揺れる心
【新たなきっかけ――みなもとの出会い】
りめるが「みなも」と出会ったのは、SNSでの交流がきっかけだった。ある日、りめるがフォロワーから「癒し系の配信者」としてみなもの名前を勧められ、興味本位で彼女の配信を覗いたのだ。
みなもの配信は、落ち着いたトーンの語りと、美しい自然の風景を背景にした心安らぐ内容だった。りめるとは違い、彼女の配信には過激なリクエストも少なく、視聴者との穏やかな会話が繰り広げられていた。
「すごいなぁ……こんなふうに落ち着いた配信ができたら、わたしももっと癒しを届けられるのかな。」
りめるはみなもの配信に感動し、その場でフォローをした。すると、みなもからすぐにメッセージが届いた。
みなも:「フォローありがとう!いつも配信見てるよ。あなたの明るさ、とっても素敵だね!」
りめる:「えっ!見てくれてたんですか?ありがとうございます!」
その日からメッセージをやりとりするようになり、りめるとみなもは徐々に親しくなっていった。
【初めての対面――カフェでの交流】
SNSでのやりとりを続けるうちに、みなもがりめるに「一度直接会って話してみたい」と提案した。そこで二人は、りめるがよく訪れる街のカフェで会うことになった。
「初めまして、みなもさん!ほんとに会えるなんて嬉しいです!」
カフェの席に座ったりめるは、目を輝かせながら挨拶した。
「初めまして、りめるちゃん。こうやって直接会うのってなんだか不思議だね。でも、会えて嬉しいよ。」
みなもは落ち着いた笑顔で答えた。その柔らかい声と穏やかな雰囲気は、配信で見ていた彼女そのままだった。
「みなもさんの配信、ほんとに癒されるんです!わたしもあんなふうにみんなを癒せるようになりたいなって思って……。」
りめるが少し恥ずかしそうにそう言うと、みなもは優しく頷いた。
「ありがとう。でもね、りめるちゃんの配信には、私にはない明るさや元気がある。癒しの形は人それぞれだから、自分に合った方法を探せばいいんだよ。」
その言葉に、りめるはハッとしたような表情を浮かべた。
【みなもへの相談】
りめるがみなもに初めて相談したのは、それから数週間後のことだった。配信活動が忙しくなる中で、彼女は次第に自分の価値に疑問を感じるようになっていた。
「みなもさん、最近ちょっと疲れちゃって……。」
カフェで再び会ったりめるは、ゆっくりと悩みを打ち明けた。
「疲れる?」
みなもは驚いた様子でりめるを見つめた。
「うん……たくさんの人が見てくれるのはすごく嬉しいんだけど、みんなの期待に応えなきゃって思うと、だんだん苦しくなってきて……。」
りめるはカップを両手で包みながら、視線を落とした。
「そっか。りめるちゃん、頑張り屋さんなんだね。」
みなもは静かに頷き、少し間を置いてから言った。
「でもね、癒しを届けるって、無理をして頑張ることじゃないと思うよ。本当に癒されるのは、自然体のりめるちゃんを見た人たちなんじゃないかな。」
その言葉に、りめるは小さく首をかしげた。
「自然体……?」
「うん。みんなの期待に応えようとするのも大事だけど、無理をして疲れちゃったら意味がないよ。りめるちゃんが楽しんで配信してる姿を見たいって思う人も、きっとたくさんいるはずだよ。」
みなもの言葉は、りめるの心にそっと寄り添うようだった。
【新しい一歩のために】
その日の帰り道、りめるはみなもの言葉を思い返していた。
「無理をして頑張ることじゃない……自然体のわたしを見てくれる人……。」
しかし、そう思う一方で、配信中に寄せられる期待やコメントが頭をよぎる。
(みんなの期待に応えることも大事だし、そうしないと見てもらえなくなるかもしれない……。)
揺れる気持ちを抱えながら、りめるは次の配信に向けて新たな企画を考え始めた。彼女の心の中では、まだ答えの出ない葛藤が続いていた。