王宮にて
週一更新です。
「エイハが帰ったぞ!」
「エイハ様!?その姿は!」
「あぁー!フレッドよ!我が義弟よ!」
エイハはフレッドに抱擁をする。
「一体どうされたのですか!あの変なカボチャボンツは!」
「好きで履いていた訳では無い。」
「トレビァーンはどこへ!」
「だからそれも私の趣味ではない!元に戻ったのだ!喜べ!」
「ぬか喜びも程々にな。」
「ラクア様!まさか、ラクア様が解いてくださったのですか?」
「私では無くリアだ。それに一時的なもので、すぐに神により掛け直されるから安心して良い。」
「安心?リア嬢、エイハを元に戻して下りありがとうございます。」
「いえいえ、副産物ですので。それにすぐに戻ってしまうそうなので、お気になさらず。」
「すぐに戻るとは?」
ラクアは面倒くさいとフレッドの頭を鷲掴みし、ここまでの記憶を注入する。フレッドは初めてだったのだろ、目を見開き驚いている。
「分かりました。とにかく、戻れたのが嬉しくて仕事をほっぽり出して戻って来たと。」
ラクアが答える。
「まぁ、そうだな。」
「戻れエイハ!」
「せめてこの姿の間はここに居させて!王に会ってくる!」
そう言って飛び出して行ってしまった。
「あのー私はどうしたら…?」
「折角きたのですから、ここで修行されては?魔法騎士達の訓練場がありますよ。」
「じゃぁ、お言葉に甘えて!」
「はい。すぐ連絡入れますね。」
***
訓練場の入り口で止められるリア。
「お嬢様、お待ち下さい。ここは魔法騎士の訓練場です。一般の方はご入場いただけません。」
「お前は魔力があるのに私が見えないのか?」
「ちょっと!脅さないで。フレデリック様から、こちらで訓練をと言われておりまして…。」
「その様な話は聞いておりません。」
騎士は煙たそうに答える。
「では、少し見学させて頂くのはーーー」
「その様な事は行なっておりません。」
諦めて帰ろうとすると、中からスラっとした女性が現れる。
「魔法学校の生徒さんが何かご用でしょうか。」
「フレデリック様からこちらで魔法修行をしたらどうかと言われまして…。」
「そうでしたか。フレッドに確かめましょう。しばしお待ちを。」
そう言うと女性は手を耳に当て魔法通信をする。二、三言葉を交わすと、通信を切ってこちらに向き直す。
「お待たせし申し訳ありません。どうぞ。」
ニッコリ笑って案内してくれる。後ろをついて行くと、広い円形状の場所に出る。そこでは何人もの騎士が剣で手合わせをしている。リアは初めて見る光景に息を呑む。皆の顔が真剣でとてもカッコよかったからだ。
「…。」
リアが目をキラキラさせながら見ていると、クスクスと笑う声が聞こえる。そちらを見ると、案内してくれた女性が美しく笑っている。
「あ、すみません、こういった場面をその様な顔でご覧になる女性が私の周りには居らず、つい笑ってしまいました。怖がる人も多くて。」
「(//∇//)え〜っと…剣術は小さい頃に習っておりまして、強い方に憧れてしまうんです。」
「そうでしたか!良ければ手合わせ願えますか?お嬢様。」
「小さい頃に習っていた程度で、騎士の方と手合わせ出来るレベルでは無くーーー」
そう言いかけて、ラクアが入ってくる。
「リアよ、やってみるといい。」
「えっ!?」
「勿論、魔法の訓練だ。自分の体に魔法をかけて強化し戦うのだ。」
「?私の魔法は治癒だよ?体の強化なんて出来るの?」
「まぁやってみよ。先ずそうだなぁ、あやつで良い。あやつの体になりたいと願えば良い。」
「はぁ。」
リアは指名された男性をよく見てから『アレになれます様に』と両手を胸の前に組み願う。
「これで良いのかなぁ?何も変わらないけど。」
「ひとまずは良いだろう。本来はもっと具体的に願うとよいぞ!では女、リアと剣を交えよ。」
「かしこまりました、ラクア様。」
女性は騎士の礼を執ってから立ち上がり周りに声をかける。
「皆の者、今から私が訓練に入る。皆は一度休憩だ。」
すると皆一斉に闘技場を引き上げ、水を飲んだり汗を拭きだす。
「さぁ、どうぞ。」
リアは真ん中に連れて行かれる。
「魔法の訓練にいらしたのですから、魔法も使って大丈夫ですよ。審判もいますから、気にせずに戦って下さい。」
「よろしくお願いします!剣はーーー」
「自分で作り出せる筈だ。」
ラクアはすかさず答える。リアは剣をイメージすると、いつの間にか手に握っている。その様子に自分が1番ビックリしているリア。そして不思議そうに首を傾げる。その様子にクスクス笑いながら女が言う。
