届けたい想い
【配信の変化――さらにエスカレートするリクエスト】
「みんな〜!今日も来てくれてありがとう!」
りめるは画面越しに明るく手を振った。この日の配信も、事前に視聴者からリクエストを募った「衣装リクエスト企画」だった。今回選んだのは、肩や胸元が大胆に開いた妖精風のドレス。きらめく生地が光を反射し、りめるのスタイルを際立たせていた。
「どうかな?今日の衣装、みんなが選んでくれたドレスだよ!」
りめるがカメラの前で軽く回ってみせると、コメント欄が一気に活気づいた。
「最高すぎる!」
「これ、ずっと待ってたやつ!」
「もっと近くで見せて!」
「ありがとう〜!みんなが楽しんでくれてるなら嬉しいよ!」
りめるは笑顔でコメントに応えながら、カメラの前でさまざまなポーズを試してみせた。
【視聴者との距離感】
配信が盛り上がるにつれ、視聴者からのリクエストはさらに大胆なものになっていった。
「次はもっと攻めた衣装で!」
「水着配信待ってます!」
「ここまできたら、りめるちゃんの限界を見たい!」
その言葉にりめるは一瞬戸惑いながらも、笑顔を崩さずに答えた。
「ふふ、みんなの期待に応えられるように、これからも頑張るね!」
しかし、その配信が終わった後、りめるの心にはわずかな疲れと違和感が残った。
【みなもからのメッセージ】
配信を終えてスマートフォンを手に取ったりめるは、みなもからのメッセージに気づいた。
みなも:「今日の配信、見たよ。とても頑張ってるね。でも、大丈夫?少し疲れてるように見えたよ。」
りめる:「みなもさん、ありがとう!大丈夫だよ!みんなが見てくれてるから頑張れるの!」
そう返信したものの、りめるの心の中では小さな迷いが生まれていた。
(疲れてるように見えた……?でも、わたしはちゃんと笑顔でやってたつもりなのに……。)
彼女は自分の気持ちを整理するため、少し外の空気を吸うことにした。
【夜の街での出来事】
夜の街に出たりめるは、冷たい風に当たりながら静かに考えていた。街の明かりが輝く中で、スマートフォンを手に持つ人々の姿が目に入る。
(わたしの配信を見てくれてる人たちも、こんなふうに日常の中でわたしを見てくれてるんだよね。)
そのとき、カフェの窓から出てきた二人組の会話が耳に入った。
「あの配信者、ほんとすごいよね。毎回可愛い格好してさ。」
「でもさ、なんか最近、顔とかスタイルばっかりじゃない?癒しを届けるって感じじゃなくなってきたよね。」
その言葉に、りめるは足を止めた。胸がギュッと締めつけられるような感覚が押し寄せる。
(……癒しを届けられてない?わたし……。)
【みなもとの再会】
翌日、りめるはみなもに会うために再びカフェを訪れた。会うなり、みなもは優しい笑顔で迎えてくれた。
「りめるちゃん、顔色が少し悪いみたいだけど、大丈夫?」
「……ちょっと考えちゃって。最近、みんながわたしをどう見てるのか分からなくなっちゃったんです。」
りめるは昨日の街中で聞いた会話や、自分の配信に寄せられるコメントについて話した。
「みんな、わたしのことを見てくれるのは嬉しいけど……それって、わたしじゃなくて、見た目だけなんじゃないかって……。」
りめるの言葉に、みなもは静かに耳を傾けていた。そして、優しく言った。
「りめるちゃん、それでもいいんじゃない?」
「え……?」
意外な言葉にりめるは顔を上げた。
「確かに、みんながりめるちゃんの見た目に注目してる部分もあるかもしれない。でも、見た目だけで終わらないのがりめるちゃんだと思う。だって、りめるちゃんが一生懸命話して、笑顔でみんなを元気づけてるから、ファンがこんなに増えてるんだよ。」
その言葉に、りめるは少しだけ目を潤ませた。
「……わたし、みんなに笑顔を届けたいって思ってたのに、自分のことでいっぱいになってたのかもしれない。」
「大丈夫。迷いながらでも、りめるちゃんならきっと前に進めるよ。」
みなもの言葉は、りめるの心に温かな光を灯した。
【新しい挑戦への決意】
帰宅したりめるは、次の配信の準備をしながら静かに考えていた。
(わたしにできるのは、見た目でも、声でも、どんな形でもみんなを癒すこと。みんなが笑顔になってくれるなら、それでいいんだよね。)
彼女は次の配信に向けて、少しだけ肩の力を抜いて笑った。
「よし、頑張ろう!」