうした?」

「やけに力入ってね?」

「つーか今俺殺されかけなかった?」

「アレじゃねぇの?・・・・・・・ジニー。」


ゲンは汗の浮かんだ口元をグイと拭ってから、連中が何やらヒソヒソ話した後”ああ~~!”と声を上げるのを胡乱気に見た。


何やってんだアイツら。何かムカツクから次はサーブで確実に殺してやろう。


そして練習場から少し離れた会議所をチラッと窺った。

そこではジニー達マスコットガールと職長達、実行委員会のメンバーが集まって大会を盛り上げるための話し合いが行われている。


(アカギとまたやり合ってないだろうな、アイツは女だろうが容赦ねぇからな・・・心配だ。)


ゲンの脳裏に1週間前に起きたちょっとした騒動が浮かぶ。

ジニーが挑戦的に「唇へのキスはお断り」宣言をしての翌日、早速マスコットガール達 (面倒なので今後MGと表記します)顔合わせが行われた。

ジニーが職長のエドと第1ドックチームの選手代表 (無理矢理なった)としてついてきたゲンと共にガヤガヤと人が多い部屋に入ると。


「おう、第1のインテリじゃねえか。どうせ今年も負けるんだ、今から降参宣言でもしとくか?」


いきなり野太い声で声をかけてくるモノがいた。

その不愉快なセリフにエドの顔が強張る。青筋も浮かぶ。


「何だ来てたのか第2のくそったれ。去年まぐれで勝ったのをいまだに自慢してるのか?」


エドは振り向き、せせら笑いながら目の前の男に言い返した。


「ア?何だとコラ」

「何だコラやんのかコラ」




「誰?」

「第2ドック職長のアカギ・グレンフェルノ。」

「仲悪いのね。」

「まぁ・・・な。悪いっていうか喧嘩友達とかライバルって感じだ。今は大会のせいでピリピリしてんだろ。ほっとけ。」


いつもの事だと今は互いに襟を掴んで威嚇し合う男2人を見やる。

が、いつもは混ざらないゲンがこの後顔色を変える一言がアカギから放たれる事になる。

アカギはエドの手をぞんざいに外すと、ゲンの傍らに立つジニーをジロジロと上から下まで眺めた。


「この女がお前らのMGか?・・・ふうん、上玉じゃねえか。どっから引っ掛けてきた。娼婦街か?幾ら積ん」


アカギは言葉の途中で飛んできた拳を顔に当たる寸前で受け止めた。

ギリッ・・・

互いに力を入れ、押しまくる。


「撤回しろ。」


ザワザワとした屋内でゲンの押し殺した声がアカギを威嚇する。


「撤回?」

「そうだ。ジニーに謝れアカギ。」


アカギはゲンの拳を流す様に外すとジニーを見下ろした。大の男でもビビって縮み上がる鋭い眼光がジニーに容赦なく刺さった。

だがジニーは臆するどころかマジマジと目の前の男を観察する。

海で働く多くの男達と同じく体は逞しく肌は赤銅色に焼け、真っ赤な髪の毛は逆立っている。薄氷の様な青い目が印象的だ。


「・・・娼婦だなんて一言も言ってないがな。なぁ、お譲ちゃん。」

「言ってるのも同然だけどね、オ・ジ・さん。」


ピクッ

アカギの口が引き攣った。

勿論ジニーはアカギに向けて言ったのだが・・・・その鋭すぎる言葉の剣はゲンの胸にドコッ!と刺さり、エドの胸を抉った後、周りにいた30を過ぎた男達をも薙ぎ払った。


”お、俺の事じゃない・・・アレはアカギに言ってんだ・・・・”

”俺はオジさんじゃない!俺はまだお兄さんだ!お兄さん!”

”傷ついてなんかいねぇぞ!だって俺オジさんじゃないもん!オジさんじゃないから傷つかない!”


