起 第一話 同志との邂逅
目覚めると、私はベッドの上で仰向けになっていた。
私は死んだのかと思ったが、どうやら奇跡的に生還できたらしい。
あたりを見回すと、そこには見慣れない空間が広がっていた。
ここは私の住んでいた家ではないらしい。
しかし、不思議なことに、我が家のような安心感があるのも事実。
不可解な点はいくつかあるが、それよりも気になる点がある。
それは、あまりにも贅沢なつくり過ぎる点である。
キングサイズベッドなだけでなく、天幕まで付いている。
さらに天幕には、金の刺繍まで入っている。
ここから類推されること、それは...
「こりゃ、成金レヴェルマックスだな」
本当の富豪は、こんな贅沢はしないだろう。
おそらく、私と同様に、キラキラ輝くもので、周囲を圧倒させたいタイプなんだ。
この家には、同志がいる。
それも格上の。
そんな同志のプライドで、この豪華な客室にきっと案内して頂いたんだ。
その意志に応えなければならない。
その為には、この部屋を隈なく調査しよう。
もしかすると、思わぬビジネスチャンスが眠っているかもしれない。
期待で胸をいっぱいにしながら、部屋中を歩き回る。
すると、いろいろなお宝が出てきた。
まず、知らない人の肖像画。
価値があるかは分からないけれども、話のタネにはなる。
次に、緻密に編まれた絹織物。
最後に、分厚い本が出てきた。
よく使い古されており、聖書の類と類推できる。
一読していると、衝撃的なページがあった。
「私的財産を過剰に貯蓄すること勿れ。然らずんば、天罰が与えられ給う」
どういうことか詳細に見ようとした瞬間、ドアがノックされた。
私は戸惑った。
とりあえず、私は適当な聖書のページを開き、相手に向かって音読した。
「願はくば、神は救い給う」
「ルーザ、お前生きていたのか」
あれ、反応が芳しくない。
眼前の初老の男は、私を怪訝な顔でこちらを慎重に覗き込んでいる。
念押しで、もう一回読んでおくか。
「願はくば、神はっ...!」
「良かった! 生きていて!」
何故か抱き締められてしまった。
いや、男性の西洋的な外見から、ここは西洋世界だと判断できる。
なら、ハグは挨拶として、当然か。
私もここは社交辞令として、一言かっこいい挨拶を決めるか。
「お会いできるのを楽しみにしておりました。
ぜひともビジネスについて熱い討論を交わしましょう」
決まった。
そのはずなのに、相手の反応はまたもや芳しくない。
いやむしろ、怪しさが確信に変わったと言おうか。
「お前はいったい何者だ?」
本名を言うべきなのだろうか。
それとも、もう一言かっこいいものを決めようか。
悩んだ挙句、私は後者を選んだ。
「名乗るほどのものじゃありません。何故なら私は敗北者なのですから」
「そうだよな! お前はルーザだよな」
「ええ、私は敗北者です」
今度は完全に決まった。
相手も喜ばしそうに反応している。
しかし、成金レヴェルマックスの人物だからと言って、私を敗北者と連呼するのはやめてほしい。
まぁ、それもいいか。
こんなにも相手の明るい笑顔を見たのは久しぶりだからね。
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