「では、はじめますよ。」
「はい、宜しくお願いします。」
その瞬間リアの目が鋭くなる。体がすごく軽くなって、いつもより早く走れる気がする。女に近づき剣を交える。女は目を見開き驚く。何とか剣を流し体勢を整える。しかしリアの剣が振り下ろされる。女は体を翻し避ける。先ほどより女の動きが上がっている。お互いに打ち合う。
周りの者は先程まで休憩モードであった。女の子と副団長は何をしようとしているのか、疑問ではあったが、注目していなかった。しかし、開始の合図がされた時、場の空気が変わった事に皆が気づいて、闘技場を見た。すると強い剣気を放っている謎の女の子が、副隊長と互角に戦っている。しかも動きの癖がある人物にソックリだ。その試合に息をのむ隊員達。
リアは上手く女の攻撃を流している。そこにラクアが言う。
「次に剣を合わせた時、剣から相手の魔力が流れてくるイメージをせよ。」
それを聞いてリアは早速試みる。キーンと剣が女と合わさる。力で押して来るのに耐えながら、リアは剣から魔力が流れてくるイメージを必死に作る。すると、剣と剣を伝わって
、リアに魔力が流れてくる。女は魔力が引っ張られるのに気づき堪えようとする。しかし根こそぎ引き抜こうとするリアの力に抗えない。女が片膝をつき、少しずつ力に押された出す。周囲の騎士達はそれに驚く。リアがニヤッとした時だ。
「止まれ!」
ラクアが声を張り上げ、リアの魔法を解く。その場に崩れるリア。抱き止めるラクア。一部始終を見てシーンと静まり返る場内。
「女、大丈夫か?」
「はい、ラクア様。私は問題ありません。そちらのお嬢様はどうされたのですか?」
ラクアはリアをお姫様抱っこしながら答える。
「リアはあのゴリマッチョな男をイメージして自己の身体能力を強化した。」
「はい。少女とは思えない程の重い力でした。体重以上の重みを感じました。」
「そうだ。ゴリラをそのままコピーした様なものだからな。」
(彼はゴリラでは無いのですが…。)
「そして私がお前の魔力を奪うように指示した。」
「確かに力がひっこな抜かれるみたいな感覚でした。魔力を奪うなど出来るのですか?」
「私と仮契約しているからな。普段なら花が枯れるくらいの、少し生気を吸える程度だ。」
「そうでしたか。それが神と仮契約することで強化され、相手の魔力が奪える様になると。」
「あぁ。少し吸いすぎた様だ。返してやろう。」
ラクアは女の額に手をかざし、魔力を返する。すると女は「ハッ」とした顔をする。
(私の匂いが付いているが、何か違う。)
「え?体が軽く、この清らかで暖かな…。これは本当に私の魔力ですか?」
「そうだ。しかし正しくは、リアが浄化したお前の魔力だ。リアの体の中を通ると、勝手に力が浄化されてしまう。その代償でリアは倒れる。今までもそうだった。しかしリアは治療をやめようとしない。どんなに倒れてもな。だから私は、リアの力を止めるコントロールをしている。今回はゴリラ化して使った力が大きかった事もあるが。」
魔力が戻った女はやっと立ち上がる。
(やはり体が軽い。そして痛いところも無く、傷も治っている。これも浄化された魔力のお陰だろうか。戦う前より寧ろ元気だ。しかしこの力、見られてしまったからにはもう逃げられないだろうな。)
女は改めて膝をつくと、他の騎士達(上半身裸)も膝をつく。
「我が名はフィナオール。現王の姪に当たります。昨日王城にて神と仮契約をされたリア様ですね。私は愚か者です。リア様は王族に取り入る為に工作されたのだと思っておりました。しかしそれは違ったようだ。ラクア様が見えておりましたのに、数々の無礼をお許しください。」
「私はただリアが気に入っただけ。リアが何を思い何をするか。私はその思いを最大限に手助けするだけだ。だからリアが代償も顧みず王族の呪いを解くと言えば、それを手伝う。そしてその代償を受けたその時は、私がリアをもらう。永遠にな。お前達王族はどうする?考えよ。少なくてもリアを貴重な存在で神に渡してはならぬと思うならな。」
「…何故私如きにその様な大切な話をされるのでしょうか。」
「王よりはリアを大切に思ってくれそうだったのでな。リアを護りたいなら、もっと仲間を増やせ。王に惑わされぬ者達をリアに集めよ。私がリアの為に出来るのは、リアを生かすことのみだ。物理的に出来ることは、こうして抱きしめることくらいだ。」
そう言い、ラクアはあるところを睨んだ。