そう思った時点で立派なオジさんなのだが。

様々な思いが渦巻く中、アカギとジニーの対決は続いた。


アカギはまさか言い返されるとは思わなかったようで目を少し見開いた。


「・・・結構気が強そうだな。だが女はしおらしく引っ込んでろ。目障りだ。」

「うわ、どこの古代人?こんな事言う人今どきいるんだぁ~?オ・ド・ロ・キ。」

「このアマ・・・」


わざとらしくまつ毛をしばたかせればアカギが目を血走らせてジニーを睨んだ。


「アカギ、俺が相手してやるよ。」


ジニーを隠す様に背中に廻すとゲンがアカギと対峙した。


「退けゲン、そのクソ生意気な女の尻、腫れ上がるまでぶっ叩いてやる。」

「まぁ~!聞いた?そんな事でしか黙らせられないなんて~語彙力がないのねきっと。カワイソ~」


ジニーがゲンの背中から顔を出してアカギを煽った。


「~~~ッ!テメエッ!」


アカギが顔を真っ赤にさせてジニーを捕まえようと腕を伸ばした。

サッとジニーがゲンの背に隠れ、空振りする。


「ジニーもうやめろ。アカギお前もだ。」


エドが呆れたように言った直後、


「しょくちょ~もうすぐ抽選が始まりますよぉ~・・・おろ?エドさんとゲンさんじゃないっスかぁ~! 久し振りっスねぇ~。」


妙に間延びした声がしたと思ったら、黒い髪を寝癖の様にピンピンとあちこち撥ねた若い男がアカギの後ろからひょっこり顔を出した。


「フレイビー・・・・・」

「今年も負けませんよぉ~!あ、ちなみに俺は出ませんけどね!ゲンさんのスパイクくらったら即死する自信あるっスから!」

「フレイビー。」

「おおお!だぁれっスか!その美人!もももしかして第一のMGですかぁ!マジっスか!・・・くぅぅ~!カァワイイ!で、でもウチも負けませんよぉ!今年はタマさんって、」

「フレイビー!!」

「何スかしょくちょ~」

「・・・黙れ。」

「へぇ~い。」


アカギはため息をつくとエドとゲンに目を移して


「大会が楽しみだぜ。今年も吐くほど砂を喰わせてやる。・・・そして女、ツラぁ覚えたぜ。」


次にジニーを睨んで向こうに行ってしまった。


「言ってろ。」

「・・・・。」


エドが吐き捨てるように言うとゲンも無言でアカギの背中を睨んだ。


「何なのアイツ。信じられない。」


ジニーが呆れて言うのを


「ジニー、悪かったな。」

「ゲンが謝る事ないわ。向こうから絡んできたんだし。」


嫌な想いをさせたとゲンが眉尻を下げて謝った。


「アカギは口は悪いが根に持つタイプじゃねぇ・・・その・・・気にしないでくれ。」

「さっきまであなた達がやり合ってたのに・・・。」


苦笑するジニーに大男2人が気まり悪げに俯いた。


「その・・・アカギは口は悪いがそんなに嫌な奴じゃねえんだ・・・。他人には厳しいが自分にはもっと厳しい奴でな。男も女も容赦しねぇ、この大会にも熱を持っててな・・・」

「打ち解けてみると悪い奴じゃない・・・要は人見知りなんだよ。いい年して縄張り意識が強いんだ。」


ジニーは堪え切れず吹き出した。


「わかったわかった。もう怒ってないわよ。」


おかしそうに言うと2人の手を取って部屋の奥へと歩き出した。


「でも、負けないけどね。」

「何がだ?」

「んー?私に手を出しても無駄だって事。」

「ゲンが黙ってないって事か?」

「あははは・・・そうだったら嬉しいけど」


ジニーは言葉を切るとゲンを上目遣いで見る。慌てたように咳払いをするゲン。

それに悪戯っぽく笑ってから


「どんな男だろうと自分で対処できるって事よ。」

「ヘェ・・・護身術でも習ってるのか?」

「フフフ・・・エドにも負けないわよ。」

「ゲンにもか?」

「ゲンは・・・」


そこでジニーは金色の目で強くゲンを見詰めた。

息を飲んでジニーに魅入るゲン。吸い寄せられるように上体が傾く。


「ゲンは特別よ。お”願い”されたら嫌とは言えないかも。」


微妙に区切って言うジニーにゲンはハッとした。


そうだ。自分はジニーと契約した人間、ただそれだけに過ぎない。俺は何勘違いしてんだ。それに・・・何のつもりなんだジニー。


ゲンは黙ってジニーから腕を外すと一人で部屋の中央へと向かった。


「何だアイツ。」

「・・・・・・。」


エドがワケわからんと言うように呟く傍らジニーは唇を噛んで目を伏せた。


ジニーは持ち前の人懐っこさでたちまち他のMG達と仲良くなった。互いが初対面なのでぎこちなかった彼女らも、陽気なジニーの屈託ないお喋りに引き摺られてか今では旧知の様に打ち解けあった。

