連れて行かれた先
伊達さんが連れてきたのは病院、彼女にここでまた待っていてねと言われ、伊達と書かれた病室の前で待っている。中でどんな話をしているかはわからない。
「おねえちゃん…」
「るみ…元気そうね」
「うん。だいぶ楽なったけど、ところで今日はどうしたの?来る予定じゃなかったわよね」
「え?そうだったかしら?るみ、今日は何の日だったか忘れたの?」
「あ…そうだった。お姉ちゃん…ちゃんと渡してくれた」
「ええ…渡したわよ」
「ありがとう。お姉ちゃん」
「えへへ…だってかわいい妹の頼みだもの」
「本当に頼りにしてます。で?どんなんだった?」
「えっっとごめんね。渡したんだけど…ちゃんとるみのこと伝えることができなかったの」
「そおうなの」
「本当にごめんね。だって、学校で私が動くと大騒ぎになって」
「私こそごめんね。無理言って」
しょんぼりと首を垂れるるみに伊達さんはにっこりとほほ笑んでツンとほほをつついた。
「ふぁああ。お姉ちゃん!!いきなり何をするの」
「ちょっとかわいかったから、つついてみた」
「そういうのは彼氏にしてあげてよ」
「残念でした。私には彼氏はいません」
「そこ!!威張るところじゃないでしょ」
「あら?そう?」
「なんで、女子高生が、しかも、美人なのに彼氏を作らないのよ」
「だって、魅力的な人がいなんですもの」
「はいはい…お姉ちゃんの理想の人が早く現れたらいいね」
「あら。話を切ったわね。じゃぁ、話を変えるけど、今日はある人を連れてきました」
「どこに?」
「部屋の外で待たせています」
「おい!!」
「なに?」
「何分待たせているのよ。早くしないと悪いじゃないって…どんな人なの」
にひひ…
「何その不敵な笑いは」
「誰でしょう」
「知らないわよ」
「じゃぁ…ヒントをあげるわ」
「って!!遊んでいる場合じゃないでしょ。外で待たせているんでしょ」
「もう…釣れないんだから…」
「もうじゃない!!早くしてあげなさい」
「じゃぁ…言うわ。藤咲亮くんです」
「ふぇええ!!」
その少女は、驚きの声を上げたのだが、一方で何やら困惑していた
「お姉ちゃん。こんな恥ずかしい姿みせられないよ」
「何言っているのよ。さっきまで早く呼びなさいって言ってたじゃない」
「それはそれ!!これはこれ!!」
「おっと最近のアニメの真似ですか?」
「ちがうって!!何も入院しているところに連れてくるなんて」
「何言っているのよ。入院していなくても会わなかったくせに」
「おねぇちゃん!!」
「じゃぁ。呼んでくるわね。遅くなってごめんね。藤咲君、入って」
▲▽▲▽▲▽▲▽
伊達さんに招かれ病室に入ると布団に隠れている少女?の姿が目に入ってきた。
「うぁあああ」
「どうしたのよ。あんなに会いたがっていた彼を連れてきたのよ。どうしてそんな態度をするのよ」
「だって…いきなり・・・つれてこられても心の準備が‥」
完全混乱している状態の彼女を伊達さんは「るみ!!覚悟を決めなさい」無理矢理布団を取り上げたのだった。するとその少女は観念したのかもじもじとうつむいたまま俺の方を見ている。
その姿を見て、俺は驚いた。目は挙動不審になっているが、伊達さんと瓜二つなのだ。しかし、彼女の方が若干小さいということは、妹ということになる。
「おねえちゃん…はずかしいよ」
「何言っているのよ。ちゃんと挨拶しないと、って藤咲君紹介するわ。私の妹『伊達るみ』よ」
「あ…よろしく」
俺は、なんとなく軽く挨拶をしてしまった。すると伊達さんが俺の耳元で
「今日、最初に渡したチョコレート覚えている」
「はい」
「そのチョコ、るみからの依頼なの」
「妹のるみです」
「あ…その節はありがとうございます」
慌てて返事をしてしまった。というより俺自身、彼女との接点が思い出せないでいる。何故、彼女は俺のことを知っているのだろうかと思っていると
「4月に命を助けて頂いてありがとうございました」
そう言って、頭を下げてきたのだった。彼女こそ、あの時、青信号を渡っていた少女だったのだ。と普通のラブコメだとここから恋愛がってちょっと待て、なぜ彼女は入院しているんだ?ひょっとして俺が突き飛ばしたからなのだろうか
「あの?どうされたのですか」
「は…あの時の・・・そうなんだ。あ…入院しているってことは、あの時、突き飛ばしたせいかな…ごめん」
「なに、謝っているんです?」
「そうよ。るみはたまたま入院しているだけよ」
すると伊達さんは俺に頭を下げてきた。
「藤咲君…遅くなっちゃけど。あなたは、るみの命の恩人なの、姉の私からもお礼をします。本当にありがとうございます」
俺は正式に彼女と挨拶をした。実は、彼女こそ俺が事故で助けた女の子だったのだ。体の弱い彼女は現在入院中。ということで同じ学校に通っている姉の伊達さんが俺を連れてきたということだった。
しかし、話はここで終わらなかった。妹想いの伊達さんは、何を思ったのか。
「明日から私たちは付き合っていることにするから」
「何もそこまでしなくても、ここに通ってもいいよ」
「何言っているのよ。今の病院は原則関係者以外立ち入り禁止なのよ。だから、あなたが単独でここへ来ることはできないのよ」
「うそ?」
「本当よ。だから、私が嘘でも恋人役をよるのよ」
「ちょっと待て、話が飛びすぎてわからん」
「そうよ。おねえちゃん。別に私は大丈夫だから。ほら、体調も良くなっているし
「そうだよ。それに俺に悪いと思わないの?」
「なぜ?」
「なぜって、伊達さんと俺が付き合うとなれば、学校ではそれなりの騒ぎになるだろう」
「そうなの?」
「そうだよ。大体、ボッチの俺が伊達さんと恋人だなんて、学校中の男子を敵にするようなものだ」
「あら?私が恋人だと不服でも」
「そうじゃなくて…」
「だったら何なの」
「だから、伊達さんが彼氏を作れば、男子の妬みもあるわけで」
「そんなの関係ないから。私が誰とお付き合いしようと勝手でしょ。というより冬木さんを説得するのに苦労したんだからね」
「おい…俺の話を聞いていたのか」
「なに?私とお付き合いするのが嫌なの。だったら、今度学校で、あなたが私を振ったとでも言いましょうか」
「それはやめてくれ。俺が学校にいられなくなる」
「じゃぁ…いいわよね」
「はい」
こうして、俺は、来週の月曜日から彼女とお付き合いをしていることになったのだった。
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