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 私はすぐに邸に帰るとその事を父に話した。

 父は翌日王宮に出向き事の真相をはっきりするように国王に迫った。

 すぐに事実確認が行われることになった。

 二日後私と父は王宮の王の執務室に呼び出され国王と側近フランツと殿下の側近たち(学園でいつも殿下のそばにいる)が話を聞かれた。

 殿下の側近であるキース・ゴート侯爵令息が口火を切った。

 キース様は鍛えた体躯の持ち主で顔つきも硬派な感じの男だ。

 びしっと決めた黒髪。三白眼の奥に色づく琥珀色の瞳は何かを決意したかのように感じられた。

 おまけに顎も張っていて私は一瞬身体が強張るのを感じた。

 だが、彼の口から出た言葉はそれは真摯なものだった。

 「私は一年の時から殿下のそばで仕えて来ましたキース・ゴートと言います。私の目から見るリザベル嬢はいつも殿下を気遣い彼を支えて来たと思います。それなのに3年になってあのイルネなんかに気を映した殿下の気が知れません。はっきり言います。殿下が言った事はすべてうそです。いえ、イルネの言うことをなんでも信じていると言った方がいいでしょうか。リザベル嬢はイルネをいじめたり貶めることははっきり言って無理なんです。そもそもふたりは教室は違いますし昼食時はいつも殿下と一緒です。放課後も殿下の方がイルネを迎えに行っていましたしリザベル嬢がイルネに何かしていたことを目撃した事もありません。それにはっきり言いますが殿下からはリザベル嬢がイルネをいじめていた事を目撃したと言うように頼まれました。ですがあえて私はこの先の殿下の未来を案ずるからこそ本当の事を話そうと思いました。どうか公平な采配をお願いします。もし殿下が私を側近として置きたくないと言われるなら私は殿下の側近もやめる覚悟です。以上です」

 「ゴート侯爵令息。あなたの勇気に感謝いたします。真実こそが殿下のためにもなることは国王陛下もお分かりです。他に方は?」

 側近のフランツがキースに感謝を言うと他の側近たちも本当の事を話した。


 彼らのおかげで殿下がいかにばかな事をしたかがはっきりした。

 「ラビンを呼べ!」陛下が言うとラビン殿下が部屋に入って来た。


 ラビン殿下は王族カラーの黄金色の美しい髪を右手で掻き上げながら部屋に入って来た。

 美しい紺碧色の瞳は自分の言うことは何でも通ると信じているのか私を一瞥すると微かに唇を上げた。

 そんなラビン殿下を私は無表情を装うって見つめていた。心の中はぐちゃぐちゃのまま。

 (なに?そんなに私が嫌いなの?私が何をしたって言うの?私はあなたの為に…心を映したのはあなたなのに…どうしてそんな目で見れるのよ!)

 堪えていた感情が胸の奥から込み上げそうになって行く。でも、ここは我慢するしかない。


 それから国王を真っ直ぐに見た。その姿勢は自信に満ちている。

 「ラビン。お前を見損なったぞ。婚約者であるリザベル嬢をないがしろにしあんな女に傾倒しおって。あの女がお前を垂らしこんでいる事すらわからんか?」

 「父上。なにをおっしゃっているんです。騙されてはいけません。リザベルこそイルネを眇めたのです。こんな女が私の妃になど。そんな価値もない女なのです。だから私の一存で婚約を破棄したのです。どうか真実から目をそらさないで婚約を解消させて下さい。」

 ラビン殿下は必死でそう言った。

 そんな姿を父も私も殿下の側近たちまでもが冷めた目で見ている。

 「キース。おい、お前たちもちゃんと言ってくれ。イルネを眇めていたのはリザベルだと。おい、どうなんだ?ちゃんとそう言ってくれたんだろうな?」

 ラビン殿下は頭に血が上ったのかキースの胸ぐらに掴みかかった。

 「ラビン!止めんか。見苦しいぞ。お前が嘘を証言してくれと頼んだことは聞いた。お前は良い側近。いや友達を持ったな。本気でお前を救いたいと思っているからこそ真実を話してくれたんだぞ。今ならまだ間に合う。お前はあのイルネに騙されているんだ。よく考えてみろ。リザベルがして来たことを…王妃の教育に学園ではお前が生徒会長としてやって行けるように献身的に支えてくれていただろう?時には身体を気遣いパーティーの席ではお前の婚約者として立派に振る舞い。並大抵の苦労ではなかったはず。それなのにお前はそんな仕打ちを出来るのか?」


 「確かに彼女は頑張っていたと思います。でも、私はイルネを愛してしまったんです。運命の相手なんです。父上。どうか彼女を運命を共にする事をお許し下さい」

 「これほど言っても…お前の処分は後程考える。リザベル嬢。キャッツ侯爵。こんな息子を許してほしい。婚約破棄はラビン有責で進める」

 「陛下残念です。では、ふたりは婚約破棄ということで」 

 父が陛下に首を垂れてそう言った。

 「陛下、お世話になりました。どうかお身体ご自愛下さい」

 私は陛下にカーテシーをした。

 「ああ、リザベル嬢申し訳ない。あなたに良い縁があるよう祈っておる。」

 陛下は柔らかな微笑みを向けた。

 その次にラビンを見つめると冷たい声で問うた。

 「ラビン。リザベル嬢に言う事があるのではないのか?」

 「ああ、リザベルには世話になった。お前も幸せになってくれ」

 「……」私はただ黙って頭を下げた。

 「おい、言うことはそれだけか?」

 陛下は大きくため息をつくと「本当に申し訳ない。リザベル嬢どうか幸せになってくれ。ラビンの処分は追って知らせる。それまでラビンを部屋に閉じ込めておけ!衛兵ラビンを部屋へ!」

 「父上!なんでだ?俺はちゃんと…クッソ!」

 ラビン殿下はそう言いながら引きずられて行った。

 







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