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私の名前はリザベル・キャッツ。キャッツ侯爵家の長女、父オレクは王宮で国防院の副長官をしている。ちなみに兄リックも同じ部署で働いている。
それにキャッツ侯爵家は鉱山を持っていてかなり裕福な家だと思う。
私はアニマール国の第1王子ラビン殿下の婚約者だった。
だったと言う事は婚約は解消されたということだ。
もちろん原因は王子ラビンの心変わりだ。
私達は同級生でそれなりの付き合いをして来たと思う。
でも、王立学園3年生になって男爵家のイルネという令嬢が女子生徒に絡まれているところをラビンが助けたのが始まりだった。
イルネはラビン殿下にすっかり魅入られたのか所かまわず近づいて来た。
ラビンは王子なので今まで女にはある意味警戒をしていたが、ラビン殿下に取って気安く声を掛けられすべてを許しているような態度は新鮮だったのかもしれない。
ラビン殿下はすぐにイルネに入れ込み始めた。
そして極めつけは私がイルネを眇めているという言いがかりで王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を告げられた。
大勢の前で私はラビン殿下から「リザベル。お前は俺の大切なイルネを散々いじめたり悪口を言っていたな。お前のような奴はこの国の王族の妃になどふさわしくないのは当然だろう。よってお前との婚約は破棄する!いいな。今ここでお前との婚約はなくなった。」
「待って下さい。そんな事を殿下の一存で決められることではないはずです!殿下が婚約を解消したいならまず国王とキャッツ侯爵家の了解が必要です。ラビン殿下あなたのご希望は伺いました。私は帰ってその事を父に伝えます。ですが私はイルネ嬢を眇めてなどいません。これははっきり言って殿下の有責。婚約破棄を告げるのは私の方ですわ。では、私は失礼します」
「リザベル強がっているのも今のうちだ。イルネをいじめていたという証言もあるんだ。俺に責任があると?ふん!泣くのはそっちだ。もう、お前と話すことなどない。さっさと帰れ!さあ、イルネ踊ろうか」
「殿下ぁぁ、私幸せですぅ…」
ラビン殿下はイルネの腕を取りイルネがラビンを見上げる。
すぐに世界はふたりの世界に変わったらしい。
(勝手にすればいい。二度とあなたに関わりませんから!こんな裏切りなんかで泣くもんですか!)
私はぎゅっと唇を噛みしめた。鉄の味が口の中に広がってそれは空しい気持ちをさらに掻き立てた。
倒れてしまいそうな気持の中必死で身体を保っているとラビンの側近の確かキース様が声をかけて来た。
「リザベル嬢、お送りします。どうぞこちらへ」
強面で取っつきにくいと言われている彼の思わぬ行動に驚きながらも彼に支えられて倒れずに済んだ。
私は帰りの馬車まで送ってもらって無事に屋敷に帰って来れた。