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第四話

「ところで、この肉は倉橋さんが? 焦げそうですが」


 肉、焦げそう、の部分で倉橋はハッとした。


「あ、そうです。どうぞ焦げる前に」


 優先順位は肉とばかりに復帰した倉橋に、肉がワイルドにぶっ刺さった細枝を渡される立花。

 立花はそれを見て、いったい何の肉だろうと尻込みした。とその時、目の前に半透明のディスプレイのようなものが現れた。


---

クッコの肉

鳥類型魔物 クッコ

尖った嘴と大きな鉤爪が鋭く危険。

体長五メートル程に成長し、自分より体格の小さな動くものを捕食する。

肉食の割に臭みがなく、あっさりとした味わいの肉質。可食。

---


 立花は目頭を揉んだ。だが、ディスプレイのようなものは主張するようにそこに存在している。


「あー、倉橋さん」

「はい?」


 肉に齧り付いていた倉橋は、高速でもぐもぐごっくんして返事した。


「これ、見えますか?」

 

 立花の手元を見せられ、ハテナと首を傾げる倉橋。


「お肉ですね」 

「いや、そうじゃなく……他人には見えないのか?」


 いや、しかしそうするとこれは……。と、立花がぶつぶつ呟く間に倉橋はもぐもぐする。結構動いた後だし寝てないしで空腹だった。若返っていることは既に彼方へ流すことにしたようだ。

 食欲に忠実な倉橋に対して、立花は思考を繰り返していた。


「ステータスオープン。出るのか」


 若かりし頃ゲームに明け暮れた日々を思い出し、側から見ると恥ずかしいセリフを言った立花だったが、彼の前には彼自身の情報がディスプレイに映っていた。


---

名前 立花 悠

性別 男

年齢 5歳

状態 低栄養

身長 115センチ

体重 19キロ

体力 2

筋力 3

魔力 3012

器用 512

速力 3

知力 380

精神 378

運  32

能力 修復、結合、創造

スキル 危険察知、結界、自己治癒、鑑定

---


 五歳のところは素通りして、状態が低栄養なのもとりあえず置いといて、随分偏った構成だなと思う立花。だが、比較対象が無いため良し悪しがいまいちわからない。


「倉橋さん、ステータスオープンと言ってもらえますか?」


 もぐもぐを繰り返していた倉橋は二本目の串も完食し、その手のゲームをやった事がなかったため、変な呪文みたいだなと思いつつステータスオープンと言ってみた。


---

名前 倉橋 楓

性別 女

年齢 15歳

状態 健康

身長 159センチ

体重 48キロ

体力 612

筋力 1024

魔力 298

器用 512

速力 512

知力 51

精神 382

運  3

能力 破壊

称号 貧乳

スキル 身体強化、夜目、火魔法、消滅魔法、風魔法、土魔法、雷魔法

耐性 毒、冷気

---


「ふんっ」


 バキッとディスプレイを二つにへし折る倉橋。その瞬間、立花の目に破壊されたディスプレイが現れて見えた。


「いきなり何してんの!?」

「なにか?」


 仕事モードも忘れて突っ込む立花に、倉橋は仕事で見せたことのない据わった目を返した。瞬時に何かしらの地雷の存在に気づく立花。

 その時、倉橋の頭にブーブーとけたたましいエラー音が鳴り響いた。


///

エラー

エラー

システム不正介入を検知

神システムへの不正アクセスログを確認

イレギュラー認定

排除プロトコルを確認

///


「なにこれ? え? システム不正介入? かみシステムへの不正アクセス? イレギュラー排除?」


 立花は倉橋の言葉を聞いて咄嗟に破壊されたディスプレイを拾い上げ、直れ、直ってくれと念じた。知力三百が己の能力を信じろと訴えていた。

 立花の必死の願いが通じたのか、虹色のふわふわした光に包まれるとすーっとディスプレイのヒビが消えていき、やがて二つはぴったりと元の一枚に戻った。


///

排除プロトコル不適合

イレギュラーの消失を確認

システムクリーン

///


「システムクリーン………静かになった」


 倉橋の言葉に、立花は詰めていた息が溢れた。そして立花の目にも見えるようになったディスプレイに視線を落とした。


---

名前 倉橋 楓

性別 女

年齢 15歳

状態 健康

身長 159センチ

体重 48キロ

体力 612

筋力 1024

魔力 298

器用 512

速力 512

知力 51

精神 382

運  3

能力 破壊

称号 貧乳

スキル 身体強化、夜目、火魔法、消滅魔法、風魔法、土魔法、雷魔法

耐性 毒、冷気

---


 バッと倉橋がディスプレイを立花から取り上げた。

 そして無言の両者。立花はどうしたの?とでもいうような顔でいるが、内心は地雷を踏まないように緊張していた。たとえ能力に破壊の二文字が見えたとしても、そこを突っ込んではいけないと知力が立花に訴えていた。


「見ました?」

「なにをです?」


 ここでも、見てない、などと言ってはいけない。

 倉橋はほっとして自分の手に戻ったディスプレイを見下ろした。


「ここ消えないかなー……あ、消えた。消せるのか。はい、どうぞ」

「いいんですか?」

「何か確認したかったんですよね? どうぞどうぞ」


 立花の手に戻ったディスプレイ。


---

名前 倉橋 楓

性別 女

年齢 15歳

状態 健康

身長 159センチ

体重 48キロ

体力 612

筋力 1024

魔力 298

器用 512

速力 512

知力 51

精神 382

運  3

能力 破壊

スキル 身体強化、夜目、火魔法、消滅魔法、風魔法、土魔法、雷魔法

耐性 毒、冷気

---


 しっかり貧乳の項目が消されている事は置いといて、そこには己とは隔絶された数値が羅列していた。しかし能力、破壊。これは消さなくてよかったのか。体重もオープンなのか。倉橋の判断基準に謎を感じる立花だった。そして見れば見るほど、俺と逆じゃなかろうかと思わずにはいられない立花だった。


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