華やかな笑い声と女性特有の高い声はむさ苦しい男達の中で一種独特の雰囲気を放った。

そしてその傍らでは。


「なんかキラキラしてる。」

「いいにおい」

「おいしそうだ。」

「あの中に混ざりたい。」

「無理。」

「お前は無理。」

「空間が割れる。」


互いをけん制し合って指を咥えて見る事しかできない男達の空しい会話がされた。

こうして強烈な初顔合わせが終わった。





(あれから毎日のようにアカギとやり合っていると聞いたが・・・)


ゲンは面白そうにエドが報告にくるのを煩わしさ半分、情報欲しさ半分で聞いていた。


「ジニーはすごいぜ。MG達を皆味方につけ、実行委員会を魅了すると今までドックのやり方でやってたあの面倒で細かいしきたりなんかを一掃しやがった。お陰で今は風通しが良くなって互いが良い雰囲気で上等な意見が飛び交ってよ、活気があっていい。だが面子を潰された感じのアカギはカンカンだ。」

「そうか・・・・」


ゲンが心配そうに眉根を寄せ煙草の煙を吐き出す。


「心配するなよゲン。ジニーなら大丈夫だって。」

「わかってるよ。だがアカギは口が悪すぎる。いつもカッとなってとんでもねぇ事を口走るからよ。」


イライラした様に煙草を灰皿に捨てるとまた新しい煙草に火を付けた。


「・・・・お前がこんなに気を使うなんてな。しかも女に。アリシアにさえした事ねぇのによ。」


エドは少し白けたような複雑な表情を浮かべてゲンを見た。


「アリシアなら大丈夫だろ。アカギとだって普通に会話してるし。」


キョトンとしてゲンが返す。何言ってんだお前とでも言いたげに。


「アリシアだって女だぜ。・・・・・ゲン、アイツ旦那と上手くいってないみたいなんだ。」


エドが顔を顰めて手に取った煙草を、火を付けるでもなくクルクルと手でもてあそんだ。


「マジかよ・・・あんなに熱々だったのにか?」


驚いたゲンが身を乗り出した。


「確かな事は言えないんだが・・・・誰にも言うなよ。」

「言わねぇよ。・・・・そう言われると確かに口数が減った様な・・・・。」

「この件は俺が調べっから。アリシアになんか相談されたら乗ってやってくれ。」

「ああ、わかった。」






(エド・・・アイツ今でもアリシアが好きなんだな)


