伯爵家から王城へ
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翌日リアは学校には行かず、伯爵と話していた。
「リア様、私の方に貴方様の住まいを城に移さないかと打診が来ています。私はリア様がお移りになるのが宜しいかと思っております。」
「旦那様、今までのように呼び捨てでお呼び下さい。旦那様がそう仰るなら、そうさせて頂こうと思います。」
リアは暗い顔で話す。ラクアも不機嫌そうだ。
「神の愛娘をみすみす手放すとは、お前もバカだな。」
「ラクア!失礼な事言わないで!伯爵家には本当に良くして頂いたの!感謝しても恨む事はないわ。それに、私がお屋敷の空気を悪くしてたのは本当なんだから。良からぬ噂が立つ前に出ていかなければ、申し訳が立たないわ。」
「申し訳ありません。」
「いえ。すぐに出ていく準備を致します。失礼します。」
リアが席を立ち一礼して部屋を出る。しかしラクアは伯爵を見下ろしたままだ。
「何かございますでしょうか、ラクア様。」
「…今後もしリアが伯爵家を頼る事があれば、必ず最大限協力しろ。」
「はい。必ずお力になるとお約束致します。」
「なら良い。リアは直ぐにでも出立するつもりだ。屋敷の者が少ないうちに、ひっそりと出ていきたいそうだ。直ぐに王城に知らせよ。」
「はい。しかし流石に今の今では王城もお困りになるかと存じます。数日後になるかと。」
しかし伯爵の予想を裏切り、王は直ぐにでも大丈夫だとの返事だった。しかも、然るべき人物を迎えに寄越すとまで言われてしまった。
(王様はかなりリア様を欲しがっている様だな。)
王は偶にフラッと学園に現れるが、それは基本的に視察であり、無理矢理時間を作っているに過ぎない。だからその場で王城に住む話が決まり、リアへの迎えの話も纏まるとは思っていなかった。まぁリアが城に到着しても、王にお目に掛かるのは数日後だろう。
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一時間後、王城の馬車が到着する。あまり目立たない様な小さく質素な物だが、見る人が見れば良い物なのは一目で分かるくらい上等だ。
(まさか、こんなに早く迎えが来るなんて…。)
「直ぐにリア様をお呼び致します。」
「待ちなさい。」
中から聞き慣れた声がして、びっくりして振り向くと、そこには王様の側近フレデリックが降りて来た。
伯爵は体を捻り礼を執る。
「!!!!フレデリック様にご挨拶申し上げます。」
「私は王では無い。そんなに驚くな。」
「しかし…。」
フレデリックは確かに王ではないが、某系にあたる。それに王の側近で有り乳兄弟だ。本来ならこんな所に来る身分では間違っても無い。
そこへ簡素な服を来たリアが侍女とトランク一つ持って出てくる。
フレデリックは2人を見て以前ユーラと話した事を思い出す。
(確か性格が悪く醜女だとか。うーん。性格は分からんが美醜は圧倒的だな。見た目が悪く性格も悪いなんて最悪だ。あっちのトランクを持たされているのは侍女か?顔はまずまずだが、城に行くのに流石にみしぼらし過ぎる娘だ。まぁあの娘に地味侍女1人くらい着いて来ても、ルーカスは何も言わないだろう。)
「リア嬢、ご機嫌麗しゅう。王城より参りました、フレデリック・ハワード・アービスと申します。」
フレデリックはリア?の手の甲にキスをして貴人に対する礼を取る。ラクアに睨まれながら。
すると、挨拶された娘は目が❤︎になりフレデリックに見惚れてぽーっとなる。
一方、粗末な娘はラクアに苦言を呈し始める。
「ラクア、失礼でしょ。忙しい中迎えに来てくださったのに。」
「こんなオンボロ馬車でか?」
「落ち着いた雰囲気なだけでしょ!目立たない様にして欲しいってこちらから頼んだのよ。」
「目立ちたく無いなら跳べば良いものを。」
「空間移動魔法はラクアの負担が大きいでしょ?」
「王城程度、造作もないが。」
「使わなくて良い魔法は使わなくていいの。」
2人が話していると、フレデリックが話かけてくる。
(この侍女は顔はまともだが、ラクア様を敬おうともしない、性格の悪い女だ。王城で今後迷惑をかけられても困る。)
「荷物はうちの行者に持たせましょう。」
「いえ、フレデリック様。持てますのでお気遣い無く。」
「そうですか。ですが侍女の方はお連れ出来ません。こちらで用意しておりますので。」
フレデリックは行者にアイコンタクトを送ると、無理矢理リアから荷物を取りあげる。その拍子にリアはよろける。
一方、本当の侍女ディアが、フレデリックのキラキラにやられて気を失ってしまう。それをフレデリックはキャッチしてお姫様抱っこをする。
「大丈夫ですか!リア様!早く馬車に乗せろ!」
「あ、あのーフレデリック様…?」
「お前は連れていけないと言っている!控えろ、性格の悪い女よ!」
(せ、性格の悪い…(・Д・)はー?o(`ω´ )o)
「おい、お前随分な言い草だな。」
ラクアが低い声でさっきよりも冷える目で睨む。悪寒が走る程に。
「も、申し訳ありません。」
フレデリックはその怒りに慄き咄嗟に謝り自分も馬車に乗り込み逃げる様に出立してしまった。
「「「………。」」」
リアはポカンとしている伯爵を見る。
「あの、伯爵様、私はどうすれば…?」
それにラクアが答える。
「放っておけ。話も聞かずに娘を誘拐したのはあいつだ。そなたは一時休んでおれ。どうせ、そのうち間違いに気づき迎えに来るだろう。まぁ、失礼な事も言われたし、行く必要も無いがな。」
「私から人違いだと伝えに行きますから、リア様はお茶でもしていらして下さい。」
伯爵様は馬車を追いかけるが、追いつかなかった。簡素でも王城の馬車である。やっぱり馬も良かったのだろう。伯爵は王城に着くが、約束が無い事を理由に城内に入れない。代わりに事付けを頼んだがどこまで話を上げてくれるか…。
次回、勘違いに気づく。




