表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8


 アンソニーに連れられて屋敷に帰って来た。

 両親が心配して出迎えてくれたが私はまだショックで話も出来そうになかった。

 「心配いりません。俺が付いてるんで」

 アンソニーは心配する両親に事情を説明して部屋に連れて入ってくれた。

 私は自室のソファーにそっと座らされた。

 両親も後をついて来たがアンソニーがふたりの顔を見た。照れ臭さそうに金色の髪をがしがし掻きまわす。

 「あの…悪いんですが少しの間二人にしてもらえませんか。俺、リザベルに大切な話があるんです」

 「ああ、そういう事か。でもアンソニーわかってるんだろうな」

 父がじろりとアンソニーを見る。

 (いったい何?ふたりで何の話をする気?)

 私はふたりを交互に見ると両親はさっさと出て行った。

 がちゃりと扉が閉まった。

 「もう、アンソニーったら婚姻前の男女が部屋に閉じこもるのは行けないのよ」

 私は戸惑ってそんな事を言った。

 「ああ、話しはすぐに終わるから。いいから俺の話を聞いてリザベル」

 「わかったわ。でも手短にしてね」

 「ああ、すぐに終わる」

 アンソニーはそう言うと目の前で私の前に跪いた。


 「一体何が始まるの…アンソニー?」

 「リザベル・キャッツ。私はあなたを愛しています。どうか私と結婚して下さい」

 アンソニーは上着のポケットから小さな小箱を出すとその小箱を開いた。

 中にはアンソニーの瞳と同じ。そして私の瞳の色でもある翡翠色の美しい宝石が付いた指輪が入っていた。

 「ちょっと待って。アンソニーが私を愛してるって…」

 私の脳内は???で満ちた。それにキースの事もあって私の脳内はちょっとしたパニックだ。


 「リザベルが6歳の時、雨で地盤が緩んでいた谷間を一緒に滑り落ちた事覚えてるだろう?」

 私はそう言えばそんな事があったと海馬の記憶の一部を引っ張り出した。

 アンソニーは私があの時の事を思い出したと分かったらしく。

 「なっ。リザベルは必死で俺にしがみ付いてアンソニー絶対に離さないでって言って俺のシャツにしがみ付いて…あの時から俺には君だけだった。俺は生涯をかけてリザベル。お前を守るって誓ったんだ。でも、殿下と婚約して…俺がどれだけ悔しかったか。でもあのばかが遂にリザベルを手放した。俺はこのチャンスを逃す気はなかった。それなのにキースが出て来て…リザベル。俺がどれだけ焦ったかわかってるのか!ダリアの屋敷でだって…お前のキースを見る視線と来たら…俺はキースをぎたぎったにしてしまいたかった。でも任務があった。だから俺はぐっと我慢していたんだ。でもお前を苦しめることになった事はほんとに悪かったと思ってる。でもな。やっと…やっと俺は決心した。お前に告白しようって。そう思ったらもう一刻の猶予も出来ないんだ。俺と結婚してくれ。でなきゃ俺はもう…死んでしまう。なあリザベルこの気持ちに嘘はない。神に誓う。だから…」


 アンソニーの顔はまるで子犬が縋るようだ。

 その翡翠色の瞳には金色や青色。橙色に黄色と色とりどりの色が煌めいていてそれは美しいパノラマを見ているようだ。

 その瞳が次第に涙で濡れて行く。

 私はアンソニーの涙にぬれた瞳をじっと見ていた。そして6歳のあの時の事を鮮明に思い出していた。

 地滑りで落ちていく中私の脳裏にはアンソニーの瞳のように色とりどりの色が渦巻いた。恐かった。でもアンソニーがいてくれたから。だから恐かったけど我慢出来た。

 (もぉぉぉ!私ったらこんな大切なことをすっかり忘れていたと言うか、違うの。

 アンソニーあなたは私の王子様だった。勇敢で私を助けてくれるヒーローでいつだってあなたは私を守ってくれていたわよね。

 でもいつの頃からだろう…あなたは先に大人になって。ううん、そんなのいい訳よね。

 王妃教育で疲れ果てラビン殿下の相手に疲れてあの幼いころの素晴らしい気持ちをすっかり見失っていただけなの。

 それにダリアの屋敷で何だかアンソニーの態度がおかしかったのはそう言う事だったのね。

 キースの事は確かに意識したし裏切られてすごく傷ついた。

 でも、あの時はっきり思ったことに比べれば全然比べ物にならない。アンソニーのそばを離れたくないって。ずっとあなたのそばにいたいって…それなのに私ったら…何してんだろう)


 私はぎゅっと手を握りしめた。

 「アンソニー私もあの時の気持ち忘れていないから…ただ色々あって見失っていたの。キースの事なんか吹っ飛んだわ。もうはっきり見えてるから。あなたのそばを離れない。絶対に離れたくないって思ってたのに本当にごめんなさい」

 その言葉はするすると零れ落ちた。

 「いいんだ。だって王子の婚約者だったんだ。無理もないだろう?誰も怒ってなんかない。でもキースの事はほんと辛かった。でも、もういいんだ。リザベルお前が俺のそばにいてくれるならもうそれだけで充分だ」

 「ええ、ずっとそばにいるわ。私達結婚しましょう」

 「ああ、永遠の愛を誓うよリザベル」

 アンソニーは私の左手の薬指に指輪をはめた。そしてゆっくり私の頬を両手で包み込んだ。

 「愛してるリザベル。俺の天使。永遠の天使だから」

 そう言って私の唇を奪った。そっと触れあうようなキスではなくて…

 猛獣に貪られるような激しいキスだった。


 何度も舌を絡ませ口腔内を蹂躙されて息の絶え絶えになるころやっと解放された。

 「アンソニーったら!こんなの…」

 「ごめん。キースに先を越されたと思うともう抑えがきかなくて…嫌いになった?」

 「もぉぉぅ。大好きに決まってるじゃない」

 今度は私からアンソニーにキスをした。

 それがいけなかった。

 「リザベル、俺もう…はっ、はぁっ、はぁっ…」

 またかぶりつくようなキスをされまくって…


 「おい、アンソニー最初に忠告したはずだ」

 私達は父に引きはがされるようにして離された。

 ふたりとも唇は真っ赤に腫れていた。

 「ったく。いいかアンソニー結婚まで絶対にリザベルの純潔は守るからな!」

 「もちろんです。俺の愛しいリザベルなんですよ。お父さん」

 「チッ!まだ早い。いい気になるな。さあ、リザベル。いいから部屋に戻りなさい。これ以上は危険すぎる」

 「は~いおとう様。アンソニーと結婚しますからよろしく」

 「さっきまでキースキースと言っていた奴が…ったく。アンソニーいいか。わかってるんだろうな?」

 「もちろんです」

 この後も父の小言はかなり続いたらしい。

 アンソニーはそんな小言さえも嬉しそうに聞いていたと母が言っていた。


 キースはすべてを白状した。もちろん私を愛しているなどお芝居だったとはっきりした。

 王宮を襲う計画もすべて暴露されて犯人も捕まった。パッショーナ国とあわや戦争とまで言ったが何とか話し合いで解決できた。

 私は何という馬鹿だったかとショックだったがアンソニーが大きな愛で私を包み込んでくれてすぐに立ち直れた。

 ラビン殿下はイルネとは別れそしてしばらく他国に留学が決まった。帰ってくれば婚約者選びが始まるだろう。

 まあ、良かったと思う。


 そして私たちは半年後無事に結婚式を挙げた。

 そして永遠の愛を誓い生涯離れることなく仲良く幸せに暮らしたとさ。

 めでたしめでたし。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