200×年、恋愛無双状態のオレはアイツに出会った
あ、まずオレのチョロバカ恋愛遍歴ね。墓場まで持っていくつもりだったけど、言ってしまおう。
とある国への旅先で酔った勢いで非処女になったオレ。その時は外国人の甘い言葉に素直に酔った。携帯電話が普及したばかりでまだまだ交際電話なんてしょっちゅうできるはずもなく帰国してそのままさよなら。
別の国へ滞在中、なかなかイイ仕事についてたカレと結婚するため、一旦日本に戻りその間に浮気され相手のオンナと電話越しに修羅場を繰り広げビビって電話にも代わらない小心カレと駄目だこの男…と1年で破局。ただ、最後の方は戻ってた自国でオレも浮気してしまう。
その浮気した男、クソ貧乏で、イスラム教徒で、イスラム教をせつせつと語り教えとかそこで植え付けられたわけだが、カレは敬虔な割に無理強いさせることなく、かなりオレを自由にさせてくれる。別れる間際はまぁまぁ勉強になったなぁと思ってたカレのお話も心地よい眠りを誘いほぼ聞いてなかったな。最後の方はあくびとともに別の男にうつつ抜かしてしまったし。
甘い言葉で気持ちよくさせてくれるカレ、最初は知らずに付き合ったがそのうち分かった。
「あ、こいつ嫁いるな」と。分かっていながらも体の関係を2年近く続けてたほぼファックボディのカレ。
オレもコイツはヤるだけって割り切ってたから、切れる時に切った。ただ別れてもメール攻撃・自宅突撃訪問と続いたため、仕方ない、オレが知ってるとは思いもしてなかった「嫁に言うで!」の一言で黙らせる。独身と信じ切ってたと思わせてたので、真剣にびっくりしてた。
本当にあそこだけしか素晴らしいところがない男だった。野外だろうが関係なく、しょっちゅう盛ってたな絶倫男め。
エンジェルなんて名前のくせして、さながら悪魔みたいな乱暴なセックスをするカレ。まだ数ヶ月しか付き合ってないのに「アンタのパパとママに挨拶するわ、ボクの名前はエンジェルです、結婚どうですか?」で笑わせてくれたカレ。だがしかし!!苦痛のセックスとこれから長年付き合ってられないです、壊れてしまいます、別れました。
何番目の愛人かわからんけど、湯水の如くお金を注ぎ込んでくれた超年上のカレ。大人の遊びをたくさん教えてくれ与えられ、物の価値を大いに狂わせられましたが、カレは絶対にオレだけの男にはなってくれそうにないし、ぶっ飛びすぎてたからそろそろ自分は堅実まともになりたいと別れる。
30才を過ぎたら相手にまともな奴なんかいないで、探しても求めても無理無駄!諦めろ!と友人にも言われてた矢先、
オレはアイツと出会ってしまった。
出会う2ヶ月前ぐらいかな?ある映画を観たオレの前に立つアイツは、その映画の中で後頭部から口まで槍をブッ刺されて死ぬ奴隷にそっくり。生き残るだろうと思ってただけに衝撃悲惨な死に方をしたあの奴隷に。
浅黒い肌、中背ながらガシッとした筋肉質な体つき、ぎょろっとした目つきにマッシュルームな髪型までそっくりで、これで獣の骨かツノで出来た鼻ピアスつけてたら「まさにッ」と言いたくなるほど似てた。酷い例えでごめんなさい、かわいい例えならアニメで卵の殻を被った黒いヒヨコにも似てたな。
アイツ、その時もまだモテまくってたオレとの初対面、すんとすましてオレに全く興味なさそうだった。話しかけても目も合わせずうなづくか首左右に振るかで反応。正直、感じ悪くて仲良くしようという気持ちには全くなれない。
はいはい、キミもオレにとってもお互い通り過ぎただけの人ってことね、交わんない。そう思ってたら、いきなりアイツが食べてた炭火焼き骨付きチキンを側にいたオレに「おいしいよ、たべて」と手ずからチキンをオレの口元へ持ってきた。
「えッ?!何!?」と驚いたが、オレはオレで勝手にあだ名をつけてた槍刺さりくんには興味なし!を貫いた態度だったので、真顔でチキンを口に持ってきたアイツにドキッとしてしまい遠慮なくチキンにかぶりついた。
炭の香りがするチキンはジューシーで美味しかった。正直、キミは可愛いねと言い続けられてたオレ、かわいいから口周りがベタベタになるかもしれない骨付きチキンにかぶりつくなんてしなかっただろう。口周りが汚れるなんてみっともないじゃないか!
でも、出されたチキンにかぶりついた。かぶりついた瞬間、チキンの向こうにはアイツの笑顔があった。
オレよりアイツの方がかわいいと思ってしまった。ドキッとした自分を知られたくなくて「おお〜めっちゃうまいな〜チキン!」なんて言ってもう一口かぶりついて誤魔化す。
フフッと笑ってそのチキンをアイツは嬉しそうに食べた。
なんだ、笑うし、いきなり話しかけてくるじゃないか…表情筋が死んでる外国人に会ったのははじめてだなって最初は思ってたけど、後日、それは大きな誤解だった。
その炭火焼き骨付きチキンきっかけで、ちょいちょい話しかけてくる上、最後、先にアイツが帰ろうとする時にオレのところに来て「電話してもいい?番号教えてください」って言ってくるもんだから、オレに興味あるじゃんかって何だか嬉しくなって番号を教えた。
かかってこなくてもいいけど、番号を教えてほしいと言ってくれてアイツに嫌だとは言えなかった。
が、びっくりしたのはその日の深夜から毎日電話をかけてきたのだ、アイツは。そんなそぶり全く見せなかったアイツが。
そしてその日から朝早い仕事だから深夜の電話なんて「仕事あるんだからこんな時間にかけてくんじゃねーよ」とか言うこともなく毎晩5分か10分ぐらいのなんて事のない今日何してたかのお話を聞きたがるアイツと話すオレ。
お互いに差はあれど好感を持ったのだ。オレは持ってしまったのだ。数十年後、出会ったことすら後悔するとは知らずに。
トキメキとキラめきでいっぱいの出会い。




