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第九話

 怪我をしないようにと言われたくせに思い切りよく足を振り抜く倉橋。脳筋疑惑が立花の中に芽生えた。


「倉橋さん、足は大丈夫ですか?」

「全然問題ありません。というか、でっかいダチョウみたいなのも叩いて平気だったので、わりとなんでもいける気がしますよ!」


 一体何と肉弾戦する気なのだろうか。

 突っ込みは置いておいて、立花は話す。というか、諭す。


「周りと同じ程度の力ならいいんですが……浮く可能性があるので、人がいるところではセーブした方がいいと思います」

「あー、それもそうですね。役に立つかと思いましたけど、面倒事はごめんですね」


 一応脳筋ではなく、倉橋としては立花に役に立つアピールをしてみただけだった。


「あとは……そうですね、倉橋さんのスキルにあった魔法を見せてもらう事はできますか?」

「了解です」


 とことこと立花の前に戻ると、くるりと背を向ける倉橋。そして顔だけ立花に向けて一言。


「危ないかもしれないのでそこから動かないでくださいね」


 ちょっと待って、何をする気なのだと立花が止める間もなく倉橋は景気良く右手に浮かべたオレンジ色の球を空に向かって投げた。

 音もなく飛んでいったそれが、ドンッと空気を震わせるほどの爆発を起こしたのは間もなくだった。

 まるで空を燃やさんとするかのように白に近いオレンジの炎が踊り狂い、遅れて熱波を周囲に撒き散らした。


「たーまやー」


 ちょっぴり思ったより威力が強くて、誤魔化し紛れに日本の風物詩を真似てみる倉橋。誤魔化しつつも爆風で吹き飛んできた石やら木やらをバシバシ払う作業に、たらりと汗を垂らしている。

 相当な距離があるにもかかわらず爆風だけで結構な被害が出ている事から、着弾した時の威力が想像できないでいる立花は、口を開いた。


「倉橋さん」

「なんでしょう、立花さん」

「あれは何の魔法?」

「火の魔法ですね」

「ちなみに何をイメージして?」

「子供の時に見た空飛ぶ城のお釜から出た奴を?」

「天の、火?」

「何かちょっと違う感じになりましたけど」

「ちなみに、全力で?」

「の、一割………いってるかも?」


 立花は頭痛がした。

 その様子を見て倉橋は慌てた。


「あ、や、小さいのもいけますよ? こう、ふわっと意識すると出来るやつなら焚き火サイズで」


 なんだかんだ倉橋さんも食料調達してくれていたし、自分の力を確認していたのかとほっとする立花。


「見せてもらってもいいですか?」


 倉橋は頷いて、ふわっと火をイメージした。するとそこに人の腰ほどの炎が立ち上がった。


「……一番小さいやつ?」

「ですです」


 小さいでしょう?と同意を求める倉橋だったが、遠い目をしている立花は気づかなかった。


「ちなみに、風と土と雷はどんな感じに?」

「えー、風はかまいたちみたいな感じですね。ふっと軽くやって向こう百メートル程ズザーっと裂けます。あとたぶん竜巻みたいなのもいけるかと。土はこう、ブルドーザーでガガガッとする感じとか、有刺鉄線みたいな感じに変形させる事も出来ます。雷はあれです、落雷です」


 うーんと思い出しながらざっくりとした所感で伝える倉橋。

 それを聞いて、威力や形状はイメージに左右されるのだろうなと推測する立花。やろうと思えばおそらくもっと細かいコントロールは可能なのだろうと推測し、とりあえずは大枠でいいかと切り上げる。


「だいたい理解できました。多分、だいたい。ありがとう。

 今度は私の力を確認したいので、少し手伝ってもらえますか」

「了解です。何をしたらいいですか?」

「ああ、少し待ってください」


 立花は目を細め、先程出現した虹色の膜を意識した。

 すると立花の身体を包むように膜が出来上がった。それに触れて固い感触を確かめてから倉橋に軽く、軽く、ノックをするように叩いてみるよう頼む。

 倉橋は虹色のシャボン玉のような膜に、どこかで見たような?と既視感を覚えたが、とりあえず言われた通りノックをしてみた。


コンコン


 正しくノックのような音がした。立花の虹色の膜は特に異変を見せることもなく健在している。

 今度は、その膜を壊す意図を持って叩いてみるように頼む立花。倉橋はちょっと不安になったが、立花の身体に当たらないコースを慎重に選んで、ぐっと握った拳を叩き込んだ。


ゴィン!!


 大きな音を立てて一瞬膜が震えた。だが、ヒビが入ることもなく耐え切っていた。

 身構えていた立花も、緊張していた倉橋も目を見張る。


「すごい! 叩いて壊れなかったの初めてですよ!」

「そ、そうですか……」


 興奮している倉橋に、立花は曖昧な返事をしつつ内心安堵に溢れていた。これで不意の事故が防げると。

 ホッとしたら力が抜けて、立花はその場に座り込んでしまった。自分で思うよりも、あり得ない状況といつ暴発するかわからない怪力の近くにいた事で緊張していたのかもしれないと考えるが、何のことはない低栄養と体力ニの弊害だった。


 立花と倉橋は一旦休憩し、ひとまず人里を探す方針を立てて準備をした。

 その際、食料を確保しておくために立花がゲーム知識を活かして空間魔法を成功させたり、倉橋がそれを見て自分もとやってみた結果ブラックホールもどきを生み出し森の一部を消し去ってしまったり、ブラックホールもどきをなんとかするため立花が封印魔法を生み出したり、反省した倉橋が食料調達に専念してスプラッタを生成して立花の魂が抜けかけたり、血濡れの自分に気づいて冷たい水に入ろうとする倉橋をさすがに風邪をひくと清潔クリーンの魔法を成功させて立花が止めたり、清潔の魔法を真似しようとする倉橋を立花が、今度こそ死んでしまう!と半泣きで必死に止めたり、いろいろあった。



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