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第六話

 水、水……水作れるか?と、小さな両手をお椀にして見つめる立花。自分の能力に創造があるのだからいけるはず。その小さなプニプニの手に随分若返ってしまった現実を思い出して泣きそうになるが、気力を奮い立たせ集中するとすぅっと水が溢れた。

 慌てて鑑定すると、水、引水可、と簡潔な結果が見えてほっとして口にする。


「うわ、すご。魔法みたいですね」

「いや倉橋さんも使ってますよね」


 ステータスにあれだけ魔法を羅列しといて、食料を非現実的な手段で確保しといて、森林破壊しといて何を言うかと反射的に突っ込んでしまう立花。

 しかし倉橋としては割と真面目に言っていた。


「どうもコントロールが全然でして。大きくどかーんなら出来るんですけどね。自分がやってるんですけどどこか他人事というか、そんな風に思った通りになんてとてもとても。まぁだからミンチにしちゃってるんですけど」


 だからほんとすごいと思ってます。と倉橋。

 やだ、何その情報怖い。とこっそり震える立花。しかし、いやいやこれではいかんと頭を振って立花は気をしっかり持った。まだまだ確認しなければならない事は多いのだ。倉橋は全然気にしてないが精神力があるせいか、それとも能天気なのか。


「倉橋さんはこの現状をどう思いますか?」

「現状ですか? 正直何が何やらでして。立花さんが起きたら何かわかるかなーと」

「つまり現状に対して推論などはないのですね?」

「えーと……はい。面目ありません」

「いえ、謝る必要はないですよ。このような状況など誰も想定しないですから。火をおこし食料調達してくださった時点で十分以上です。少なくとも私には出来なかったと思います」


 実際、これが倉橋ではなく一般的な女性ならこうはいってないだろうと思う立花。


「今後の事も考えて私の推論を聞いてもらえますか?」

「それは、はい。もちろん聞かせて欲しいです」


 こくこく頷く倉橋に、根が真面目な部分も助かると思う立花。筋力千越えが短絡的な相手だったら今頃立花はミンチになっていたかもしれない。


「かなり突飛な話になってしまいますが、ここは地球ではないところだと思うんです」

「……火星、とか?」

「そうではなく、私たちのいた世界とは異なる法則が存在している世界という意味です」

「……あー……水を出したり、私が風でスパスパやったりしてる事が、異なる法則という事です?」


 あまりゲームに親しんでいない倉橋はなんとか理解しようと頭を捻る。幸い漫画や映画は多少見ているので全く理解できないという事もなかった。


「そうです。小説やゲームの単語を使えば、いわゆる異世界というところじゃないかと」

「いせかい」

「正直夢物語だと私も思いますが、このように身体が小さくなっては現実として受け止めざるを得ないというか……」


 少し考えて、倉橋は疑問を口にした。


「……脳はそのままなんですかね」

「……脳?」

「いや、だって身体は若返っているんですよ? 脳もそうだとしたら記憶野の状態も戻っていたっておかしくないじゃないですか」


 海馬とか。と言う倉橋に、確かにと立花は思った。だが、あいにくとその答えは持ち合わせていない。

 黙り込んだ立花に、倉橋は焦る。言っちゃいけない事だったかと。


「今のところ記憶はありますが、その記憶すら怪しいという可能性が出たわけですね。ただ、そこから始めると身動きが取れなくなるので、一旦保留でもいいでしょうか?」


 真面目に言葉を返す立花に倉橋はほっとした。そして殿下は小さくても殿下なんだなぁとしみじみ思った。

 立花が進めるプロジェクトは大抵スケジュール調整が秀逸で無理が出ない事が有名だった。その要因の一つに対人スキルが高い事が挙げられる。どんなに口下手なスタッフでも、立花とはきちんと会話ができると噂で聞いていた。だからその立花の言葉に、きっとこれからも自分が馬鹿な事を言ってもこの人はちゃんと返してくれるんだろうなと倉橋は漠然と思えた。


「はい、すみません。余計な事を言って」

「いえ私では気づかなかった事ですから、何か気づいたらまた教えていただけますか?」

「それは、はい」

「では話を戻しましょうか。倉橋さんはゲームをやったことは?」

「ゲームはぷ〇ぷ〇とかマ〇オとかぐらいです」

「なるほど、では先程のステータス表示についても見慣れないですかね」

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