笑顔の裏側
【新たなチャレンジ――企画型配信】
フォロワーが1万人を突破したことで、りめるはますます配信活動に力を入れるようになった。次に挑戦したのは「リクエスト企画配信」だった。
「みんな〜、こんにちは!今日もりめるの配信に来てくれてありがとう!」
画面越しに明るく手を振るりめる。今日の衣装はファンのリクエストで選んだ、ウエストがきゅっと絞られたショートドレスだった。
「今日はみんなのリクエストに応えて、いろんなポーズをやってみようと思うの!どんなポーズが見たいかな〜?」
コメント欄は一気に盛り上がり、次々とリクエストが飛び交った。
「かわいいポーズ!」
「ウィンクして!」
「背中見せて!」
「もっと大胆なポーズお願い!」
「ふふ、みんなありがとう!じゃあ、まずはこれからいくね!」
りめるはカメラに向かってウィンクをしたり、ファンが喜びそうな仕草を取り入れていった。
【増える視聴者と過激なリクエスト】
配信の盛り上がりとともに、視聴者数は驚異的に増え、5000人を突破した。コメント欄も次々に流れ、全てを追いきれないほどの反応が寄せられていた。
「りめるちゃん、次は大胆なポーズ頼む!」
「今度は水着配信やってほしいな!」
「そのスタイル、もっとアピールして!」
その中で、りめるは特にファンが喜びそうなコメントを選び、配信に取り入れるようにしていた。
「みんなのリクエスト、ちゃんと聞いてるからね!次はこんな感じでどうかな?」
カメラの前で軽くポーズを取りながら、りめるは画面越しに笑顔を向けた。
【初めての心無いコメント】
しかし、その配信の終盤、コメント欄に目を留めたりめるの顔が一瞬だけ曇った。
「どうせ顔と体しか見られてないんだろ。」
「これで癒されるとか、笑える。」
その言葉に胸がざわついたが、りめるはすぐに気持ちを切り替えた。
「ありがとう!でも、わたしの配信を見に来てくれたことが嬉しいよ!」
彼女は笑顔で対応したが、配信を終えてスマートフォンを閉じた瞬間、その言葉が頭をよぎった。
「どうせ顔と体しか見られてない……?」
りめるは少しだけ眉をひそめたが、すぐに首を振り、自分に言い聞かせた。
「ううん、大丈夫!みんなを笑顔にするのが一番だもん!」
【視聴者との距離感】
翌日、りめるは街を歩いていると、複数の視線を感じた。自分の背後から小さな声が聞こえる。
「あの子、絶対りめるだよね。」
「本物……スタイルすごい……!」
声をかけられることはなかったが、その視線を感じるたび、りめるは胸がざわついた。
「みんながわたしのことを見てくれるのは嬉しい。でも、なんだろう、この感じ……。」
一方で、SNSではファンからの応援メッセージが多数届いていた。
「りめるちゃんのおかげで毎日が楽しい!」
「いつも癒しをありがとう!」
その言葉に元気づけられる一方で、りめるの心の奥には、微かな違和感が残り続けていた。
【心の疲れ】
配信が終わるたびに、りめるのフォロワー数は増え続けていた。視聴者数が1万人を超える日も増え、彼女はエーデルノアのエネルギーが充足していくのを感じ取っていた。
「これなら、エーデルノアのためにもなるし、みんなの笑顔も増えるよね!」
そう思い込もうとするたび、心の奥底で小さな疑問が浮かび上がる。
(見られているのは、りめる自身じゃなくて……見た目だけなのかな?)
そんな思いを抱えながらも、彼女は配信を続けた。視聴者の期待に応えることが使命だと信じて。