プロローグ
〝お前の代わりなんていくらでもいるんだぞ〟なんて言うけれど、本当にそうだろうか?
私は、自分の代わりなんてどこにも居ないと思っている。
それは私が誰よりも優れている、という驕りではない。
誰も私の代わりなんてやりたがらないだろうという、ちょっとした諦めだった。
しかし最近、遂に見つけてしまった。
私の偽物を。
最近流行のインプレゾンビ……だっけ? なんと私に成りすましている奴が、街にいるらしいのだ。
こういうのって、有名人が被害に遭うモノだとばかり思っていた。
もちろん、私は有名人じゃない。インフルエンサーとかでも。ただの一般的な女子高生に過ぎない。あ、今は女子○生とか女学生にしないといけないんだっけ?
とにかく。私なんかに成りすましても、何のメリットもないことは確かだ。強いて挙げるなら、私にデメリットを与えられることくらい。本当にそれくらいしかないのだ。
だったら、私の事を嫌いな誰かがやってる? いやいや、人並みに恨みを買うようなことはしてきたつもりだけど、そんな事までされる覚えはない。
ならドッペルゲンガー? 世界には自分に似た人が三人居るって話だけど、もしかしてそれ? うーん……その線は今はナシで。怪異とか出てくると、話がややこしくなりそうだから。
じゃあ何だというのだろう? 私のそっくりさん。
今のところ考えられるのは、他人のそら似。それか生き別れの双子。
前者は考えるのをやめてる感じだし、後者はややドラマチック過ぎる気がする。けれど、考えられるとすれば、それくらいだよなぁ。
ま、いずれにせよ考えたところで詮無い話なのかもしれないけど。
かといって、このまま放置してもいいのかって気はする。
このままにしていると、何か物語が始まってしまいそうで嫌なのだ。
夢見がちな子なら、これから始まる物語に胸を高鳴らせることもあるだろう。だけど私はそうじゃない。なぜならリアリストだから。
どっちかって言うと、なんか変な事件に巻き込まれそうで不安になる。闇バイトとか。
だったらどうする? 偽物が何かをしでかす前に、締め上げてしまえばいいのだろうか。 誰かに成りすましてはいけない、なんていう法律はない。たぶん。だから、下手にこちらから手を出すと、私の方が私刑で捕まってしまいかねない。
なら泣き寝入りする?
それも嫌だ。偽物が何の目的で私に成りすましているのかは分からないが、それはそれで罪をなすりつけられたりしそうで困る。
それなら〝どうか偽物が悪いことをしませんように〟なんて、お祈りする日々を送る?
どうやら偽物は、私の生活圏にはいないみたいだし、それも悪くない。だけどもし偽物がパパ活だの男をたぶらかすような真似をして、その様子を友達に見られでもしたら? ……考えたくもない。
そうなると、やはりとっちめるしかないのだろうか? 警察に駆け込んでも意味なさそうだし。
……いや、ダメだ。どれも有効な解決策には思えない。
となるとやはり……少々手荒になるが、始末するしかないのだろうか?
話が通じるならば、荒事にはならずに済むかもしれない。
けれどもし、偽物が本気で私に成りすまそうとしていたら?
その時は、仕方がない。
いずれにせよ、彼女の処遇は次に会ったときに決めることにしよう。