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木枯らし吹く中で

作者: 山本大介

 なろラジ作品でございます。


 大量の年賀状を書くのに疲れてしまった私は、寝落ちしてしまい、時刻セットしてあったスマホのオルゴール音で目を覚ました。

 私も年をとったなと思う。

 大量とはいえ、昔はこのくらいなら1日で書き上げていたのだ。

 そろそろもう身近な人たちだけのラインやメールの挨拶でもいいんじゃないかと年賀状終いを考えてしまう。

 

 そんな年賀状のことばかり考えると頭が痛いので、違うことを頭の中に思い描いてみた。

 ふと、頭の中にでてきたのは、浅い夢の中で見た、合言葉は「山、川」と言い合った、子供時代の懐かしい日々を思いだした。

 ふふふと思わず一人笑う・・・が。

 あ・・・いけない。

 油断したら、年賀状のことをぶり返して考えてしまった。


 ならば気晴らしにとコンビニまで、眠気覚ましにと早朝、自転車をこぎ進みだしたのはいいが、晴天から不意の雨が小雨から大雨と変わりバスの停留所に雨宿りすることにした。


 さっきから、上着のポケットに何か入ってあるのが気になって取り出すと、先日抽選であたったギフトカードだった。

 そうだ、これでコンビニスイーツのホットケーキでも買おうかと思った。

 雨中、軒下をみると季節外れの風鈴が寂しそうに風に揺れていた。

 誰がつけたのだろう、こんなところに、子どもか?外し忘れたのか、ふとそう思いながら、私はスマホに手を伸ばす。


 ・・・しょうがない。

 雨が止むまでと以前から、気になっていた無人島サバイバル生活番組の見逃し配信を観る事にした。

 外は雨風、木枯らしが吹いている。

 番組は度々CМが入る。

 その都度現実へと戻され、外を見るとまだ雨が降っている、ぶるると震え、寒いと思わず腕をさする。

 CМからムソルグスキーの「展覧会の絵」、次にモーツァルト「アイネクライネナハトムジーク」のクラッシックが流れはじめた。

 曲に合わせ人差し指で指揮をとる。

 すると私は思わず「舞踏会」と呟いた。

 それから「葡萄会」「武闘会」と頭の中で漢字変換をしてひとり笑った。

 しとしと冷たい雨が降っている。

 なにやってるんだと溜息ひとつ。

 白い息がやがて消える。

 その雨はまだ止みそうにない。

 だが、止まない雨などないのだ。


 私はコンビニスイーツのホットケーキの甘い味を頭に思い浮かべ、雨足が少しおさまった今、自転車をこぎだし、小雨降る町へと向かった。

 ちなみに財布は忘れていたようだ。

 でも大丈夫、ポケットにはカードがある。

 なるようになるさ。

 私は第九の鼻歌をうたう。

 小雨は小雪へと変わった。


 恒例のやーつです。

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― 新着の感想 ―
木枯らしが吹き、年賀状に追われる。 今の時期にピッタリなシチュエーションですね。 そして11個全てのキーワードが網羅されているのですか。 これは凄いですね。
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