ゲンは帰る道すがらエドに聞いた話を考え、子供の頃からアリシアの事が好きだったエドの暗い表情を思い出していた。

自宅に帰ると明かりが点いていた。

ゲンは思いもかけない事に喜びで胸が満たされる。たちまちアリシアとエドの事が頭から消えた。

初顔合わせが終わった翌日からジニーは本部の方で何やら忙しくゲンもゲンでリーダーとして選手を扱く事に全力を尽くしていたのでこの1週間2人は顔を合わせていなかった。

帰ると真っ暗な部屋にゲンは何度ため息をついたかわからない。

だが、今日は違った。

喜び勇んでドアを開けると期待通りジニーがそこにいた。

ゲンが帰ったのにも気がつかない様で鼻歌を歌いながらキッチンで何かの作業をしている。

ゲンは抱きつきたい気持ちを理性で何とか押し込めるとジニーを驚かせない様にドアをコンコンと叩いて帰宅を教えた。


「ゲン!」


満面の笑みでゲンを迎えるジニー。

ゲンの胸は暖かさで一杯になる。


「お帰り~!お腹すいた?もうすぐご飯だから・・・って言うより食べてきた?」

「いや。旨そうな匂いだな。」

「餃子だよ!外はカリッ、中身は肉汁ジューシー!まるで私みたいよ!」

「バカ言ってねぇで早く喰わせろ。」

「はーい。」




「本部はどんな具合だ?毎日アカギと角突き合わせてるって?」


口に二個も三個も放り投げながらゲンがジニー聞く。

ゲンの旺盛な食欲にジニーは呆れながら答えた。


「ゲン、もう少しゆっくり食べたら。まあね、私が何か言う度に邪魔するから。あの人はオジさんじゃないわ、小学生よ。」

「ブフッ!ハハハ!」

「もう~汚いなぁ~」

「お前が笑わすからだろ!ハハハハ」


久し振りに顔を合わせての夕食は賑やかに過ぎて行った。




夕食後のビールをちびりちびり飲む傍ら、ゲンはこの前からずっと心に引っ掛かっていた事を遂に・・・・ジニーに訪ねた。


「なあ、ジニー。」

「なあに?」

「・・・・俺の願いを全部叶えたらその後どうするんだ?」

「・・・・・・・。」


誰かの手がサッとぬぐい去った様にジニーの目から輝きが消えた。

それを竦む様に見据える自分がいる。


「・・・・教えろよ。」


キキタクナイ。


スッとジニーは視線を外すとゲンの肩口をユラユラと彷徨った。


「・・・・・私に関わった人達全員の記憶が消えるの。ランプは自動的に私を必要とする場所へと移動するわ。」


視線は揺れながらもジニーは落ち着いた口調でゲンに正直に伝えた。





「・・・・・そうか。」


しばらく黙っていたゲンは短く言うと立ち上がる。


「ゲン」

「風呂、入るわ。」





(・・・わかってたはずだろ。こうなる事は。アイツは一時的なモノだって・・・・消えてくれって何度も思ったじゃねぇか・・・・望んだ平穏が戻ってくるんだ・・・何を・・・何を今更・・・・何 俺は震えてるんだよ。)


熱いシャワーを浴びながらゲンは細かに震える自身の両手を見詰めた。

ため息をつくといきなりタイル張りの壁に頭突きをくらわせる。

鈍い音が風呂場に響く。

痛みは感じなかった。


ジニー・・・・





ジニーもゲンも普段と何ら変わらず、一緒に夕飯を食べたり、からかったりからかわれたりして日々を過ごした。

だが以前とは違う距離感が其処にあるのを2人は感じている。確かに。






夏の強烈な日差しがギラギラと、辺りを焼き尽かさんばかりの晴天、皆が待ちに待った大会当日の日を迎えた。

毎年行われる大会は年を追うごとに規模が大きくなり、今では地元の新聞紙に載るほどのイベントと化している。


「もうすぐ開会式が始まる・・・・行くぞ野郎共!」

「よおっしゃああ!!」


雄叫びを上げる男達を中心に砂浜には大小のテントやカラフルなパラソルが立ち並び、社員達の家族や知り合いがワイワイと楽しげに過ごしている。その人出を狙って商人達が屋台を出し客を呼びこむ声が賑やかに聞こえた。

そろそろ始まると言うのでみな興奮気味だ。


ゲン達第1ドックは高く張り出した舞台を前にぞろぞろと並んだ。

皆、それぞれのチームの色のTシャツを着て右端に第8、左端に第7、第6、第5と並び、真中がゲン達第1とアカギ率いる第2と並ぶ。全チームライバル意識むき出しで今年こそは俺達が!いや俺達が!と血気盛んだ。


「どっちが勝っても恨みっこ無しな、アカギ。」


エドがニヤッと笑ってアカギを見れば


「ぬかせ。ソレを言うのは俺だ。」


フンと眉間に皺を寄せてアカギが応える。

2人は互いに拳を出してぶつけた。



『HEYHEYHEY!!!今年もまた会えて嬉しいぜこの野蛮人共!相手を叩きのめす準備はできたかクソったれ!!!』



キイーーーンとマイクの高音が流れ、ノリに乗った口の悪い司会者の声が会場に響いた。



ウオオォオオォオオオ!!!!



