1.プロローグ
朝起きると、いつものように目覚めの洗面台へ向かう。洗面台の鏡に映るその私の顔は、色気も何もない普段のブサイクをさらにブサイクにした朝の顔だった。
何て変な顔。
何てデカイ顔なんだろ。
デブだから?
そして、少し身を引いてみる。
やはりデブでブスだ...。
目。
鼻。
口。
それぞれのパーツは普通なんだけど、位置とかかな...。まるで福笑いじゃん!
独りごちては、その顔を消しゴムで消すように、鏡に石鹸を擦り付けていた。鏡は泡まみれになり、鏡に映る自分の姿は泡で完全に覆われていた。
さらに鏡の隅から隅までを、石鹸を擦り付けて泡だらけにしていた。
「瑠衣!何やってんの⁈」
私は母親のびっくりするようなその声に振り返り、「あ、おはよう」と言った。
「どうしたの?」
母親はそう言って、泡だらけの鏡に目をやった。私は石鹸の泡を水で流しながら答えた。
「掃除だよ」
「そうなの?」
そう言って後ろで母親の見ている中、私は雑巾で泡だらけの鏡を拭き始めた。
「朝から頭でもおかしくなったんじゃないかと思ったよ」
母親はそう言うと「ありがとね」と言って洗面所を去っていった。
確かに朝から鏡を洗うのはいいとしても、石鹸で泡だらけにして鏡を洗うのもおかしなものだ。母親は気でも変になったのかと思ったのかもしれない。
確かに今朝のように、朝のブス顔にブスを再認識させられると気がおかしくなりそうになる。
鏡の泡を拭き取ると、さらに乾いたきれいな雑巾で仕上拭きをした。そして、鏡の正面に立ち鏡を確認した。そして思った。やっぱりブスだなあたし。