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トレビアーン

リアは休養室で目を覚ます。


「起きたか。」


「ラクア…。また倒れちゃった。王様はどうされたの?あの後、治療の続きはユーラ先生がやってくれたんだよね?」


「…すでに王城へ引き取ってもらったから心配無い。」

(リアの力の事はまだ伝えられないな。)


「良かった!ユーラ先生ならすぐ治せるもんね!それより、いま何時?」


「もうすぐ正午というところか。」


「えー!!3時間も寝てるじゃん!!授業がー( ̄д ̄;)早く教室に戻らなきゃ。」


リアは急いでベッドから降りるとふらついて転びそうになる。それをラクアが抱き止める。


「気をつけよ。私は今日のところは早退した方が良いと思う。」


「でも、今日から新しいクラスになったんだし…。」


そこでノックが聞こえ誰が入ってくる。


「お加減はいかがですか?マドマ〜ゼル?私はリア嬢、貴方の担任のエイハでぇ〜す♪」


リアとラクアは眉を寄せて目の前のキャラの濃い人物を見る。エリザベスカラーに水色地に薄い水色のストライプの入ったパフスリーブの服に、金色のカボチャパンツ。まるで絵本から出て来てしまった王子様の様な服だ。


「「………。」」


「おーう!これはこれは始めまして!貴方がラクア様デスね!握手握手!」


エイハは勝手にラクアの手を掴みブンブンふっている。


「私は神様に初めて会いました!どうか力を見せて下さ〜い!」


「…リア、私はお前以外の人間には興味が無い。だから人間なんて皆一緒だと思っていた。しかし、色々な人間がいるのだな。」


「そうですね。個性は様々です。でもこんなに個性的な方にお会いするのは、私も初めてです。」


エイハは両手を組んで左頬当て、小首を傾げた可愛いポーズで目をキュルンキュルンさせている。


「わー!ワタシの事を話してる〜。神様に認知されちゃったわ〜❤︎」


ラクア表情は固くなり、漫画的表現ならば体には雪が積もっていることだろう。この不思議な生き物に耐えられなくなったラクアは、『停止』の魔法を掛ける。


「ちょっと、先生に何をするのよ!早く戻して!」



「放って置いてもすぐ解ける。今日は帰ってゆっくりしないか?稽古なら私がつけるし。」


「ダメだよ!今日は転科初日なんだから、みんなに挨拶しなきゃ。」


「えー」と不満そうなラクアを他所に、リアはエイハを解凍させる為に両手をかざした。


「どうなって欲しいか、イメージするんだよね?」


「そうだ。ゆっくりで良い。」


リアが光り出し、エイハが光に包まれる。エイハが解凍され光が消えると、エイハでは無い人物がいた。


「え?エイハ先生は?」


「何を言ってる?私だ!」


「いや、別人ですけど?」


リアは首を傾げる。ラクアは違う感想の様だ。


「なるほどな。」


エイハは窓に薄ら映った自分を見てビックリする


「!!待ってくれ!なんで!?」


リアは益々⁇⁇⁇となる。ラクアはエイハの驚く様が面白かった様で、お腹を抱えて笑い出す。


「えっ?何?」


「フフフッ他の神達もやられっぽなしでは無かったと言う事だな。」


エイハはまだ信じられないという顔をして、自分の顔をジッと見つめている。リアはじれったそうに、笑い転げているラクアの腕をバシバシ叩いて説明を求める。


「ちょっとー!分かってるなら笑って無いで教えてよぉー!」


「ハハハ!こんなに笑ったのはどれくらい振りか!あのな、呪いをどうにかしようと、無理矢理神達を縛りつけているだろ?だから、神達はその代償を王族に課しているのだ。」


「はー。それがこの変身ってこと?」


「そうだ!な!分かったら面白いだろ?」


「え?いや、全然分かんないんだけど。イケメンに変身するのが面白いってこと?」


「そうじゃ無くて、あの変な格好や喋り方がお仕置きって事だ!」


「つまり、キャラヤバいなって思ったアレが変身後の姿だったってこと?」


「そう。で、コッチが本来の姿だ。性格や喋り方は知らんが。」


2人が謎解きを終えたところで、エイハが話に入ってくる。


「いや、待て!あのキャラが私であるはずがないだろ!!勘違いを招く言い方をしないでくれ、神!」


「トレビァーン…。」


「リア君、だからそれは違うんだって!」


「…なんでお仕置きが終わったんですかね?」


その問いにラクアが答える。


「いや、終わった訳では無い。私の『停止』を解く時、何を考えてた?」


「体が自由に動く様になぁーれ!みたいな感じ。」


「成程。お仕置き中は魔法で服装や言動を制御されていたから、それも一緒に解けたということだな。」


「じゃぁ、私はもう解放されたのか!」


「だから、そうでは無いと言っているだろ。今は以前掛けられていた魔法は解けた。しかし、すぐに再び掛けられるはずだ。お前に魔法を掛けているアイツはそう簡単なヤツじゃないからな。だから王族の他のヤツに代償を支払わせているんだ。」


「…ねぇ、今の理屈だと、私も何か代償を支払っているの?」


「そなたは魔法を治療する時に体に出ているだろ。」


「でもあれは魔法を使った事での代償であり、ラクアを縛っている代償では無いよね?」


「あぁ。私はそなたを気に入っている。今すぐにでも本契約しても良いくらいにな。だから、その契約の為に他の代償を払わせたいとは思わない。」


「そっか。ありがと!」


「いや、そなたの力は暖かいからな。神なら誰もが羨やみ欲しがるだろう。私を最初に呼んでくれて良かった。」


「私もラクアで良かったよ!」


「おい、私を置いてイチャイチャするな!」


「いえ、していませんが…?ところでエイハ先生はどうしてこちらへ?」


「リア君を迎えに来たに決まっているだろ!しかし元に戻ったのだ。今は王宮へ行くぞ!」


「え?何故に?」


「いいから!さぁ。」


エイハはリアの手を引き職員室へ行く。


「皆、見てくれて!呪いが解けたぞ!」


「…?」


職員室の先生全員ポカンだ。


「私だ!エイハだ!今呪いのが解けた!」


「え…?エイハ先生…?本当に?」


「王宮へ行ってくる。」


未だポカン顔の先生達をそのままに、エイハはリアを連れてゲートをくぐる。全くリアやラクアの話は聞いてくれなかった。

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