三百はくだらない男達の野太い声が応えるように辺りを揺らす。


『ったく、このクソ暑いのにテメエらの雄叫びなんぞ聞かせるんじゃねえよ!!と言うワケで口直しといこうじゃねぇか!オウともよ!あまりの美しさに目ん玉落っことすなよォ!!女神様達のご降臨だ!』


ビートのきいた音楽が流れ、男達の最高潮に乗った歓声が聞こえる中、舞台前、男達から1m程前に赤い絨毯が引かれた。白い砂浜に深紅が映える。


『さぁ~て、トップバッターは第8ドックのアイリーン!続けて第7ドックのカティーナ!』


赤い絨毯の右からアイリーンが、左からカティーナが踊るように姿を現す。

その美しく女らしい体には驚きの趣向が施されていた。


2人ともデザインは違うが同じ白の水着を履き、踵の高い白のサンダルを履いている。

そしてその体には・・・・アイリーンの脇腹から背中を上る様にして大きな”8”の数字が白くペイントされていた。カティーナは右太ももに大きな"7"の数字がこれまた白で。


アイリーンは第8ドックチームの目の前まで来ると挑発的に背中を見せニッコリ笑いながらポーズを取った。カティーナは右足をゆっくり上げて第7ドックチームに自慢の足を見せびらかす。


一瞬の沈黙の後、男達の怒号の様な声が会場を揺らした。


『オイオイオイ!!今年の女神は一味違うぜ!チームの数字をペイントだなんて粋な演出じゃねえの!こりゃ次の女神はどんな大胆な所に数字を隠しているんだぁ!?男にとってはたまらねぇな!おっと、とっとと次にいかねぇとお前らに殺されそうだぜ!お待ちかね次は第6ドックのユージーン!第5ドックのクラウディア!』




「内緒ってコレの事だったか。」


エドが訳知り顔で頷くとゲンが説明を求めた。


「ジニーがか?」

「ああ。MG達と何やら計画を練っていたんだよ。いくら聞いてもはぐらかすから気になっていたんだが・・・・やるなぁジニー。盛り上がるし、チームもMGもドックの代表としてプライドが高まる。いい事だ。」


エドはチラッとゲンを見て、アカギを見た。2人とも苦虫を噛み潰したような顔をしている。


「だが、彼氏なんかは複雑だろうなぁ・・・・ライバルも増えるし?」


ゲンとアカギはジロリとエドを睨んだが


「さてさて!いよいよ最後の女神のご登場だ!第2ドックのタマラ!そしてラストぉ!第1ドックのジニー!!」


司会が高らかに呼ぶ名に急いで右と左に視線を転じた。





絨毯をゆっくりとジニーが歩いてくる。途中ですでに舞台上の他のMG達と微笑みを交わし、口笛や声をかける男達に手を振りながら真っ直ぐ第1ドックの前まで来た。

ゲンは信じられないほど美しいジニーを茫然と見つめた。


シンプルな白のホルターネックのビキニはジニーの均整の取れた女らしい肢体を余すとこなく輝かせている。長い脚に華奢な白のサンダルを合わせ、両サイドを紐で結んだだけの白のボトムは背徳的だ。ゲンが両手で囲めそうな細いウェスト。視線を胸に移せば。ゲンは思わず歯を食いしばって洩れそうになる呻き声を抑えた。

ジニーの魅惑的な胸の真ん中から白の”1”が。

”1”はジニーの左胸を横断し首筋に伸びている。


焦がす様にジニーの肢体を見詰めた後ゲンはとうとうジニーと目を合わせた。

ジニーはその金色の瞳でゲンをじっと見ている。

瞬間2人の周りから音が消え2人の視線が絡まった。


「ジニー・・・」


ゲンが小さく呟く。

それは大きな歓声に紛れジニーには聞こえないはずだ。

だが、ジニーは直後ニッコリ笑ってゲンに大きくウィンクした。

そしてくるりと回って待っていた第2のMG、タマラと一緒に腕を組みながら舞台へと上がってゆく。

全員が揃ってポーズをとると会場は割れんばかりの歓声で埋め尽くされた。


ゲンはジニーを見つめ続けた。ジニーもゲンに深みを増した金の瞳を向ける。

2人の緊張が高まる中、いきなりジニーがゲンの方へ向って投げキスを放る。

ゲンが目を見開くと悪戯っぽく笑って後は退場するまで二度とゲンの方を見なかった。




ゲンは体中が熱く震えるような何かが突き抜けて行くのを感じた。

挑発、されてる。


(勝つ・・・必ず俺らが優勝する・・・!)




『女神からの勝利のキスをもらうのはどのチームだ!名誉とプライドをかけて正々堂々と勝負しろよォ!それではビル&シップ・カンパニー!ドック対抗ビーチバレー大会・・・開催だァアアアア!』

女神たちが登場のBGMはパフュームの「レーザービーム」のイメージ。

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