新しい自分を探して
【配信の転換――ファンとの交流を重視】
次の配信で、りめるは少しだけ方針を変えることにした。視聴者との距離を縮め、より「つながり」を重視した内容を意識することにしたのだ。
「みんな〜!こんにちは!りめるだよ!」
この日の衣装は、視聴者がリクエストした可愛らしいパステルカラーのドレス。しかし、それを強調するポーズや演出ではなく、視聴者から寄せられた質問やメッセージに丁寧に応える配信にした。
「今日はみんなからの質問に答えていこうと思うの!気軽にコメントしてね!」
視聴者からの質問が次々とコメント欄に流れる。
「好きな食べ物は?」
「エーデルノアってどんな国?」
「最近楽しかったことは?」
りめるは一つ一つに笑顔で答えながら、カメラ越しの視聴者たちと心を通わせていた。
「エーデルノアにはね、夜になると星の花が咲く場所があるんだよ!その花を触ると、ポンって光るの!」
そんなりめるの話に、コメント欄も一層盛り上がった。
「想像しただけで素敵!」
「その花、見てみたい!」
配信終了後、視聴者からの温かいメッセージが増えたことを確認したりめるは、少しだけ安心した。
「わたし、これでいいのかもしれない……。」
そう呟きながらも、まだ心のどこかに迷いが残っている自分に気づいていた。
【他の妖精たちの活躍を知る】
数日後、りめるはSNSを眺めていると、他国の妖精たちの配信が目に入った。彼女たちは、魔法を駆使した華やかな演出で大勢の視聴者を魅了していた。
「すごい……こんなこともできるんだ。」
ある妖精は、配信中に魔法で空に美しい光の模様を描き、視聴者を驚かせていた。別の妖精は、魔法でリアルタイムに背景を変え、幻想的な風景を映し出していた。
「これが、みんなを癒すための魔法……。」
画面の中の妖精たちの姿を見て、りめるは思わずため息をついた。
(わたしには、こんな魔法は使えない。どうやったら、みんなと同じように活躍できるんだろう?)
その日、りめるは珍しく配信をしないまま、一人で考え込んでしまった。
【みなもとの再会】
悩むりめるを心配して、みなもが再び連絡をくれた。
「りめるちゃん、最近ちょっと元気がないみたいだけど、大丈夫?」
カフェで向かい合ったみなもに、りめるはぽつりと心の内を明かした。
「……最近、他の妖精たちの配信を見て、わたし、自信をなくしちゃって。みんなみたいにすごい魔法も使えないし、どうやって戦えばいいのか分からなくなっちゃったんです。」
みなもは少し考え込むようにしてから、優しく微笑んだ。
「りめるちゃん、魔法が使えないのは、むしろ強みになるかもしれないよ。」
「えっ、どうして……?」
「だって、みんな魔法を使う中で、りめるちゃんは自分の魅力でみんなを癒してる。それって、他の妖精にはできないことなんじゃない?」
その言葉に、りめるは驚いた表情を浮かべた。
「……魅力で、癒す……?」
「うん。それに気づけたら、きっともっと素敵な配信ができると思うな。」
みなもの言葉が、りめるの心に小さな光を灯した。
【新たな挑戦の準備】
帰宅したりめるは、みなもの言葉を反芻しながら、自分にしかできない配信を模索し始めた。
(魔法が得意じゃなくても、わたしにはわたしのやり方がある。みんなが笑顔になってくれるなら、それでいいよね。)
彼女はスマートフォンを手に取り、次の配信の内容を考え始めた。今回は、視聴者ともっと直接的に「癒し」を届けるための企画を立てることにした。
「よし……次は、新しい自分を見せてみよう!」