導入
20XX年、世界は未曾有の不景気に瀕していた。
街は失業者に溢れ、都市の空気は人々をカタストロフィーへと向かわせた。
荒廃した都市の中、とある痩せた姿の仲居が、料亭の暗い玄関で靴を探している。
その時、料亭から姿を現した一人の太った男性が、火のついた紙幣を灯りとして差し出し、こう言った。
「どうだ、これで明るくなったろう」
そう、この趣味の悪い男こそ、本作の主人公である。
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世の中には二種類の人しかいないと思う。
金が稼げるか、それ以外か。
言葉や理屈では解決できない問題でも、金銭の力さえあれば思いのままに解決できる。
この世界では、金が物を言うのだ。
「社長、軍の方がお呼びです」
そう、金さえあれば、優秀な司書も雇えるし、あの強権的な軍でさえ味方にすることができる。
「ああ、今行こう」
そして、金さえあれば、この世のすべてだって掌握できるかもしれない。
私はそれを求めて、必死に働いてきた。
誰かから批判されても、例えそれが人々の不幸の種になっても、私には関係ない。
「迎えの車が来ているはずなのですが...」
「よい。
ゆっくり待とうじゃないか」
しかし、私は知らなかった。
金の及ぼす影響力の強さを。
そして、それが人間の負の方向に作用したときの破壊力を。
「社長! 危ない!」
気づいたときには、もう既に倒れていた。
そう何度も私の身体にナイフを刺すのではない。
身体から、あらゆる力がどんどん抜けていく。
これが死か。
いろいろな映像がフラッシュバックしてくる。
大変な幼少期だった。
不景気で借金を抱えた父は夜逃げ、母が一人で私を育ててくれていた。
しかし、毎日取り立てにやってくる借金取りの恐怖のなか、ついに母は姿を消した。
だから私はこの世界では金がものを言うことを知った。
あの苦しみを二度と味わないように、世界の資本家の頂点をとることを夢見た。
それなのに、こんな結末なんて許せない。
死にたくない。
諦めたくない。
私は、私の夢を叶えられるなら、何にでもなってやる。
それこそ、姿形を変えたって、絶対に、絶対に。
私の意識はそこでフェードアウトした。
お読みいただきありがとうございます。




