伯爵家での会話
伯爵家に帰ってきたリアを、メイド仲間が迎えてくれる。どことなくいつもの優しい空気では無く、ピリついている気がする。
「あっ!リアお帰りなさい。どこに行ってたの?」
1番仲良しのメイドが心配そうに声を掛けてくれる。まだ時間は朝の7時頃。どう見ても朝帰りだが、リアはそう思われている事に気づかない。
「ちょっと散歩よ。」
そんな話をしていると、メイド長が来てリアを叱責する。
「散歩?昨日だって帰って来なかったでしょ?最近は帰りが遅くなったり、無断外泊も何回目ですか!伯爵家のメイドとして、夜遊びも大概にしなさい!」
「申し訳ーーー」
そう言おうとして、視界が真っ暗になった。そのまま倒れそうになるのを、ラクアが受け止めてお姫様抱っこで部屋へ連れて行く。
その一部始終を見たノーマルであるメイド長と他のメイド達は、リアが急に意識を無くて、しかも浮いて部屋へ行くのを目の当たりにし、恐怖する。そこへ伯爵夫妻が通りかかる。
「皆んなおはよう。」
メイド達は慌てて佇まいを直し挨拶する。
「おはようございます。旦那様、奥様。」
「あぁ。どうした?」
「…。」
その問いにメイド長が答える。
「リアが只今戻りまして、その…急に意識を無くしたと思ったら、そのまま部屋へ行きました。浮いている様に見えたので、驚愕しておりました。」
(あぁ、昨日は王様に呼び出されていたからな。倒れたと言う事は、癒しの力を使ったのだろう。それをラクア様が連れて行かれたと。こう王様の呼び出しが多いと、メイドとして置いておくは難しい。不信感を募らせている他のメイドも多いと、執事からも報告があったばかりだ。そろそろ潮時かもしれない。)
「そうか。何かあったかもしれないね。様子を見に行こう。」
「旦那様!様子でしたら私共が。」
「いや、いつも頑張って働いてくれているメイド達の体調管理も私の仕事だ。」
そう言ってリアの部屋へ向かった。
******リアの部屋
コンコンコン
「リア様、入りますよ。ラクア様、ご機嫌麗しゅうございます。」
「全く麗しくない。」
「リア様はまたお力を使われたのですね。」
「あぁ。そして空間移動魔法で帰ってきたから体力の限界だ。」
「左様でございましたか。…ラクア様、誠に申し上げにくいのですが…。」
ラクアが伯爵を睨む。
「…リア様をこの屋敷に置いておく事は、もう無理でしょう。」
「つまり、打診された様にリアを王城へ渡すと言うことか。」
ラクアのドスの効いた声が心臓に響く。
「も、申し訳ありません。」
ラクアは今にも祟りを撒き散らしそうな形相で伯爵を威圧する。リアが起きていればすぐに仲裁に入れるのだが、頼みの綱が倒れている今、この屋敷全体を包む禍々しい力が今にも暴走しそうになった時である。
ラクアは軽く引っ張られる。そちらを振り向くと、気絶したリアが無意識にラクアの服の裾を掴んでいる。ラクアはリアをじっと見て怒りを鎮める。
(ラクア、怒らないで。伯爵様は充分私を守ってくれたわ。私のせいでお屋敷の空気が悪くなってる。これ以上は迷惑になってしまうわ。私も伯爵様を守りたいのよ。)
「…この話はリアが起きてからだ。伯爵程度ではリアの盾になるのは無理か。仕方がない
、これ以上リアが嫌な思いをせぬ様、家の者から守れよ。」
「はい。申し訳ありません。」
伯爵は頭を下げて退室した。
(リア、私の意識に入れる様になったようだな。)
(ラクアが入れてくれてるんでしょ?)
(意識は共有しているが、私と話せるかはまた別の能力だ。魔法のコントロールが上手くなったな。)
(ラクアが手伝ってくれてるからでしょ?ありがとう。)
(うーん?まぁそう言うことにしておこう。)




